大前研一のニュースのポイント

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中国共産党は軍隊も政治も掌握した絶対君主の存在

2012年04月17日 | ニュースの視点
中国人民解放軍の機関紙「解放軍報」は19日、共産党の指導下にある軍を政治的に中立な「国軍化」すべきだとの議論を「断固阻止する」と強調する評論記事を掲載した。国軍化論は軍内部で長年議論されてきたがタブーの一つであり、機関紙がその存在に言及するのは異例のことだ。

外国から見ていると分かりにくいのだが、極端に言えば中国という国はバチカンと似たようなところがあり、「共産党という宗教団体が国家を経営している」という状態になっている。土地はすべて共産党が所有していて、さらに軍隊も保有している。土地も軍隊も中国共産党のものであり、中国共産党が運営する国家の名称が「中華人民共和国」というのが実態だ。

軍事力統帥の源泉になっているのは、党中央委員会から選出される「党中央軍事委員会」と人民代表会議から選出される「国家軍事委員会」だ。形の上では「国家軍事委員会」は人民代表会議からの選出となっているが、実際のところ「党中央軍事委員会」と「国家軍事委員会」のメンバーは同一で党総書記が主席を務めている。ゆえに、完全に共産党の指導下にあると言える。

また中国の軍事組織には、中国人民解放軍と公安の傘下にある人民武装警察という2つの組織がある。暴動の鎮圧に軍隊が出動することは稀で、大抵は公安が動く。しかし香港に関係する事態が発生すれば南京にいる軍隊が出動するし、実際天安門事件のときには軍隊が鎮圧に乗り出した。外から見ていると非常にわかりづらいのだが、中国人民解放軍に絡む問題というのは中国にとって非常にデリケートな問題だ。

22日付けの英フィナンシャル・タイムズは「薄熙来氏の解任で露呈した中国の政治体制のひずみ」と題する記事を掲載した。

今後中国国内では、薄熙来氏が解任された理由について、様々な憶測が飛び交うことが予想される。現時点でも、習近平の周辺を盗聴していたとか、薄熙来氏が夫人と共に殺人に関与していたなど、実態はよく分からない噂がいろいろと出てきているようだ。

今後もさらに色々な説が出てくると思いるが、どんな噂が出てきても驚くには値しない。薄熙来氏は国民の人気が最も高かった政治家なので、突然解任するということは簡単なことではない。そのため、わざわざ解任されるに相応しい複雑な理由・シナリオを作り上げているのだ。

体制が変更するときには、その移行がスムーズに行われたということを演出する必要がある。これは北朝鮮を見ていても分かるだろう。薄熙来氏への様々な噂は、まさにこの「演出」に他ならない。いかに薄熙来氏がダメだったのかを強調することで、コントラストが演出できるというわけだ。本当に薄熙来氏の国民からの期待は大きかったので、その意味で相当色々な「演出」をいなければならないと思う。

薄熙来氏が疎まれてしまったのは、毛沢東への回顧が強すぎた点にあると私は見ている。どちらかと言えば、中央政府は毛沢東を忘れたいと思っている。毛沢東の歴史を紐解けば紐解くほど、例えば3000万人も死亡したといわれる大遠征を実施していたなど、忘れられている問題が暴き出される可能性があるからだ。それらには触れず、前へ進んでいきたいと考えていると思う。この背景こそ薄熙来氏が解任された本当の理由であり、今流されている噂は人民が納得するための「付け足し」に過ぎない。

土地も軍隊も保有している絶対君主として中国共産党は存在している。その独特な政治体制ゆえに、時に扱うのが難しい、デリケートな問題があるのだと思う。

3 コメント

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Unknown (Unknown)
2012-04-19 21:45:44
同じ文章を二度掲載する意味を述べよ。
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Unknown (不動産ブローカー)
2012-05-15 23:20:07
 今更、地球は丸いみたいな話をして何をしたい?
 テーマを与えるから自分で考えろというのがこのブログの主旨の筈、それともターゲットを中高生に切り替えたか?
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5月の投稿がまだありません (ガラ)
2012-05-21 09:09:23
脳みその腐った連中の、嫌味な投稿の削除を希望。連中の趣旨は、90%以上いやがせ。長年の読者にとっても迷惑この上ない。こちらまで、脳みそが腐りそう。断固削除を希望します。その上で、5月の新しい投稿を期待します。
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