好天、予定通り上に行ってきた。昨夜降った雪の影響を覚悟し、そしてまた期待もした。気になっていたオオダオ(芝平峠)の崩落現場には重機が入り、取り敢えずは林道に押し寄せた泥濘の除去を始めたようだった。
峠に置かれた通行止めの馬はさらに厳重になっていて、それを無視するのはさすがに気が引けたが、それでもすでに薄い新雪の上に残る幾本かの車の轍に誘われるようにして、先に進んだ。
峠と「池の平」の中間ぐらいから雪の量は増え始め、車重のない軽トラでなく、自分の車の方が良かったかなどと出発前の思案を思い返すも、行くしかなかった。ところが驚いたことに、「焼き合わせ」まで来ると、先行していた車の轍は全車が左の「鐘打平」方面に向かっていた。そして、そこから先の牧場に通ずる林道には踏み跡がなかった。
日陰や吹き溜まりは10センチを超える積雪があったが、15年間、冬でも何度も通った道である。車は深雪をスキーで滑走するように滑らかに進み、シール付きの山スキーを持って来ていれば、車など「焼き合わせ」に捨てても良いと思ったくらいだった。管理棟まではそこから5キロ、そうすれば雪上に残された動物の足跡を眺めたり、樹々の枝から舞い落ちる粉雪に目を細めたりして、森閑とした雪の道を時間をかけて行くことができただろう。
ド日陰の大曲を過ぎた行く手には、雪の重みでたわんだ木々の枝が林道に覆いかぶさり、白いトンネルを作って待っていてくれた。そういう中に今冬もまた、入っていけることに感謝した。
今年はいつもの年よりか雪が多いのだろうか。近々、昨夜と同じくらいの積雪があれば、もう車で上に行くのは難しいだろう。これまでに、年内に車で行けなかった年があったか思い出せないが、そうであれば越年は歩いていくことになる。
どこにいても新しい年は来るのだし、その淑気を、わざわざ寒い山の中で祝うこともなかろうと言われれば、そうだと答える。まったくそうだ。しかし、それでも行く。
新年が来るよりか去っていく年に気持ちが動くからで、その想いに相応しい場所となれば入笠を措いては考えられない。もう何年も続けてきたことだ。それに今年は昨年とは違い、静かな年越しになるだろう。(12月9日記)
きょう(12月10日)はこれからTDS君と長野市、そして正月に食する長芋の産地、松本市近郊の山形村へ。