ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

暴れん坊“認知”将軍

2017-06-16 23:58:44 | 日記
凶暴な認知症老婆・ソノ子の部屋で
夕食の介助をしていたときのことである。

食べさせることに躍起になってしまうと機嫌が悪くなるので
テレビを見ながら、会話をしながら
何気ないそぶりでご飯を口元に運ぶ。

今回もそうしようと、テレビをつけた。

と、そのとき流れていたのは
精神化病棟が今、受け入れ先のない認知症高齢者で溢れ返っている
というニュース。
看護師たちが、私たち介護職員と同じように
暴れる認知症高齢者と対峙している光景が映し出されていた。

高齢受刑者の増加により
刑務所が介護施設化しているという話は前に聞いたことがある。
家庭内の老老介護ももちろん大変だが
この超高齢社会、看護師も刑務官も大変だわねえ。

そんな思いでふぅっと溜息をつき、はっと我に返る。
私がそのとき食介をしていたのは
まさしく、精神科病棟に入ってもおかしくないほど凶暴で手に負えない
認知症高齢者・ソノ子なのである。

目はテレビ画面を追っていても
その内容は理解できないことの多いソノ子。
彼女はその認知症特集の番組を見て悪態をつく。
「バッカじゃないの? あはは、バカば~っかり!」

あのねえ、ソノ子さん、これ、アナタのことだよ。

私も同僚たちも
まるで義兄弟の印でもあるかのように
腕にアナタが噛んだ、つねった、ひっかいた痕があるのよ。

息子の稼ぎがいいからウチのような高齢者住宅で
お客様扱いされているけれど
じゃなかったら、アナタだってこのテレビに映っている人たちのように
精神科病棟に入れられていると思うよ。

今日、ソノ子の凶暴性をなんとかしようと
管理者がアロマテラピーを取り入れた。

体操、ティタイム、お散歩、音楽、そして医療と
これまで様々な作戦を練ってきたが
どれもこれも撃沈。
ではアロマならどうだ!?と、わずかな望みを託したわけだ。

アロマテラピストがソノ子のために調合してくれた香りは
確かにいい。
介護する私たちの苛立ちを鎮めるのに効果的かもしれない。

しかし、あれ、おかしいぞ。
アロマは私たち職員のために用意されたのではなく…
当のソノ子は今夜も大暴れ!と
ついさっき、夜勤をしている同僚からメールが届いたのであった。