大前研一のニュースのポイント

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約1ヶ月、日本が無政府状態だったという事実に目を向けよ

2012年06月05日 | ニュースの視点
関西電力大飯原発3、4号機を夏の電力需要のピーク時に限って再稼働させる案について、藤村修官房長官が「念頭にない」と否定したことを受けて、大阪市の橋下徹市長は21日、政府に再考を求めた。

橋下市長が言う「3ヶ月限定」という提案に対しては、私も政府と同様、賛成できない。1つには原子炉の安全性の観点からすると、飛行機が離陸時と着陸時に最も危険が高いのと同様、原子炉のリスクが高くなるのは始動と停止のタイミングだからだ。一度稼働して定常状態になればそれほどリスクは高くない。

またもう1つには、再び福島第一原発を襲ったレベルの津波や地震が来た場合に対処できるのかというと、大飯原発の3、4号機に関して言えば問題ないからだ。これは私自身も証明しているし、この点については橋下市長も他の専門家の話も聞いた上で、安全性を認めている。

万一の際、「橋下ブラックアウト」と呼ばれてしまうのを嫌い、「3ヶ月限定の再稼働を」という姿勢には賛成できないが、今の政府が原発再稼働をさせるには信用出来ないという点では私も橋下市長に賛成だ。規制庁にせよ、原子力安全委員会にせよ、新しい法律を定めるわけでもなく、安全宣言も示されていない。福島第一原発事故の本当の原因すら迷走している始末だ。そんな政府のもと、原子炉を再び運転するのは確かに危険ですし賛成できない。

今政府の事故調査委員会が、菅直人前首相や枝野経産大臣などを呼び、調査をしているそうだが、現実を知らない人たちが当時の週刊誌や新聞を読みながら質問しているだけで、全く事実をカバーしていない。率直に言えば「でたらめ」だらけだ。

枝野経産大臣などは菅前首相の責任を口にしているそうだが、そもそもあの3月11日からの1ヶ月を振り返ると、本当の問題点は「日本が無政府状態」にあったことだと私は思っている。菅前首相がどうこう言うよりも、日本政府が自らの判断ではなく米国政府からの圧力に屈していたということを重く見るべきだ。「首都圏全体から避難勧告を」「浜岡原発を停止」など、明らかに米国の強い意向だろう。

およそ1ヶ月の間、無政府状態にあったという事実が、今の日本という国を知る上で極めて重要だと思う。無政府状態だったが故に、現場に全ての対処が任されていたというのが実態だ。菅前首相を一人だけ「悪者」にしてしまえばいいという問題ではない。枝野氏・海江田氏も、当時「官房長官」「経産大臣」としての役割をきちんと果たせていたかと言えば、お粗末極まりなかったと私は言いたいところだ。

今の事故調査委員会は単なる「3面記事」ショーを作っているだけだ。最低でもそれぞれの人間の役割を理解し、その上で調査を進めて欲しいところだ。

25 コメント

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原発との付き合い方 (山根)
2012-06-05 18:17:14
エネルギー開発の在り方をもっと高い視点から再考すべき。技術的課題なレベルで議論していてもせいぜいディケードオーダーの見通しかつきません。大前氏は自身が携わってきた枠を超えるフレームをもっと提案すべき。
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アメリカのせいにしたい? それでいいのか? (上石)
2012-06-05 23:16:10
 「米国政府からの圧力に屈していた」と言うが、アメリカはチェルノブイリを参考にアドバイスをしただけだろう。他人のせいにすれば、それで済むということではない。

 問題なのは、原子力安全委員や保安院らの大事故を想定していなかったことからの見込み違いである。斑名委員長の「原発は爆発しない」も、大きな誤りであった。
 当時の菅首相は、パニック状態で感情を爆発させたのが、現場の混乱ともなったのは事実。責任はある。

 政治が専門家に頼って国内に大きな被害を出すのは戦中の東条内閣以来だ。当時は軍事という専門家が首相となっていた。
 原発事故では、原子力安全委員や保安院という専門家と菅首相のパニックが事故を拡大させた。
 東条内閣では疎開(国内避難)22万人、菅政権では避難民10万人である。日本国として当事者を裁けないのは昔も今も同じだ。

 とにもかくにも燃料棒を原子炉から引き抜かなくては安全とは言えないのが原子炉である。今後どのように福島原発を廃炉にするのだろうか。
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Unknown (不動産ブローカー)
2012-06-06 01:10:45
原発容認派の橋下氏と同じく容認派の大前氏の意見を比べてもなんの成果もない。官僚的に手続きの話に持っていくのと…。
 起動時と、停止が最も危険がある。起動したら最後、文句を言うなと主張するつもりか?
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Unknown (Unknown)
2012-06-06 10:05:10
論点をずらすのが上手ですね。 メディアも政府要人も。
原発がなくても、電力は現実に足りてるのが今の現状。7月に電気代の値上げで燃料の調達コストを補う計算じゃなかったのでしたっけ。

それとも、今の電力会社は原発のメンテ維持費と燃料調達コストのダブルコストを消費者に転嫁しているということでしょうか?
今となっては金を生まない原発を維持するのが大変だから、早く稼動させないと原発が無駄に大きい金食い虫になるからじゃないですか? 
原発の件で首相や国会議員が国会で過去に起きた事件の整合性?傷の舐め合い?に国民の税金が使われているのがムカツク。
他に景気を良くする議論ができないのでしょうか?
問題は原発発電の永久廃止か再開しかないくせに、一時稼動とか言ってる政治家の腹黒さを援護している大前さんも同じ原発支援派のようですね。
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チェルノブイリではなくて (上石)
2012-06-06 20:51:41
 スリーマイルだった。
 アメリカ合衆国東北部ペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所事故。1979年3月28日。
 2時間20分冷却水が流出し、燃料棒が破損。
 160km範囲以上の住民が自主避難との記事もある。
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ロシアンルーレット (宮尾)
2012-06-09 00:58:39
原発問題に関して、現状は一言で言えば「ロシアンルーレット」と言える。リボルバーに1発だけ銃弾を込めて、適当にシリンダーを回転させて引き金を引くゲームである。

「こめかみ」はこの場合「日本国民」である。「銃弾」は「原発」である。大地震のたびに、一回引き金を引く。運よく地震が原発を外れれば、生き残ることができる。原発に当たれば一巻の終わりである。

今の政治家や電気事業者が言っているのは、「玉が出る確率は極めて低いので安全だ」ということである。国民は、「もし玉が出たらどうするつもりだ?」と当然聞くが、「その時は、もう死んでいるから考える必要はない」と言っているのである。

それを聞いて、我々国民は「なるほど」と納得しているのが現状だと思う。

たちが悪いのは、右手で引き金を引いて、玉が発射されたが、銃口が運よくこめかみから少しずれて、瀕死の重傷になっているところで、今度はもう一度玉を込めて左手で引き金を引けと言っているところで、まったくもって救いがたいと言いたい。

国民の生命財産を使ったばくちなどもってのほかだ。今回の結末は「第二の敗戦」と位置づけられるだろう。
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Unknown (Unknown)
2012-06-09 09:53:11
>原発がなくても、電力は現実に足りてるのが今の現状

この程度の発言者がこのブログを読んでいること自体に違和感を感じる。
自分で生きている人生観が無い人なのだろう。
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Unknown (日本政府?)
2012-06-09 18:52:48
1ヶ月どころかこの3年ほど存在していませんよ。
それでもなんとか回っている不思議。
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Unknown (われ)
2012-06-10 22:15:35
日本が自民党時代も含め自国民よりもアメリカさん重視は当たり前 基地から家族が避難しているのをみてたのでわかるけどアメリカにはいろいろ情報が行っていたのはわかる 安全だということを言いきっているけど知ってると持ってる人たちが頭の中で安全だと思ってるだけのようにも思える資料だったけどなぁ この人も事故前と後の感じがなぁ。。。
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Unknown (Unknown)
2012-06-11 16:46:10
数十年というスパンで原発を減らしていく以外に方法はないんだよ。
頭の悪いコメントをするな。名前を出してまで。
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