大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

漁業界に必要なのは燃料費の補てんではなく、流通改革だ

2008年08月12日 | ニュースの視点
28日、政府・与党は新たな原油高対策として、漁業用の燃料費の値上がり分の大半を事実上直接補てん(ほてん)する方針を決定した。緊急対策の総額は745億円。

この政府決定に先駆けて全国の漁業従業者の代表約3,000人が、燃料費の補てんを求めて日比谷公園で全国漁民大会を開いていたが、私はこうした集まり自体が「うそ臭い」という印象を持ってしまう。

なぜなら、必ずしもすべての漁業従事者が本当の意味で漁業に「出ている」とは限らないからだ。

まず、日本の漁業の約半分は、漁港ではなく貨物港に届けられたもので成り立っている点を見落としてはならない。

端的に言えば、私たちが食べる魚の約半分は、漁業としてではなく貨物としての扱われているものであるということを認識すべきだ。

また、漁獲高の約四分の一は「養殖」だ。

養殖であれば燃料を使って漁業に「出て行く」わけではないから、今回の焦点となっている原油高による燃料費の高騰という影響を受けるとは考えづらい。

日本の漁民の中で「海」を漁場として漁業を営んでいる人の割合はどのくらいなのか、またその漁獲高がどのくらいになのか、という点を把握していなければ、今回の議論は意味がないと私は思う。

漁民が窮状に瀕しているからといって、燃料の問題と考えてしまうのは短絡的だと言わざるを得ないだろう。

燃料費対策が漁業の実態に合うかどうかという以前に、私としては魚の値段が上がるというなら、別段対策をする必要もなく、そのまま市場メカニズムを働かせて、魚の値段を上げてしまえば良いと考えている。

というのは、今の漁業にとって最も重要なことは流通改革を推し進めることであり、市場メカニズムを働かせることは、それを後押しすることになると思うからだ。

漁業の流通における最重要課題となっているのは、漁港から私たち消費者に届くまでの流通中間マージンが大きすぎると言うことだ。

日本のふぐの例で言えば、中国産のふぐが漁港では1キロ1000円台で買えるものが、消費者の手元に届く頃には1キロ1万円ほどになっているのだ。

「あっちを上げたら、こっちもそっちも……」というように、燃料費とは本来関係がないような流通中間マージンも値上がりして、最終的に流通の最終地点にいる消費者が割を食うという構造そのものに大きな問題がある。

こうした問題に目を向けず燃料費を補てんしても、一時的な効果しか期待できないと私は思う。

逆に安易な補てんなどは一切せずに流通改革を前提に考えれば、漁民も少しは工夫をして、直接一般消費者に魚を届ける方法などを模索し始めるのではないだろうか。

実際、コメなどは流通改革の一環として産地直送などが盛んになってきている。漁業においても不可能ではないと思う。

「原油高=燃料費が上がる」ので燃料費を補てんすれば良いというのでは、結局古い制度は残ったまま本質的な問題が解決されず、元の木阿弥状態だ。

表面に見える問題らしき事象に惑わされず、本質的な問題を見極めることの重要性は、いくら強調しても足らない。問題解決の最も重要な基本として、ぜひ身につけてもらいたいと思う。

1 コメント

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Unknown (デンジャラス)
2008-08-18 20:34:43
オレは地獄のランニングの途中で漁師さんを集めて組織票みたいなのを大物政治家に約束する
その見返りとして魚の値段を上げる法律みたいなのを作る
って無茶苦茶な事考えてました
大前さん
俺琉球唐手頑張ります。毎日ナイファンチします。
んでそのうち教えて欲しい事やまほどあるんで
健康に気をつけてください!!
自己中ですんません
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