大前研一のニュースのポイント

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BRICsの経済がスローダウン。数年前とは違うそれぞれの経済状況は?

2012年06月19日 | ニュースの視点
円と中国の通貨・人民元を直接交換する為替取引が1日、東京、上海の両市場で始まった。東京市場では取引開始直後に、国内銀行間の取引で、1元=12円33銭の初値が付いた。1日の取引額としては100億円程度と小規模になっている。

決済額はまだまだ小さいものの、ドルを介さない直接取引の魅力だから、今後はコスト面での優位性もあり、大いに期待したいところだ。そのためには、人民元をもう少し国際化してもらう必要があると私は思っている。

この取引が始まって、元安へと進んだ。この値動きを意外だと指摘する人もいたが、私はそうは思わない。今、中国政府は人件費を上げているから、むしろ元高になる要素はなくなりつつあると思う。中国政府としては矛盾を抱えた状態になってしまっていると言えるだろう。

インド政府は31日、1~3月期の国内総生産(GDP)が前年同期比で実質5.3%増だったと発表した。市場予想の6%増を下回り、成長率の鈍化はこれで4四半期連続とのことだ。

昨年前半までの金融引き締めで内需が伸び悩んでいることが背景にあると見られているが、もう1つ忘れてはいけないのが欧州経済の不況に起因する「欧州資金の引揚げ」だ。

新興地域の対外債務に占める欧州銀行の割合を見ると、インドの対外債務も約半分を欧州の銀行に占められていることが分かる。インドルピーの下落、株式市場の低迷に繋がってしまうのも致し方ないだろう。とは言え、成長率は未だに5%~6%というレベルを維持しているわけだから、破壊的なレベルではないだろう。

また為替の動きとして、気になるのがロシアのルーブルだ。天然ガス価格、原油価格が下落しロシア経済が危ぶまれつつある。ルーブルは、ドルとユーロに対しても安くなっていて、円に対してはさらに安い状態だ。

先日、日産ルノーがロシアの自動車最大手アフトバズの株式を買い増し、買収することで基本合意したという報道があったが、大チャンスだ。ロシアの企業などを買収するなら今は狙い目だと思う。

インドネシア政府は年内に総額50億ドル(約4000億円)の緊急融資枠を国際金融機関などに要請する方針を明らかにした。欧州債務危機による市場資金の流出や燃料補助金の増大による財政負担の拡大に対応。50億ドルのうち20億ドルについては世界銀行がこのほど融資を決定したとのことだ。

インドネシア経済は、今後経常収支で赤字に転落する予想だ。かつてはエネルギー輸出国だったが、国内経済の発展に伴い、エネルギー輸入国へ変わってしまった。新しい輸出品目が出てくるまで、インドネシア経済は苦しい台所事情が続くと思う。

ここをファイナンスするのは、大いに意味があると思う。世界銀行が20億ドル融資したということだが、残額は全て日本が融資しても良いくらいだと私は考えている。日本の銀行が直接支援してもらいたいところだ。

ブラジル中央銀行は30日開いた通貨政策委員会で、政策金利である基準金利を0.5%引き下げて過去最低の年8.5%にすると発表した。高金利により通貨レアルが値上がりし国内製造業の低迷も続いていることから利下げで景気を下支えする狙いだ。

ブラジルはルーラ前大統領の後、あまり経済状況が良くない。ついに金利を史上最低レベルに下げたとのことだが、これでも経済は浮上しないのではないかと危惧されている。

オリンピック、ワールドカップという大イベントのために相当の資金が必要とされるブラジルだが、当然のことながら産油国として深海油田を掘るための莫大な資金も必要だ。これから4~5年間の資金繰りは非常に難しいだろう。この問題解決にあたって、ルセフ大統領では少々心もとないかも知れない。

1 コメント

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先進国 (上石)
2012-06-22 23:29:10
 先進国が衰退し、新興国だけが好調であるということはないと確認。
 経済活動とは、景気や為替、金融の変動による売買であるとつくづく実感。売買が難しいのだ。
 先進国の需要減少で、これからは供給過多による世界的デフレに突入である。
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