ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

ど~ろぼぉっ!なじられながら舞う私

2017-06-07 23:12:06 | 日記
優雅な奥様風の雰囲気を漂わせて入居してきたソノコは
足が痛いからと食堂に来なくなって以来
坂道を転げるようにおかしくなってきた。

何もいない床に虫がウジャウジャ這っているとか
鏡からオジイサンがでてくるとかいった具合に
幻視が激しくなり
介助なしではご飯も食べないほど意欲が低下し
そして今年に入ってからは
オムツ換えしようとする職員を噛む、つねる、ひっかくと
凶暴なバアサンと化してしまった。
(このあたりは以前書いたと思うが)

しかし、いつも凶暴なわけではない。
まるで二重人格のように
天使から悪魔へ、悪魔から天使へと
瞬時に人格が変わるのである。

今日、ソノコのオムツ交換に行った。
顔が険しい。すでに、悪魔だ。

しかし便臭がきつく、放置はできない。
自衛のためのアームカバーを両腕に通し
いざ、オムツ交換!

ソノコさ~ん、オムツ交換させてくださいね。
あ、ごめん、ごめん、怒らないで~。
ちょ、ちょっと、ソノコさん、痛い! やめて! すぐ終わるから~!!!

その間、ソノコは「ドロボー!ドロボー!」と叫び続けるが
そんなことに怯んでいられない。
不衛生より、己に痣をつけられることを選ぶ。
それが、介護職の本分だ。

さあ、さんざんにつねられ、ひっかかれながら
ようやくオムツ交換が終わる。

汚染されたオムツを捨てて手を洗っていると
さっきまで「ドロボー!」と激しく叫んでいたソノコが
「ど~ろぼおっ、どう~ぼおっ」と
楽しげに韻を踏んで歌っている。

悪魔が去ったようだ。

そこで私は、そのリズムに乗って再びソノコの前に登場。
同じように「ど~ろぼおっ、どう~ぼおっ」と歌いながら
盆踊りのように舞いながら彼女のベッドに近づく。

それを見たソノコは手拍子を打ち、上機嫌だ。

そこで改めてご挨拶。
ソノコさ~ん、おはよう。ご気分はいかがぁ?

天使と化したソノコは言う。
「いま起きたのとこなのよ。あ~、よく寝たわ」

滑稽だ。しかしこっちは大真面目だ。

聞けば他の職員も
同じように毎回芝居を演じならが介助しているらしい。

本来なら9分以内で終わらせなければいけない見守り援助。
ソノコの場合、20分は掛かる。

時間が掛かって、痣を作って、心もやられるソノコの援助。
この間訪ねてきた長男が笑いながら、しかし吐き捨てるように
言っていたっけ。
「くそばばあ、早く死んでくんねえかな」

仕事としてやっている私たちだって大変なのだ。
家族が介護しようとしたら、そりゃ大変だろう。