ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

これは事故じゃありません。

2019-03-18 00:10:22 | 日記
前々回のブログに登場したゴトウショウコ、再び!である。

排泄介助のために、ショウコの部屋を訪ねた。
ドアを開けて目に飛び込んできたのは
床に座っている彼女の姿。

パジャマ姿、そして
いつものように赤いショルダーバッグを下げた格好で
足を投げ出し
洋服ダンスに背中をもたれかけて座っている。

どーしたの、ショウコさん!?

するとショウコは悠然とした微笑みを浮かべながら言った。
「どうしたのって、私は座っているだけよ」

座ってるだけって、ショウコさん、転んだんじゃないの?

「何を仰ってるの? 私、座ってるだけよ」

ひどい認知症の彼女は
自分が置かれている状況が理解できていない。

とにかく起きましょう。
とはいえ、デブッチョの彼女を立ち上がらせるのは至難の業。
私はピッチで同僚に助けを求めた。

ショウコさん、今、若い男の子を呼びましたからね。
彼ならアナタを立ち上がらせることができるから。

ほどなくやってきた若い男の子・吉田くん(32歳)。

任せてください!と言わんばかりに
デブッチョのショウコを抱きかかえた吉田くんであったが
その彼に対してショウコは言い放った。

「若くないじゃないの~~~!?」

3秒前のことすら記憶できないのに
ショウコは
私が言った“若い男の子”という部分を
なぜかしっかりとインプットしていたらしい。

「若い男の子と言ったのに。若い男の子と言ったのに」
吉田君に抱きかかえられてベッドに運ばれるまで
彼女はずっと、そう叫び続けていたのであった。

やや老けてはいるが、吉田君はまだ32歳。
ショウコからしたら孫ほどの歳であるのだが
もはや自分の年齢もわからなくなっている彼女からしたら
吉田君は若い男子ではないのかもしれない。

事務所に帰り、上司に報告。

あのぉ、ショウコさんが転んでいたようなんですが
本人は座っていただけ、と言っているんです。
これって、事故報告書を書かなくちゃダメでかねえ。

心の広い上司は笑いながら言った。
「本人が座っているだけって言ったんでしょ?
じゃ、事故じゃないよねえ」

真相はどうあれ
今朝は面倒臭い事故報告書を書かずにすんだ。

転倒したウチの高齢者には今後
「座っているだけ」というフレーズを覚えさせよう。



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