大前研一のニュースのポイント

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世界同時株安を引き起こしたサブプライムローン問題の本質

2007年08月07日 | ニュースの視点
26日、ニューヨークの株式市場が大幅に下落した。

サブプライムローン(信用力の低い個人向けの住宅ローン)問題で株式市場から投資資金が引き上げられるとの懸念が高まったことが背景にある。

欧州やアジアの市場にも波及し、2月末の中国・上海発、3月の米国発に続く、世界同時株安となった。

私は、常に史上最高値には注意が必要だと思っている。

過剰流動性で高値がつくだけであって、何か理由があれば必ず落ちてくるからだ。

今回の場合は、サブプライムローン問題が引き金になった。

今後の米国は厳しい立場に立たされるだろう。

米国では、90日以上滞納すると債務不履行と見なし、住宅を取り上げて競売にかける。

競売で投売りされる住宅が増加すれば住宅価格が下落し、担保価値も目減りするだろう。

また、2004年以降に実行されたサブプライムローンでは、当初の返済軽減期間が終了し負担急増に直面するものが、なお相当に残っていると見られるため、今後さらに延滞や債務不履行が増加することになるだろう。

サブプライムローン問題のために、今後、ファンドが集める予定の資金が集まらないという事態が予想できる。

このような状況下で、市場から引き上げた莫大な資金はどこに流れるのか?という点が私は重要だと感じる。

ちょうど、今週(2007年7月30日号)のBusinessWeekに、「Death Bond(死亡債/生命保険債)」というタイトル記事が掲載されている。

これは、自分の生命保険を買い取ってもらえるサービスだ。例えば、1億円の生命保険に入っている人がいたとして、70歳なら2割、75歳なら4割でその生命保険を買い取るというサービスだ。この仕組みで数千人~数万人規模で集めて、REIT化し、さらにABS(Asset Backed Securities:資産担保証券)にする。それがファンドに組み込まれるという形にするのだ。

生命保険という商品を扱っているため、根本的に株やコモディティの波長と異なる動きをするため、リスクヘッジの観点からも、ファンドからのニーズが高いようだ。

ただ、私はこの手法は非常に危険だと感じている。

まさに今問題になっているサブプライムローン問題も全く同じ構造を持っているからだ。

個人の人たちが借りているうちは、リスクも明確で安全であったものを、それらをまとめてABS化し、ファンドに組み込んだことで、最終的におかしな事態を招いてしまうことになった。

その同じ轍を踏むことになるのではないかと思うのだ。

今後、米国はサブプライムローン問題をきっかけに利上げも利下げもままならず、パニックに陥ってしまう可能性が高いと私は危惧している。

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