入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

Ume氏の入笠 「晩秋」(5)

2014年10月19日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 御嶽山の噴煙はいつにもまして盛んに見える。捜索は打ち切られ、見捨てられた被害者の憤怒と遺族の嘆きがそこに重なる。
 自衛隊の中でも、山岳戦を想定して訓練を重ねてきた優秀な隊員たちもいるやに聞いていたが、長野県知事の総合的判断が、拙速でなかったことを祈る。
 二重遭難なぞだれもあってほしいとは思っていない。しかしどうも、充分な成果を上げれなかった選手が体調を理由にして、不成績を糊塗しているのと似ていなくはないのか。責任ばかりを回避する昨今の風潮は、やがてはしかるべき筋に対して信頼を欠き、不信を増幅することになる。「覚悟」のない政治判断であってほしくない。
 
 


 と、言って、自身に置き換えてみれば、山に放置されることにあまり異存はない。戦争の遺骨収集にしても、もしそれが自身のこと、はたまた身内のことであったなら、このままに、あるいはそのままに、しておいて欲しい。

 オフロードバイカーが牧柵を切り、草地を走り、爆音を残して去っていく。最も腹の立つ光景である。気のイイ山やも、また来てくれたというのに。

 山小屋「農協ハウス」とキャンプ場の営業に関しましては9月5,6日のブログをご覧ください。
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  牛を見送り、牧を閉じる

2014年10月18日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 昨日、予定通り牛を下におろした。下牧のための手続きや検査には、頭数が頭数だけにそれほどの時間を要したわけではないが、思いがけずいろいろな人が来てくれて、その対応に忙しい思いをした。牧場の窮乏をどこかで聞きつけ駆けつけてくれた人もいれば、H子さんのように偶々登ってきたら下牧の作業にぶつかったという人もいた。就中、長年会うことかなわなかった友人が、婦人を伴い来てくれたのは嬉しかった。
 そんなわけで、4か月と幾日かを一緒に過ごした牛たちとの別れは、あれで十分にできたかは分からない。チビもクロも、57番や60番も、いやいや全頭ができればここで自由に草を食み、横になり、一生を終えたいという声を聞いたつ・も・り・の者として、意を尽くし、懇切に家畜の本分と宿命を説いてやれたかは自信がない。鼻かんを打たれ、ロープに繋がれ、不安気な顔をして、雨にも風にも負けなかった牛たちは、トラックに乗せられておりていった。




 牛のいない第1牧区へいってみると、ゲートの真向いに御嶽山の噴煙らしきが雲間から上り、その右手、大きな空の終わる辺りに灰色の穂高や槍が見えた。さらに遠くの白馬の山並みはいつ冠雪したのか、雪が融けないままだ。紅葉が深い、青い空と拮抗するようにして、眼下の山肌を染め上げ迫ってきていた。少々の寂寥感もあるが、いまほど穏やかな時期はない、そう思って、もう一度重畳たる山並みと秋の空を眺めてみた。

 だれでもここへ来れば分かる、本当の入笠の四季が。ゴンドラに乗り、わずかの距離を歩き、山頂を踏むだけでは入笠は分からない。今夜は東京野歩路会が来ている。たき火を囲んで、賑やかな話声がここまで聞こえてくるが、やがてもう少しすれば頭上に満天の星を迎え、彼らはそれぞれの思いや期待を胸に、銀河鉄道の乗客となって、「無窮の遠(おち)」へと旅立つことだろう。

 山小屋「農協ハウス」とキャンプ場の営業に関しましては9月5,6日のブログをご覧ください。海山さんとそのお友達、またお出でください。Kママさん、「Ume氏の入笠」まだ続きます。ご期待ください。本当はきょうは、昨日の下牧の写真を載せるつもりでしたが中止して、PHはUme氏にお任せしました。
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Ume氏の入笠 「晩秋」(4)

2014年10月16日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 朝はまたしても曇り空で、気温も6,7度と低かった。それが午後になると次第に青空が広がり、夕方ここに帰ってくるころには乗鞍や、木曽駒の稜線にわずかな雲があるだけで、穂高も槍も薄い青色をした夕暮れの空に見えていた。経ヶ岳の左肩、いまも捜索が続けられいる御嶽山の噴煙を上げる姿
を注視してみたが、もう降雪の名残はなかった。



 明日でいよいよ牛も里へ帰る。今年はたったの18頭という、以前だったら考えられないような頭数だったが、事故もなく終わりそうでそれだけは良かった。これからのことについては皆目分からないが、ここの美しい景観やそれを生み出した牧場や自然、そして星空が活かされ、守られ、愛されることを願うだけで、残念ながら一介の牛守にできることは少ない。

 昨夜は南箕輪村の大芝にあるコテイジに泊まった。あんな施設がこの入笠にもあったならと思った反面、ここはこのままの方がいいのかもしれないという気もした。本当に山や自然、それに星空の好きな人なら、大芝のよくできた施設や整備された環境よりも、この山の中の少々時代遅れの山小屋の方を喜んでくれるかも知れないと考えたのだが・・・、さて。

 山小屋「農協ハウス」とキャンプ場の営業に関しましては9月5,6日のブログをご覧ください。
 調布第2団の田中さん、了解してます、お待ちしてます。みろく山の会の冬季の計画も、もちろん大歓迎です。

 
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         Ume氏の入笠 「晩秋」(3)

2014年10月15日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 
 上のUme氏の写真のように白樺の樹幹が目立つようになると、こらえにこらえていた力が尽きたかのように落葉は一気に早まる。そして、二度か三度の雨で、この景色はさらに一変する。待っていた季節は、あまり長く続かない。
 




 久しぶりに北原のお師匠から電話がかかる。師は北原新道の草刈のことをを気にかけているのだが、現在はこの辺りは間伐作業の最中のため、お師匠とて立ち入ることができない。それで気を揉んでいるというわけだ。
 毎年草刈を続けてきて、ようやく山道沿いのクマ笹の退治もかなりのところまで来ている。だから、ここで手を緩めるわけにはいかないというお師匠の気持ちは、不肖の弟子としてもよく分かる。
 師の毎年の草刈の距離は、半端ではない。とてもではないが真似できない。師はそれを10年以上もやってきたのだ。
 牧場の東ゲートを通り過ぎて、小黒川林道を200メートルほど下った右手に法華道の案内板がある。そこから師の草刈は始まる。まず本家・御所平峠まで、さらに法華道を芝平方面へ、そしてまた峠から高座岩まで、それで終わらず最後は北原新道・・・。こう説明しても、歩いたことのない人には想像できまい。83歳という年齢の、まさに個人の努力だ、それも並外れた!と書いても。

 入笠は不思議なところ。何か人を夢中にさせ、狂わせる。

 山小屋「農協ハウス」とキャンプ場の営業に関しましては9月5,6日のブログをご覧ください。


 
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        Ume氏の入笠 「晩秋」(2)  

2014年10月14日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 台風が過ぎたというのに、抜けるような秋空にはならない。前回もそうだった。大雨や強風の後の嘘のような晴れ間を期待しながら不安な夜を耐えたものだが、何故かこのごろはそうなってはくれない。
 また、それで良かったわけだが今回は、当初の予報や警報が大声で叫ばれた割には大したことはなかった。なにしろ今度の台風に関しては、BBCまでが日本を連続して大型の台風が襲うと報じていたほどだ。



 紅葉が盛んだ。まだ半分ほどだという人もいるが、黄色の木々の葉に、紅い葉が日毎に目立つようになってきた。いましばらくはその美しさに浸っていればよいのだろうが、この絢爛たる森や林は季節の凋落をいつまで隠していることができるだろうか。ついそう思ったりして、霧にまかれ、色彩の薄められたダケカンバの森を眺めていると、すでに秋の早い夕暮れが忍び寄ってきていた。



 1頭の大鹿を屠ったきょうは、多くを語らずにUme氏の写真に任そう。そしていつもの道を帰ろう。

 山小屋「農協ハウス」とキャンプ場の営業に関しましては9月5,6日のブログをご覧ください。

 
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