大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

クロス・ボーダーM&Aを背景とした直接投資の増加、途上国・ソ連圏の台頭

2007年10月30日 | ニュースの視点
世界的なM&A(合併・買収)ブームを背景に3年連続で海外直接投資が拡大している。16日、国連貿易開発会議が発表した2007年版世界投資報告によると、06年の世界の海外直接投資は過去最高だった00年の1兆4110億ドルに迫る勢いになったとのこと。

世界全体の海外直接投資額の推移を見ると、ITバブルが崩壊した00年をピークに下がり始め、04年から徐々に回復してきていることが分かる。

旧ソ連圏や途上国の占める割合が大きくなってきており、これはアメリカだけではなく、その他世界の重要性が大きくなってきているという、大きな世界経済の特徴を示していると思う。

また、海外投資受入額の上位を見てみると、米国、英国、フランス、ベルギー、中国と続き、その特徴は先進国、発展途上国、旧社会主義圏のいずれでも増加しているという点だ。先進国向けが8割を超えていた00年に比べると、途上国向けの割合は29%、旧社会主義圏向けも5%に上昇し、直接投資の波が世界各地に広がっていることを裏付けた結果だ。

そのような情勢の中、日本は先進国として上位に位置するどころか、投資の流出が流入を上回っており、投資受入額はマイナスになっている。世界経済の動きからすると、日本だけ世界の他の国と全く違う動きをしているのだ。日本はここに問題意識を持つべきだろう。

世界の資金の流れは非常に敏感だ。世界の資金が日本に流れてこないという事実そのものに、日本経済が抱える問題の一端が垣間見られる。今の日本経済は、80年代のバブル期の失敗に懲りて、まるで「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」ように消極的過ぎるのだ。以前ほど活発な動きができなくても、少なくとも世界経済の潮流に対応可能な体制までは最低限維持するべきだと私は強く感じる。

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