最も厳密な試みが、時として自由闊達さを獲得することがある。これと同じように、最も厭世的な人物が、なんらかの作用によって最も単純な幸福へと至ることがあるのかどうか。ウディ・アレンの第40作『人生万歳!』(2009)が辿ってみせる “愛と偶然の戯れ” 実験は、それを観察する私たちの側をも自由闊達にしてくれる。
1970年代、アレンがまだ『アニー・ホール』や『マンハッタン』を製作していた時代に書かれた脚本が、引き出しの奥から30余年ぶりに陽の目を見たのが本作だ。『メリンダとメリンダ』(2004)以来のニューヨーク・ロケというのが、正直にうれしい。アレンの映画には、人をすぐに虜にする要素がある。そのあと、いったんは敬遠するようになり、しかしまた再び愛せるようになってくる。観客の心情の変遷に、アレンの映画はうねりながら同調してくれるようである。
マリヴォー的なカップルの交換遊戯、それからバーナード・ショー『ピグマリオン』(1913年初演)あたりから着想を得たとおぼしきストーリーは、なんとも軽薄の極みで、出会いの演出にはなんの装飾もない。バーやカフェで「偶然」知り合う、街角で「偶然」ぶつかりそうになる、軒下でうずくまる家出娘を「偶然」発見する。なんと、「ユニクロ」で服を物色中にわあっと再会するカップルまで出てくる。軽薄すぎて、考え込んでしまうほどだ。絶妙な演出の居合術みたいなものがどうやらあるらしく、ウディ・アレンというのは、今さらながらにすごい映画作家だと思わざるを得ない。
ちなみに本作の直後にも、『You Will Meet a Tall Dark Stranger』『Midnight in Paris』と、新作がバンバン量産されている。後者は、初のパリ・ロケなどと謳われているが、思いついただけでも、セーヌ河畔でのダンスシーンを持つ『世界中がアイ・ラヴ・ユー』(1996)があるので、初というのは事実誤認だろう。TOHO系で拡大公開された前作『それでも恋するバルセロナ』(2008)をのぞいてここ15年くらいは、アレンといえば恵比寿ガーデンシネマ(写真は、同館の外景)の御用達だった。したがって同館がなくなってしまうと、はたして上記2作の日本公開がちゃんとなされるのか、いささか心配になってくる。
恵比寿ガーデンシネマほか、全国で順次公開
http://jinsei-banzai.com/
1970年代、アレンがまだ『アニー・ホール』や『マンハッタン』を製作していた時代に書かれた脚本が、引き出しの奥から30余年ぶりに陽の目を見たのが本作だ。『メリンダとメリンダ』(2004)以来のニューヨーク・ロケというのが、正直にうれしい。アレンの映画には、人をすぐに虜にする要素がある。そのあと、いったんは敬遠するようになり、しかしまた再び愛せるようになってくる。観客の心情の変遷に、アレンの映画はうねりながら同調してくれるようである。
マリヴォー的なカップルの交換遊戯、それからバーナード・ショー『ピグマリオン』(1913年初演)あたりから着想を得たとおぼしきストーリーは、なんとも軽薄の極みで、出会いの演出にはなんの装飾もない。バーやカフェで「偶然」知り合う、街角で「偶然」ぶつかりそうになる、軒下でうずくまる家出娘を「偶然」発見する。なんと、「ユニクロ」で服を物色中にわあっと再会するカップルまで出てくる。軽薄すぎて、考え込んでしまうほどだ。絶妙な演出の居合術みたいなものがどうやらあるらしく、ウディ・アレンというのは、今さらながらにすごい映画作家だと思わざるを得ない。
ちなみに本作の直後にも、『You Will Meet a Tall Dark Stranger』『Midnight in Paris』と、新作がバンバン量産されている。後者は、初のパリ・ロケなどと謳われているが、思いついただけでも、セーヌ河畔でのダンスシーンを持つ『世界中がアイ・ラヴ・ユー』(1996)があるので、初というのは事実誤認だろう。TOHO系で拡大公開された前作『それでも恋するバルセロナ』(2008)をのぞいてここ15年くらいは、アレンといえば恵比寿ガーデンシネマ(写真は、同館の外景)の御用達だった。したがって同館がなくなってしまうと、はたして上記2作の日本公開がちゃんとなされるのか、いささか心配になってくる。
恵比寿ガーデンシネマほか、全国で順次公開
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アレンの映画は、皮肉なテイストなのに、なぜかやけに勇気づけられるところがありますね。『世界は女で回ってる』なんて最高に上げさせてもらえましたね。
関係ないことですが、ファスビンダー『エフィー・ブリースト』のテレビ放映を録画し忘れました。失態(泣)…