大前研一のニュースのポイント

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日本全体が夕張化しているという事実。国民一人一人が運用志向を高く持つべき

2007年02月20日 | ニュースの視点
財務省によると、税収増で大幅に改善した国の基礎的財政収支は再び悪化。

名目成長率を3%として試算した場合、09年度で6兆9000億~7兆8000億円の赤字になる見通しとのこと。

また、新規国債発行額も07年度予算で25.4兆円まで下がってきましたが、09年度から10年度で再び30兆円を超え、国債発行残高は600兆円を突破する見通しだと言う。

結局、「改善された」などといわれていたのは、単なる一時的な状態に過ぎず、それを見抜く眼がなかったというだろう。

さらに、日本の状態としてよろしくないのは、この財政状況にあって、日本の国債は返済できないという事実を認識していないという点だ。

ビジネス・ブレークスルー大学院の生徒が出した試算によると、先ごろ破綻した夕張市と債務(国債)を抱える日本全体(中央政府)では、

1人あたりの金額で換算すると、その借金額はほぼ同額だと分かった。

もちろん破綻した夕張市の財政政策に問題はあったと思うが、問題は夕張市だけのものではないということだ。

私は、前々から日本の借金(国債)は絶対に返すことはできない金額だということを強く主張してきましたが、まさに今日本という国全体が夕張化しているという状態だといえる。

では、このような返却できる見込みが立たない莫大な金額の国債を発行し続ける日本政府は、最終的に、この国債をどのように処理しようとしているのか?

答えは簡単だ。すべて1500兆円を誇る日本の「個人金融資産」にそのしわ寄せを回せばいいと思っていることだろう。

実際に、国債の保有割合において、家計部門の存在感が少しずつ高まってきている。

家計の国債保有残高の推移を見てみると、05年3月末に20兆円台に乗せてから1年半でほぼ10兆円増えているという状況だ。

このように家計の負担率が上昇したのは、銀行預金の金利が低いので国債を買う個人が増えたこと、

そして、銀行が国債を買うことで銀行預金も間接的に国債負担になっていることが主な理由だろう。

このような状況を見ると、個人個人がもっと運用志向を強く持つことが必要だと強く感じる。

運用志向が強くなり、きちんとした投資判断をすれば、銀行預金として預けることも、国債を買うこともなくなるだろう。

そうしないと、結局は、一般庶民がババを引かされることで終わってしまう。

政府の対応に問題があるのは確かだが、だからといって、盲目的にそれを批判するだけではダメだ。

国民一人一人が、自ら問題点を見据えて、考えて、実行するという自立心が必要な時代になってきていると強く感じる。

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