荻野洋一 映画等覚書ブログ

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『パシフィック・リム』 ギレルモ・デル・トロ

2013-08-14 04:38:01 | 映画
 メキシコ出身のファンタスティック系映画作家ギレルモ・デル・トロ(正しくはギジェルモ)の最新作『パシフィック・リム』では、ハリウッドのど真ん中でハリウッドらしからぬことをしでかしたいという不遜さが、こそばゆいほどに、または有り難迷惑なほどに日本に範を求めている。ロボット・アニメと怪獣パニック、特撮戦隊もののメモリーが、季節外れの焚き火のごとく、過剰な愛情と共にワンカットごとに燃えあがる。分かっちゃいるけど、微笑と苦笑ばかりが漏れる。作者デル・トロの暗号を受け取れと、画面は主張してはばかることがない。
 その肥大化したファンタスムゆえか、ここではサイズが恐ろしいまでに巨大化している。あまりにも巨大な海中の怪獣(登場人物たちはそれらを「カイジュ!」と呼んで、ファンタスムを率先してふれ回る)。そして迎え撃つ合金製ロボットも、ナンセンスな巨大さでお付きあいをして見せる。相似形の釣り合いが儀式的に尊重される。人類の歴史の終着点、地球の生物史の総まとめとして、最後のフロンティアであるマリアナ海溝にスポットが当たり、映画の前半でこの海溝を核爆発によって消滅せしめるという狂ったプランが発表される。学童以下の精神年齢と、老人の諦念が隣り合う。日本に範を求めることは、結局そういうシニシズムにどっぷり浸かってみることに直結していくのだろう。これはこれで迫真に迫っているのだ。


丸の内ピカデリー(東京・有楽町マリオン)ほか全国で上映中
http://wwws.warnerbros.co.jp/pacificrim/


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2 コメント

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意外と楽しかった! (橋脇 隆)
2013-09-13 23:15:12
僕も意外と楽しかったです。もっとダメかと想像してた(笑)。「パンズ・ラビリンス」と比べものにならない程の粗っぽさが、まぁ、ちょうど良かったのですかねぇ。
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Unknown (中洲居士)
2013-09-16 02:25:54
しかしさすがに、世の中で評価されすぎですね。
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