荻野洋一 映画等覚書ブログ

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高崎にて、岡本健彦および洛中洛外図屏風を見る

2011-03-11 05:11:52 | アート
 群馬県の高崎市に足を伸ばし、県立近代美術館で開催されている企画展示《岡本健彦 横須賀、ニューヨーク、高崎》を見る。フランク・ステラらが活躍する1960年代の熱いニューヨークで、荒川修作らと親交を結び、上州の地でいまなお精力的に新作を発表し続けている岡本健彦の、これまでのキャリアを一望できる大規模な回顧展となった。アクリルに塗り込められた色彩のアンサンブル、この色の取り合わせの、なんと妙なる美しさを宿していることか。青と濃い青、エンジと黄、青と茶などの塗り分けが、絶妙である。アクリルという人工的な素材の精気というものを、ビリビリと感じた。
 荒川修作が逝った現在、私たちが岡本と出会うのは必然だという気がしている。同展の東京への巡回がないのが、なんとも残念だ。
 内村美術店(日本橋人形町)の店主・内村修一氏のかねてからの勧めにしたがって、ついでに同館およびお隣の県立歴史博物館で開催中の《洛中洛外図屏風に描かれた世界》も見て歩いた。右写真は、県立近代美術館および県立歴史博物館が入居している「群馬の森」の敷地を、カメラ付き携帯電話にて写したもの。国宝「上杉本」の展示会期は、複製が3/23から、原本が4/6からということで、「林原本」や関連の工芸品だけを見て回った。私は、壮大な山水画や、こうした都市俯瞰図のたぐいのパノラマを眺めるのが大好きだ。道や風景、建物だけでなく、ディテールの中に人々の生の営み、イベントがぎゅうぎゅうに詰まっている。

──以下、余話──
 閉館時間となり、市街中心部に戻る。高崎の旨いものを食わせる店でも探そうと、駅ビルに入っている大型の「くまざわ書店」にて地元のガイド本をあさるも、さして収穫なく、おとなしく帰ることに。代わりと言ってはなんだが、和田英(わだえい)の『富岡日記』が新装版で出ていた(みすず書房)ため、これを購入し、上越新幹線の中で読みながら帰京した次第である。群馬のご当地ものとしては、生半可で飲食にうつつを抜かすよりも、官営富岡製糸場につとめた女工の日記を読んでいるほうが、はるかに上等ではあるまいか。
 洛中洛外図屏風を眺めてすっかり京都気分に浸ったからか、都内に戻ってから、京料理を無性に食べたくなった。持ち前のミーハー心が、またぞろ頭をもたげた格好である。四条の割烹「たん熊北店」が、新しく東京・日本橋浜町に店を出しているというので、初めて入店。スッポンの丸と熱燗との作用によって、上州の寒風に当たってきた身体は、ほどよく健康を取り戻した。若き板前氏によれば、スッポンは昔はゲテモノだったらしい。室町末期の洛中洛外図屏風をつぶさに眺めると、魚屋が店脇でついでにキジや鶏、ケモノを売っていた。当時は肉食は憚られるものだったから、魚屋がこっそり売ったのだろう。


群馬県立近代美術館
http://www.mmag.gsn.ed.jp/
群馬県立歴史博物館
http://www.grekisi.gsn.ed.jp/


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