素っ頓狂を絵に描いたような認知症老婆・サワコ。
迎えに行かなくても車椅子自走で食堂までやってくる
頑張り屋の彼女ではあるが
異常なまでの心配性で
部屋から出てきて玄関の鍵を掛けても
窓は閉めたか、水は止めたか、トイレは行ったか
が心配で、何度も何度も部屋に戻る。
しかも大きな声で、その心配を自分にぶつける。
「ねえ、窓は閉めたの?」
「閉めたわ、そうよ、大丈夫よ」
「ねえ、トイレに行ったんだっけ?」
「行ったじゃない。ホント? 行った方がいいんじゃない?」
「うんもぅ、イヤになっちゃうわ
私、なんでこんなに心配性なのよ!?」
廊下の端までその声が轟いてくるから
見守っている私たちは笑いを抑えられない。
さらにおかしいことに
彼女は、自分で声を発していることに
どうやら気づいていないのである。
きのうのこと。
部屋への出入りをしつこく繰り返したサワコは
ようやく食堂に向かって廊下を自走し始めた。
よし、もう大丈夫だろう。
後ろで見守っていた私は
サワコさ~ん、食堂で待ってますねと声を掛けながら
彼女の脇をすり抜けて一人、エレベーターに向かった。
そのときだ。
背後から、サワコの声が聴こえてきた。
「冷たいわよね。
行くなら私の車椅子を押してくれたっていいじゃない?
なんで一人でスタスタ行っちゃうのかしらね」
エレベーターホールの壁から顔を出し
私は大声で彼女に言った。
サワコさ~ん、人を頼っちゃダメよ。
アナタは一人でも行けるんだからね~。
(実際、彼女の移動介助をしないのは
それだけの能力が残っているし
手足を使う自走がトレーニングになると考えてのことである)
すると彼女はびっくり顔でこう言った。
「え? なんで?
なんでアナタは私の考えてることがわかったの?」
聴こえてるも~ん!
「うそよ、私、喋ってないもの」
心の声を大声で発し
それが人の耳に届いていないと思っているサワコ。
彼女は実に面白い。
迎えに行かなくても車椅子自走で食堂までやってくる
頑張り屋の彼女ではあるが
異常なまでの心配性で
部屋から出てきて玄関の鍵を掛けても
窓は閉めたか、水は止めたか、トイレは行ったか
が心配で、何度も何度も部屋に戻る。
しかも大きな声で、その心配を自分にぶつける。
「ねえ、窓は閉めたの?」
「閉めたわ、そうよ、大丈夫よ」
「ねえ、トイレに行ったんだっけ?」
「行ったじゃない。ホント? 行った方がいいんじゃない?」
「うんもぅ、イヤになっちゃうわ
私、なんでこんなに心配性なのよ!?」
廊下の端までその声が轟いてくるから
見守っている私たちは笑いを抑えられない。
さらにおかしいことに
彼女は、自分で声を発していることに
どうやら気づいていないのである。
きのうのこと。
部屋への出入りをしつこく繰り返したサワコは
ようやく食堂に向かって廊下を自走し始めた。
よし、もう大丈夫だろう。
後ろで見守っていた私は
サワコさ~ん、食堂で待ってますねと声を掛けながら
彼女の脇をすり抜けて一人、エレベーターに向かった。
そのときだ。
背後から、サワコの声が聴こえてきた。
「冷たいわよね。
行くなら私の車椅子を押してくれたっていいじゃない?
なんで一人でスタスタ行っちゃうのかしらね」
エレベーターホールの壁から顔を出し
私は大声で彼女に言った。
サワコさ~ん、人を頼っちゃダメよ。
アナタは一人でも行けるんだからね~。
(実際、彼女の移動介助をしないのは
それだけの能力が残っているし
手足を使う自走がトレーニングになると考えてのことである)
すると彼女はびっくり顔でこう言った。
「え? なんで?
なんでアナタは私の考えてることがわかったの?」
聴こえてるも~ん!
「うそよ、私、喋ってないもの」
心の声を大声で発し
それが人の耳に届いていないと思っているサワコ。
彼女は実に面白い。
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