下界は「危険な暑さ」だという予報、注意喚起がきょうも出ている。友人らからも牧守としては切り離せない外の仕事を気遣ってか、「熱中症に気を付けろ」と有難い忠告が届く。
午前5時を少し過ぎた今ここの気温は10度、そのためフリースを着ている。連日のように草刈りに精を出しているが、日中でも25度までは行かないと見ているから、都会では考えられない山の中の贅沢な夏だ。
牛たちには1日置きに塩、フスマ、配合飼料を混ぜた餌を与えている。時間も大体決めていて、午前10頃がその目途だ。
昨日は和牛を放牧している第1牧区へ上がっていくと、すでに牛たちはその近くで草を食んでいた。それで、塩場からは3乃至400㍍離れた御所平まで牛を迎えに行く必要がなくなった。
呼ばなくても来るが、一応は大きな声を出す。すると、犬っころのように、大きな身体を揺さぶって走ってくる。入牧からまだ1ヶ月も経っていないのにすでに調教の効果があって、大半が立派な角を生やしていてそれなりの凄み、迫力はあるが、それでも扱いやすい。
他方、乳牛は和牛のようなわけにはいかない。少し知恵が足りないかも知れないと思うくらいだ。呼べば、ノロノロと向かって来る日もあれば、「何しに来たんだ」というようなまるっきり愛想のない態度で、動こうともしない日もある。
もう少しすれば、広い第4牧区に放牧することになるが、和牛のように群れで行動してくれるかどうか、バラけてしまえば頭数確認ばかりか結構手を焼くことも増えてくる。
一番気になることは、第4牧区へ出した後、電気牧柵に怯えて牛たちが今以上に神経質になりはしないかということだ。今年は、隣の牧区と囲い罠を自由に出入りできるようにするつもりだが、歴代の牛が決まってその出入り口の扉を通るのを怖れ、かなり躊躇して見せる。
囲いの外に出た途端に受けた電気牧柵からの衝撃と、その扉とが関係しているとでも思い違いをしているのだろうか。
牛の生涯は非常に短い。放っておけば20年ぐらいの寿命はあると聞くが、人間の都合で繁殖用の牛以外は4乃至5年ぐらいだろうか。生きている間も、結果的には人間のためにひたすら食べて大きくなり、乳牛は子を産み乳を出し、肉牛は人間に好まれる肉を付け、そして終わる。
この地上に生息する哺乳類の中で、牛はほぼ人間の数と同じくらいの頭数がいて、合わせておよそ70㌫を占め、シカ、クマ、キツネ、ライオン、ゾウ、クジラ、イルカなどの野生の哺乳類は、たったの4㌫でしかないのだとか。どうやらこれも、われわれ人間の責任らしい。
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