大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

世界で協力して流動性を供給する体制を整えるべき

2008年10月14日 | ニュースの視点
先月29日、英国政府は住宅金融大手の一部国有化を発表し、前日の28日にはベルギー、オランダ、ルクセンブルクのベネルクス3カ国が金融大手フォルティスの部分国有化を発表した。

また、フランス、ベルギー、ルクセンブルグのヨーロッパ3カ国は、仏・ベルギー系の大手銀行デクシアに対し、総額63億ユーロ(約9800億円)の公的資金の投入を発表している。

私は予てから欧州各国は協力して流動性の供給機関を組織するべきだと主張してきた。

それはこの世界金融危機に対して、金融機関を救済するためのガソリンスタンドのような役割を果たすためだ。

具体的には、欧州諸国:200兆円、日本:100兆円、中国:150兆円、湾岸諸国:200兆円、ロシア:50兆円、台湾:50兆円、というように世界に国々が協力して資金を提供し合い、全体として1000兆円規模の資金を作る。

流動性危機に陥った金融機関には一時的にこの資金を活用することでガソリン補給をしてもらい、体力が回復したら市場に戻るというカラクリだ。

このような手を打たないと、欧州金融機関は次々と破綻に見舞われる可能性があるだろう。

実際、この1年間で経営破綻もしくは破綻間近という危機的な状況に追い込まれている金融機関は後を絶たない。

このような欧州全体の経済状況を反映し、約165円まで上昇していたユーロもこの10月3日時点で146.95円へ急速に下落し、過渡期を迎えていると見るべきだろう。

そして、欧州にも増して厳しい局面を迎えているのが、韓国とロシアだ。

私は何度も「実態を伴わない韓国経済の問題点」を指摘してきたが、遂に韓国経済の脆弱さがウォン安という形で認知され始めている。

今の状態は、考え方によっては97年~98年の韓国危機の時よりもさらに深刻な事態だと思う。

一方、グルジア問題で揺れるロシアもこれまで舞い上がっていた金融に翳りが見え始め、政府が慌てている様子が見て取れる。

29日プーチン首相が発表した国営ブネシュエコノム銀行を通じた貸し付けの実施策は、米国同様にロシアの流動性不足がかなり深刻な状況になっていることを物語っていると思う。

ロシアは石油などの輸出によって順調に積み上げてきた5000億ドル(50兆円)の外貨準備高のほとんどが、銀行・その他民間部門の債務によって相殺されてしまうという事実も判明しており、今後の石油価格の下落を考えるとさらに苦しい局面を迎えることが予想できる。

こうした世界経済の状況下、東京株式市場では外国人投資家による売越額が1週間で1兆3545億円に達した。

ここには、東京を売ることでいち早く流動性を取り込みたいという外国人投資家の意図が感じられる。そして、その結果として日経平均も下がるという状況が続いているのだと思う。

今、世界の経済危機は流動性の供給が課題となるフェーズ1だ。

このフェーズ1において大切なことは、世界各国の経済状況を正しく見極めた上で、まずは流動性危機の対応に集中し、世界の国が協力して動き始めることだ。

1 コメント

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Unknown (デンジャラス)
2008-10-14 18:18:26
もう今から金融勉強する価値はないんすかね!?良く分かりません(泣)
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