ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

白髪そうめん

2017-06-15 23:38:43 | 日記
テレビを見ていて、「白髪そうめん」というものをはじめて知った。

そうめんの定義は直径13mm以下であることだが
この白髪そうめんはなんと03mm。
それでいてコシが強く、口の中で本数が数えられそうだ!という感想も。

食べてみたい。
猛烈に、食べてみたい。

でもさすがに作る手間隙はハンパじゃなく
価格はひと束90gで600円前後する。

ひと束では足りない。ふた束は食べたい。
でも、おっさんに隠れて食べるのもナンだし
となると、600円×2束×2人分=2400円。

いやいやいや、そりゃ贅沢すぎるわ。

ああ、おっさんが羽振りがいい時代に
白髪そうめんと出会っていれば…

しかし、節約を心がける身だからこそ有り難く思える食の贅沢。
今日はボーナス日だ。
ボーナスがもらえる仕事に就いていることを感謝し
おいしいね!と言える相手がいることを感謝し
思いきってアマゾンしちゃいますか。


ど~ろぼぉっ!なじられながら舞う私

2017-06-07 23:12:06 | 日記
優雅な奥様風の雰囲気を漂わせて入居してきたソノコは
足が痛いからと食堂に来なくなって以来
坂道を転げるようにおかしくなってきた。

何もいない床に虫がウジャウジャ這っているとか
鏡からオジイサンがでてくるとかいった具合に
幻視が激しくなり
介助なしではご飯も食べないほど意欲が低下し
そして今年に入ってからは
オムツ換えしようとする職員を噛む、つねる、ひっかくと
凶暴なバアサンと化してしまった。
(このあたりは以前書いたと思うが)

しかし、いつも凶暴なわけではない。
まるで二重人格のように
天使から悪魔へ、悪魔から天使へと
瞬時に人格が変わるのである。

今日、ソノコのオムツ交換に行った。
顔が険しい。すでに、悪魔だ。

しかし便臭がきつく、放置はできない。
自衛のためのアームカバーを両腕に通し
いざ、オムツ交換!

ソノコさ~ん、オムツ交換させてくださいね。
あ、ごめん、ごめん、怒らないで~。
ちょ、ちょっと、ソノコさん、痛い! やめて! すぐ終わるから~!!!

その間、ソノコは「ドロボー!ドロボー!」と叫び続けるが
そんなことに怯んでいられない。
不衛生より、己に痣をつけられることを選ぶ。
それが、介護職の本分だ。

さあ、さんざんにつねられ、ひっかかれながら
ようやくオムツ交換が終わる。

汚染されたオムツを捨てて手を洗っていると
さっきまで「ドロボー!」と激しく叫んでいたソノコが
「ど~ろぼおっ、どう~ぼおっ」と
楽しげに韻を踏んで歌っている。

悪魔が去ったようだ。

そこで私は、そのリズムに乗って再びソノコの前に登場。
同じように「ど~ろぼおっ、どう~ぼおっ」と歌いながら
盆踊りのように舞いながら彼女のベッドに近づく。

それを見たソノコは手拍子を打ち、上機嫌だ。

そこで改めてご挨拶。
ソノコさ~ん、おはよう。ご気分はいかがぁ?

天使と化したソノコは言う。
「いま起きたのとこなのよ。あ~、よく寝たわ」

滑稽だ。しかしこっちは大真面目だ。

聞けば他の職員も
同じように毎回芝居を演じならが介助しているらしい。

本来なら9分以内で終わらせなければいけない見守り援助。
ソノコの場合、20分は掛かる。

時間が掛かって、痣を作って、心もやられるソノコの援助。
この間訪ねてきた長男が笑いながら、しかし吐き捨てるように
言っていたっけ。
「くそばばあ、早く死んでくんねえかな」

仕事としてやっている私たちだって大変なのだ。
家族が介護しようとしたら、そりゃ大変だろう。


みんな、生きててくれ!

2017-06-05 23:37:14 | 日記
私、きのうは頑張った。

衣替えして冬のジャケット類をクリーング店に持ち込み
毛布の洗濯、洗濯槽のクリーニングと
普段はやらないことにも精を出し
ゴキさんのためにコンバットを仕掛けて
押入れには湿気取りの“水とりゾウさん”をセットして…
ああ疲れた!なんて思う間もなく買い物に行き
夕食に鶏の天ぷらを作ったのだった。

さて、これは誰かに言いたくて仕方なかったから
ちょっと書いてみただけのことで、本題ではない。

本題は、クリーニング店へ行ったときのこと。

冬物と一緒に、春に着てそのままにしてあった喪服も
クリーニングに出した。

そのとき、店のおばちゃんが言う。
「あの、今の時期はとても混んでいて
仕上がりが3週間後になるんですけど…」
あ、別にいいですよ。全然かまいません。
「でも、あの、喪服でしょう? だから…」

そこまで言われて、ああ、なるほど!と合点。
喪服を着る機会は突然やってくる。
こちらの都合でその日を選ぶことはできない。

う~ん。3週間は長すぎる、か。

しかし物臭な私のことだ
ここで持ち帰ったら、いつまたクリーニング店に来るかわからない。

「お願いします。周りの者には当分頑張らせますから」
少しばかり逡巡したのち、私は言ったのだった。

まだ元気そうだから大丈夫だろうが
母よ、継母よ、義母よ
どうか3週間は踏ん張って生きてくれ。
縁起でもないが
おっさんよ、息子よ、大切な友人たちよ
どうかこの3週間は事故なんぞに遭わないでくれ。

マジに祈る。

喪服一枚クリーニングに出すのに
こんなに緊張するとは思わなかった。






私の漬物が消えた夜

2017-06-05 00:46:14 | 日記
こんなに取り乱したのは、いつ以来だろう。

きのうは夜勤だった。
食堂で出る夕食は、メインが肉じゃが。
嫌いではないが、私には甘い。
できればちょこっと塩味がほしい。
そう思って、漬物を用意した。
ちょっと奮発して水ナスの漬物。
うん、肉じゃがと水ナスの漬物という組み合わせなら
ご飯2杯はいける。
ク~ックックック。
夜勤というヘビーな仕事を控えながらも、心が躍る。

私は美食家でもなければ大食漢でもない。
しかし日々の食生活にモーレツな情熱を注ぐ
究極の食いしん坊である。

きのうの夜も、肉じゃが&水ナスの漬物という献立に
人知れずテンションを高めていたのだった。

ところが、前日から事務所の冷蔵庫に入れておいた水ナスの漬物が
消えていた。

え? 私の水ナス、どこに行ったの?
思わず取り乱す。
誰か、誰か私の水ナスの漬物を知りませんか~!?

上司も同僚も、登録ヘルパーさんもキョトンとしたまなざしを向ける。
中には「本当に入れたんですか?」と
私を物盗られ妄想に取り付かれた認知症老婆扱いするヤツもいる。

ホントよ、ホント。きのうここに入れておいた私の漬物がなくなったのよ。
私の水ナス、返して~~~!!!

ギリギリ堪えたが、涙があふれそうになる。

悲しい思いで肉じゃがとショボイ副菜だけの夕食を食べ、夜勤に突入。
オムツ交換とひっきりなしにかかってくるコールに対応しながらも
私の心は大切な食の楽しむを奪われた悲しみで
シトシトに濡れそぼっていたのだった。

そして一夜明け・・・
話を聞いた同僚A子からメールが届き、そこで犯人を知ることとなる。

犯人は登録ヘルパーのB子。
彼女はA子から「今度私がつくった漬物持ってきてあげるね」と言われ
たまたまきのう、冷蔵庫を開けたらナスの漬物が入っていたので
それをA子が自分に持ってきてくれたものと勘違いして食べてしまったのだという。

A子もB子も、私の食に対する執念をよく知っている。
だから、コトが発覚したとき、ヤバイ!と蒼ざめたらしい。

ま、罪を憎んで人を憎まず。
B子の軽率な行動を怒るつもりはない。
でもでもでも、大切な大切な食の楽しみを奪われた悲しみだけは
情けないことに、今もじくじくと心に残る。

ああ、私はなんと卑しい女か。
ああ、私はなんと食い意地の張ったさもしい女か。

こんな女が認知症を患って施設に入所したら
どれだけ周りに迷惑をかけることだろう。

水ナスの漬物が食べられてしまったことは悲しい。
しかしそれ以上に、己の老後が悲しくなる。






オノ・ヨーコ

2017-06-03 00:58:28 | 日記
オノ・ヨーコが“幻覚型認知症(レビー小体型認知症)”になったと
ある週刊誌に書かれていた。

レビー小体型認知症といえば、ウチのケイコ。
彼女の介護をしてきたこの数年間で
その幻覚がどんなに激しいかを、私は知った。

その経験から
過去の輝かしい経歴が症状を悪化させるのではないかと
いい加減な持論を持っている。

さて、オノ・ヨーコ。
彼女はいったいどんな幻覚と闘っているのだろう。

私なんぞが知りようもない苦労もあっただろうが
私なんぞが夢見ることもできないほど大きな名声を得て
ビートルズ解散の何十年後かに生まれた祖国の若い世代にまで
その名を知られているオノ・ヨーコ。

栄光の時代を生きてきた彼女が
果たしてどんな幻覚を見ているのか
気になってならない。

栄光とプライドが、老いた彼女を苦しませていなければいいが。