ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

エール!

2021-01-06 00:59:00 | 日記
性悪な認知症婆・ユキは最近ますます性悪度を上げ
食堂のテーブルで同席した人を
身を乗り出してガン見する。

何見てるの? 失礼でしょ!?と注意すると
「だって、この人の顔、面白いんだもの」
「だって、この人認知症でしょ? 面白くって」
と、平気でのたまう。

まったく、手がつけられないほどイカれた奴だ。

そんなユキのテーブルの向いに、新しい入居者・チエコが座った。

歩行器を使わなければ歩けず、耳の聴こえが悪いけれど
頭はそこそこ。
まぁ、ユキに比べたら100倍しっかりしている人である。

ユキは新しいエサに食いついた。
ガン見。そして食事中の彼女の様子を舐め回すように見続ける。

ヒヤヒヤしながらその様子を見守った。

チエコはどんなに嫌な思いをしただろう。
ごめんね、そんなところに座らせてしまって。
アイツはここで一番の性悪女なの
ガン見も無視して食事を済ませてね。

それから2日後
チエコの娘が事務所を訪ねてきた。

娘は言った。

「母は手足が長いので、この間、
食事中に目の前に座っている人に足が当たってしまったそうなんです。
そうしたらその人が怒って、無言で母の足を蹴ってきたらしく・・・」

あー、それは失礼しました。
実はその方お病気で、これまでも色々な方とトレアブルを起こしていまして!

慌てて取り繕うと、娘が言った。
「い、いえ、違うんです。
母も頭に来たらしく、その方の足を思いっきり蹴り返したって言うんです。
だから謝らなくちゃいけないと思って・・・」

気になさならないでくださいね、と娘を帰したあと
事務所を振り返ったケアマネージャーは大爆笑。
「聞いてた? チエコさんがユキの足を蹴ったんだって! ガハハハハ!!」

それを受けて事務所にいた職員も大爆笑。
「やるね、チエコさん!」
「チエコさん、カッコイイーーー!」
「さすがだわぁ〜!」
「もっと蹴てやれば良かったのにね」

やんや、やんやの大喝采である。

いくつでも、どんな障害を持っていても
利用者さんは平等に対応しなければならない。
だから、ユキのような婆さんに対しても私たちが直接
天誅を下すわけにはいかない。

だから、今回は胸がスーーー!!!

チエコよ、よくぞあのユキの足を蹴り返してくれた。
久しぶりに
爆笑の渦が巻いた事務所であった。






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