大前研一のニュースのポイント

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職業教師ではなく、社会全体で教育の担い手になるべき

2007年01月23日 | ニュースの視点
12日、政府の教育再生会議は、公立校の授業時間を現状より1割増やし、社会人の教員採用を5年後を目処に約10倍の年間500人程度に引き上げる目標を設定する調整に入った。

教育改革の重要性は否定しないが、このような政府の教育問題についての姿勢を見ていると、全く本質が分かっていないと感じる。

私に言わせれば、今回の教育再生会議の提言は、そもそも構造的に間違いがある。

現代の学校教育に必要なのは職業教師ではない。

それは、職業教師としての教員では、もはや現代の日本において教育を担える立場にないという前提が理解されていないからです。

一方で、教育を受ける子供たちはといえば、インターネットなどを通じて、かつてからは考えられないくらい社会の実態に接する機会がある。

ここに、職業教師としての教員と子供たちとの関係性に、明らかな乖離が生じるため、効果的な教育は望むべくもないのが実態だと私は思う。

職業教師に任せるのではなく、社会全体が「面」として教育に参加し、各論としての教育を展開するべきだろう。

例えば、5人の子育てを経験した母親が、子育てについて話をしたり、消防士の人がたばこによる火事の実情を話すのだ。

このような社会の中の実体験に基づいた教育であれば、教育効果は期待できるだろう。

総論ばかり論じるのではなく、各論として社会が教育の担い手になることが重要だと私は思う。

そして、この点は、いわゆる「心の教育」問題についても同様だ。

道徳教育という名のもと、とってつけたような総論としての教育をしても効果が薄いのは、現代の家庭や学校内で起こっている陰惨なニュースを見れば明らかだ。

心の教育問題は、家族や友人関係という小さなコミュニティが崩壊していることが根本的な原因だ。

だから、まず家庭から教育を始めるべきだろう。家庭の中で基本的な価値観をきちんと教える。

その上で、学校教育の中で、価値観に基づいた社会人としての具体的な経験を、事例として子供たちに伝えていけば良いのだ。

今回の教育再生会議だけでなく、総論ばかりを論じて、結局は効果がほとんどないことに時間と労力を費やしてしまうのは、政府・役人の非常に良くない体質だ。

前回も述べたように、特に教育体制の整備は今後の日本にとって非常に重要な課題だ。

政府には早急に体質改善をしたうえで、効果のある教育制度の整備に着手してもらいたい。

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