大前研一のニュースのポイント

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共通番号制度の根底には、コモンデータベースの考え方が必要だ

2010年03月09日 | ニュースの視点
政府は社会保障と税の共通番号制度で住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)を活用する検討に入った。

全国民に固有の番号が割り振られている既存の仕組みを使い、システム設計にかかるコストや時間を抑える狙い。

また政府は2010年度税制改正大綱に共通番号制度の導入を明記した。

2011年の通常国会に関連法案を提出し、準備期間をおいて早ければ2014年の利用開始を目指しているとのこと。

世界の各国の番号制度への対応を見ると、最も進んでいるスウェーデンと韓国は「税務、社会保障、住民登録、選挙、教育、兵役」の全てを共通の番号で管理している。

日本でも税務と社会保障の共通番号制度の確立に向けて、ようやく動き出そうとしているわけだが、「住基ネットを活用する」という点に問題があると私は思う。

私は拙著「新・大前研一レポート」でも提唱している通り、コモンデータベース法を導入し、パスポートや運転免許にいたるまで国民各人の情報を一元管理してICカード化するべきだと考えている。

「税務、社会保障、住民登録、選挙、教育、兵役」に限らず、全ての行政手続きに必要な情報を一元管理するという発想に立ってさらに将来的な拡張を考えると、今回の「住基ネットを活用する」という方法は検討の余地があると思う。

例えばICカード化するだけでも選挙の投票用紙を書く必要がなくなるので便利だと言える。しかし、ここで終わりにする必要はない。

ネットや電話を活用しながらバイオメトリクス(生体認証)と組み合わせれば、選挙の際に自宅から投票することも、さらに言えば、海外からの投票も実現できるはずだ。

「住基ネット」のシステムにそこまでの拡張性を期待できるだろうか?

「パスポート、運転免許証、健康保険証、厚生年金手帳、印鑑登録証、さらには医療カルテや交通事故の履歴」まで全ての情報を一元化して、ICカードとして各人が持つ。

こうしておくと、国民はカードを1枚持っているだけで全ての行政サービスを受けられるという状況になり、これは国民にとって非常に便利だ。

また、行政を担う役所業務の改革・改善にもつながると思う。

私がかつて試算したところでは、住基ネットなどの既存のネットワークを使わず、ゼロからこうしたシステムを作り上げたとしても、約700億円で全てのシステムを構築することが可能だった。

住基ネットを活用して3年~4年も時間がかかるなら、0から作ってしまった方が拡張性の点から見ても得策かも知れない。

逆にスピードを優先すると言うなら、登録が面倒な住基ネットよりも、PASMO(パスモ)などのカードの方がよほど世の中に普及しているし、活用しやすいと思う。

こうした点を踏まえて、今一度、「住基ネット」というネットワークを活用するべきなのかどうかを検討してもらいたい。

そしてその前提として、「全ての役所が共通の国民データベースを持つ」という発想が大切で、「コモンデータベース法案」を通すことを実現してもらいたいと私は強く願っている。

11 コメント

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同感です (不動産ブローカー)
2010-03-11 15:08:23
 正しくその通りです。
どうせなら、公共料金や金融口座の管理まで出来るようになってもらいたいです。
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全く正論ですが、、、 (しそびれ)
2010-03-11 23:24:08
それができる気がしないのが悲しいところです。
こういうネットワークサービス系の話で、公共機関がまともに対応できた例があるのでしょうか?
成功すればまさしく、無駄が無くなり、それぞれの官庁が個別に握っていた情報を一元管理でき、管理コストが下がり、管理するための天下り法人も撲滅でき、民主党の主張していたとおり以上の、大量の公務員を解雇できますが、そんなシステムを構築するために、縦割り行政だった省庁が自分たちをクビにして、天下り先を激減するための、クビのみならず未来すら奪うこととなる横の連携を取れるのかなぁと。省庁にとってみれば、面と向かって反対する必要はなく、積極的に賛成をしなければ良いので。横の連携を取れなくしたのも民主党だし~とか言って。
そうしなければ国がすぐにでも滅びるような事態にでもならなければ、この国の組織は自らを削ることをしない。省庁の考える優先順位は、
国債発行>大増税>>>>>省益・利権を削る、順だと思う。寧ろ、前の2つを理由に省益・利権を増やすことを考えそうだし。
政治に、それこそ軍権でも握った感じの強力な指導力があれば・・・期待できるかなぁ。
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Unknown (Unknown)
2010-03-12 00:01:58
そんな管理社会は地獄だ。
個人情報は丸見えとなり、国民は家畜となる。

ネット投票は不正の温床だ。
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Unknown (Unknown)
2010-03-12 00:52:17
どうやったら現実に変えられるか、の考えも是非レポートしていただきたいです。
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賛成です (march 12th)
2010-03-12 04:29:09
全く同感です。選挙や公共サービスだけでなく、金融機関などでも利用可能になると思います。
住民票の発行手続きなどインターネット上でできるようになれば、普通にありがたいですし、事務手続きに携わっている公務員の方はより地域に貢献する業務に専念できるはずですから、国民全体が恩恵を受けるはずです。
それほど管理されて困る個人情報も私には無いのですが、みなさんありますか???
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大賛成です。 (wg1999jp)
2010-03-12 10:20:03
グリーンカードの導入撤回により日本経済がどのような影響を受けたかについての研究があれば知りたいものです。私個人は、あの時是非導入して欲しかったと思います。もちろん今回は、将来多機能化に耐える基本機能を持ったカードの導入を図ることに大賛成です。当初からいくつもの機能を持つ必要は無いのです。年金と納税義務(このための住民登録関係)がカバーされていれば良いと思います。SUIKAの利用範囲が少しづつ広がるように、準備が出来たものから機能を付加できるようなもの(ICカード)にしておけばよいのです。そこそこまじめに生きている私としては、管理されるデメリットを心配するより、無法の輩に国民の負担の元に不当利益を掠め取られることがないようにしてもらいたいです。
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新たなシステム導入に賛成! (long)
2010-03-12 11:58:20
今回のレポートの新たなデータベース構築には賛成です。反対の人もいて当然だとは思いますが、そもそも個人情報とは何か?をコメントを書いている今も考えています。情報がオープンになると言うことが悪いことなのでしょうか?個人の秘密とはどこまでなのでしょうか?例えばICカードを持ち、そのカードにあらゆる情報が入っていると言っても、社会保険番号などの情報を管理するだけで、運転免許に関するものは、交通違反などの時に警察のシステムでなければ、履歴が見られないシステムになるのでしょう。自治体で印鑑登録を取りに行って、社会保険番号がICカードに登録されていても、その個人の社会保険の内容が印鑑登録交付の場所で明らかになることは無いと私は考えています。一律のICカードを持ち、どのシステムにも対応できることができれば素晴らしいと思いませんか。もちろん監督官庁がこれを悪用?すれば、GPS機能により、出国履歴を見なくても、今いる場所が特定されるということにもなるのでしょうが。システム導入には法制化が必要ですので、そこで色々と議論されるでしょう(期待できる政治家はいないようですが)。個人情報が独り歩きするとお考えなのかわかりませんが、導入されている国もあると認識すべきです。
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今は各省庁の管理社会 (しそびれ)
2010-03-13 12:23:30
でしょう。
今まで管理していなかった、個人の大切な何かが管理されるようになるのではなく、これまで縦割り行政でバラバラに管理されていていたものが統一されるだけでしょう。ただ、そこにはコストメリットや、統一運用することで新たな付加価値も出てくることが期待できます。
今までだってあって当たり前で、管理されてきたものは多々あるでしょうに。
住民票や免許証や健康保険証、厚生年金、国民年金、、公共機関でなければ、クレジットカード情報なんて、私企業に任せてしまっていますね。よく信用できるものです。これらがバラバラな状況よりも1つのカードになって、法体系も統一して、強固にした方が良いのでは?管理する側も、それぞれ数万人ずつの職員を管理業務に裂いて合計すると数十万・数百万人の職員が似たようなデータベースに、それぞれ別々の運用をしていたわけでよね。省庁毎に、データベースのお抱え会社もあって、やれ東芝だ富士通だと、それぞれ異なるデータベースで運用して、管理コストがそれぞれ数百億円、総計兆のオーダーになることは容易に想像できますが、そうした管理コストを嫌って銀行や証券会社も統合して、混乱はあったけれども、データベースを統一運用してコストを下げているのに、公共機関がそれをやらない理由は何も無いでしょう。
反対する人は、省庁がコスト削減を何もしないで、税金が今のまま上がり続けることを許容できるのでしょうか?管理されるのが嫌とかそういう問題ではなく、すでにバラバラに管理されているのです。何か別々に管理される今の現状のメリットって何かあるのでしょうか?
そりゃ、統合するときにお金はかかりますよ。それが700億円の試算だし、作る際に多少の混乱はあることは覚悟しなければなりませんが、だからといってこのままでいいという話では無いと思います。
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そのとおりです (三河武士)
2010-03-13 12:34:50
これは日本の企業でも言えると思います。
よく得意先でも「担当じゃないからわかりません」と受け答える会社が多いですがコモンデータベースがないから全社員が同じ対応ができない会社が大半です。ですから休みでも携帯に電話して担当者を追い詰め真面目に仕事する人ほど休暇にならずうつ病になっていくのです。リストラクチャリングとコモンデータベースと行政改革とうつ病にならないための本当の会社づくりは関連があります。
リストラの意味は本来それを作って余剰人員をカットしたり他の部署に回したりするのが本意であって日本の経団連のバソコンを使えない爺さん経営者が言っているのはレイオフです。
もう一回大前さん、経団連のじいさんに一喝してください。
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Unknown (Unknown)
2010-03-15 11:22:24
全く大前さんの言うとおり。
皆さんの言うとおり。
何が支障となってそれを阻んでいるのかわからない。インターネットIPv6を用い、最新のシステムを構築する。国の将来ビジョンとしてIT国家を目指していくべきです。
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