入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

Ume氏の入笠 「晩秋」(6)

2014年10月20日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 あっという間に稲が刈り取られてしまったと思っていたら、もう、新米が市場に出回るようになった。寒々とした田園の風景に慣れるまでにはもう少し時間がかかるが、それにしても機械化が進み、田で見かける人の数は昔とは比較にならない。
 
 中央アルプスのことを伊那の人たちは「西山」と呼んでいたが、その西山に日が落ちるころには、一日の長い農作業が終わる。一足先に妻と子を帰し、夫は片付けをしたり翌日の段取りをする。そしてそれが済んでようやく、心地良い疲労感と充足感に押されて家路を急ぐ。風呂があればまず夫が入り、野菜と漬物ばかりの夕餉が始まる。一本の燗酒とサンマでも食卓にのぼれば夫の機嫌も一変して、日中ビックリするような大声で叱った妻のことを心で詫び、愛しさが深まる。妻がしまい風呂を済ますころうたた寝から目覚めた夫は、子供を気遣いながらも古い重い寝布団にくるまり、妻にさらにやさしくなろうとする・・・。
 いつのころの話だろう。まだ機械化がそれほど進まず、せいぜい耕耘機ぐらいが頼りだった半世紀近い昔のことだ。



 
 農機具メーカーのくれたロゴ入りのつなぎを着て、大型トラクターを動かせば、みるみるうちに稲は刈り取られてしまう。もう、大人にまじって農作業を手伝う子供の姿はどこにもない。田圃の畔でお茶を飲みながら談笑するオバサンたちも、いつにか消えてしまった。田園風景の中の平凡な人々の営みは、今では心象として残るだけだが、それとていつまでもあるわけではない。

 2匹の犬を可愛がってくれたO夫妻も去り、山も牧場もすっかり寂しくなった。午後からは雨となり、秋はそろそろ新しい季節に移ろうとしている。高いところは雪になるかも知れない。雷電様の近くに仕掛けた罠に、また1頭の雄鹿がかかっている。

 山小屋「農協ハウス」とキャンプ場の営業に関しましては9月5,6日のブログをご覧ください。また、あまり遅くならないうちに、冬季計画についてもお問い合わせください。FC/Nさん、ありがとうございました。援護射撃を期待してます。TDS君のねぎらいの言葉「頭数は少なくとも、した苦労は同じでしょう」、哭けた。
 
 
コメント
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