
Andromeda Galaxy Photo by Umezu
天気:曇り、気温:15度C(昼)
長野県内の山岳遭難が大きな問題となっている。「2010年から3年連続で件数・遭難者数ともに過去最悪を更新」と今日の毎日新聞の県版が報じている。遭難者の8割近くは、40代以上の中高年だとも。
かって、谷川岳はひとつの山域としては世界最悪の遭難事故を記録し「魔の山」と呼ばれた。県の条例で規制を強めはしたものの、危険区域への入山そのものを禁止することなど、もちろんできなかった。
しかし、本当にこうした中高年の遭難事故をなくすには、登らなければよいのだ。山は危険なのだから。それしかゼロにする方法などない。
問題は、どうも遭難事故を案ずる一方で、観光事業者、スポーツ用品業者、マスコミ、観光行政などは登山の”安易で気軽な”イメージを登山者に与え過ぎはしなかっただろうか。富士の「世界遺産」騒動のように。
毎日新聞も同じページの中で、標高2000メートルの高峰高原の紅葉の見ごろを、カラー写真を添えて伝えている。マスコミには登山について伝統的ともいうべき固定観念があって、それを礼賛しながら、遭難事故の増加を嘆いてみたり、批判してみたりするのだ。
このごろ「山ガール」という言葉を耳にする。短いスカートにタイツ姿の女性登山者が、ここらあたりにも出没している。何かお洒落でも楽しみに来ているようで、とても山が危険だと感じてているようには見えない。
田部井淳子が頑張り、三浦雄一郎がエベレストに登れば、「入笠山ぐらいは」と80歳の老人もゴンドラに乗ってやってくる。この人たちには登山という意識はないし、山の持つ危険など夢にもないだろう。
昔の仲間を誘って登山を再開した人々もいる。思い出の懐かしい山に登れば、年齢のことも山の危険なことも忘れてしまうかもしれない。日常にはない興奮や感動を、山が再び与えてくれるのだから。
どこかのメーカーはお洒落なヘルメットを県に寄贈し、受け取った県は車のシートベルトのように、登山者の必携品にしたいなどと馬鹿なことを言う。一般登山者にとって、ヘルメットの実用性などどれほどあるというのか。
技術の粋を集めたはずだったスペースシャトルにも、原発にも事故は起きた。一流のクライマーの5割は、山で死ぬと言われた。思いがけない不運はどこにでもある。まして日常から離れた山の中、高山であればなおさらだ。長生きしたかったら、危険を避けるにしくはない。いい歳をして山などに行くべきではない。
だがそれでも山の魅力に抗えない人はいる。そういう人は、山に行けばよい。「いつか或る日」のあることも覚悟して、山に行けばいい。山で死ぬことが、すべて責められ否定されることとは思わない。
今日は終日霧と雨。気温も上がらなかった。しかし、こういう天気も味わい深くていい。