厳しい欧州経済、ドイツ経済にも影響か？／ＩＭＦラガルド専務理事に要注意

フランスのフィヨン首相は７日、追加的な財政赤字削減策を発表した。年金改革や増税などを実行し、2012年予算で70億ユーロ（約7500億円）の赤字削減などを打ち出した施策となっている。

米格付け会社Ｓ＆Ｐが10日、フランス国債の格付け引き下げを知らせるメールを「誤送信」したことで一時市場は混乱した。ギリシャ・イタリアにつづき、フランスまでも危ないのかと感じた人は大勢いたと思う。さすがに、本当にフランスにまで波及してしまうと、欧州全体に経済危機が広がってしまうので、今週はかなり緊張が走った瞬間だった。

欧州主要国の経済予測を見ると、来年は今年よりも厳しい見込みだ。実質経済成長率では、頼みの綱であるドイツも2.9％から0.8％へ下落の見通しだし、対ＧＤＰ比債務残高では、ドイツ・フランス・スペイン・イタリアのいずれの国も、マーストリヒト条約の基準値である60％を守れないという状況だ。

欧州の中で唯一、ドイツ経済だけはその強さを示してきたが、その状況にも変化の兆しが見え始めている。ドイツ政府が７日発表したところによると、９月の同国鉱工業生産指数は前月比2.7％低下した。未だ第２四半期を1.7％上回っているが、第３四半期終盤に生産の勢いが急激に失速したことが示された。

本当にドイツ経済全体も急激に減速してしまったのかどうかは、あと１～２ヶ月様子を見てみないと分からないが、数カ月前に言われていたように「欧州諸国の中でドイツだけは高い空を飛んでいて安全だ」という状況ではなくなってきていると感じる。

自見金融相は11日、来日中の国際通貨基金（ＩＭＦ）のラガルド専務理事と金融庁内で会談し、欧州の財政危機など現下の経済情勢について意見を交換した。金融相は会談後に「世界の金融情勢が不安定になっているが、ラガルド氏なら解決できる」と期待を示したが、具体的な支援要請の有無については明言を避けた。

ＩＭＦのラガルド専務理事は非常に優秀な人物だ。だからこそ、日本の大臣がラガルド専務理事に会うときには「要注意」して欲しいと思う。

というのは、ラガルド専務理事の頭の中に「欧州ばかりではなく、日本だって危険な状況にある」という想いがあって、万一そうした趣旨の発言があれば、今のラガルド専務理事の影響力からすると日本経済が大打撃を受ける可能性があるからだ。

今現在、ラガルド専務理事が日本に対してどのような想いを抱いているかは明確ではないが、歴史的に見て「欧州中心主義のＩＭＦ」「米国中心主義の世界銀行」という構図から考えれば、ＩＭＦの代表として「欧州ばかり火の粉を被る状況を何とかしたい」という意識が働く可能性は大いにあると思う。その時、ラガルド専務理事と相対する日本の代表である金融大臣などが、「与し易い相手」と思われてしまったら、日本へ矛先を向ける危険性があるだろう。

日本経済も厳しい状況だから、危機感を持つのは当然だ。私自身、何年も警鐘を鳴らしてきた。しかし外国に対しては、日本の金融大臣などが「日本経済には問題がある。しかしイタリアとは違い、国民が国債を購入している。日本経済は大丈夫だ」と主張するべきだろう。

ラガルド専務理事は相当なやり手だ。日本の金融大臣が気を引き締めても対峙できるかどうか、という相手だろう。あまつさえ気を緩めていたら、あっという間に隙をつかれてしまうことになると思う。それは日本経済、日本国民全員にとって由々しき事態を招くことになる。そのような事態に陥らないよう対処してもらいたいと思う。