スウェーデン音楽留学サバイバル日記 ~ニッケルハルパ(nyckelharpa)を学ぶ

スウェーデンの民族楽器ニッケルハルパを学ぶため留学。日々の生活を様々な視点からレポートします。

ポルスカがポルスカでなくなる

2008-06-24 23:34:36 | 2008年夏
今日もだるい体を引きずってヘンリクのところへ。
昨日ならった曲は結局一度も練習する機会がなかった。
LSと一緒に校舎(2分ほど離れた学校を借りてレッスンがある)へ行きながら録音を聞いた。

そして部屋についてヘンリクが「じゃあ、昨日の曲覚えてる?」というので
「えーと・・・。さっきまでは覚えてたんだけど・・・」(ホントにさっきなんですけど)
早速弾いてくれて思い出した!
ヘンリクは柔らかくソフトに話す。演奏も柔らかい。
こんな頭がくらくらする日にはとくにありがたい。
トルビョンならジョークをとばっしぱなしでエネルギッシュだから朝一レッスンには向いてない。

そして今日もレイフの部屋に行った。
もう1曲、伴奏が難しい曲があるのだ。これはダーラナはレトビックの有名な曲。
Polska efter Börjes Olleだ。
ステンマ(ハーモニーの伴奏)をつけるのが難しく、コードを考えるとイマイチ曲がぱっとしないのだ。
でも、この曲でぱーっと華やかにメロディが際立つ伴奏を聴いたことがある。
何かテクニックがあるに違いない。
するとレイフは、昨日と同様即興ですばらしく美しい伴奏をつけるではないですか!
「この曲はすごく変わってる曲だから。コードが目まぐるしく変わるでしょ、こことここ。」
ふむふむ。
「まずはコードを追いながら、そしてメロディを聞いてメロディと一緒に少し動く。それだけでいいだんよ。
色んなことをやりたいかもしれないけど、フォークの曲は一つずつが個性的すぎるから。色んなことはしなくていいんだ」
私にはもっと経験が必要みたい。
そして今日は欲張って、さらにヘルシングランド地方の曲もならった。

午後からはエスビョンのところへ行った。予約をしていったのだけど別の作業中だった。
おじいちゃんが孫にプレゼントしたという手作りハルパを持ってる子がいて、素人ならではの問題がいっぱいあるからと
エスビョンは鍵盤を分解して日本製のこぎりで切っている最中だった。
しばし作業をみていると、「何か弾いてごらん。作業してるけど聞いてるから」という。
早速、弾いた。他の先生達はなかなか注意というのをしてくれないが、エスビョンは優しく問題を指摘してくれる。
弾き終わると、手を休めてうなずく、エスビョン。
「良かったよ。でも一つアドバイスするとしたら重すぎる。もっと軽やかに弾いたほうがいい。
エリック・サルストレムのスタイルはいつもエレガントだった」と。
確かに、全身力が抜けてなかったみたいで弾き終わると左手がだるい。
「リズムが大事なんだ。重く弾いても軽く弾いてもリズムがそこに感じられればいい。でも、君のボーイングは少し重いと思う」
頭を一回きりかえないとダメだ、ダメだ。
前も言われたのに、日本にいる間にすっかりそんなアドバイス忘れてた。
日本では一人きりで練習するから、どうしても色んなことが抜けていく。

今日も息をつく間もなく、15時のグループレッスンだ。
今日はカイサ。グループの数も先生の数も多いので、全講師にあたるとは限らない。
でもカイサのレッスンは受けたかったので良かった!
カイサは選曲に難航した。「この曲知ってる?」というと必ず誰かが知っているのだ。
結局ウップランドの曲をあきらめ、ヘルシングランドの有名フィドラーが作曲したmidsommardrömというとっても美しい曲を教えてくれた。

さて!次は夕食後、再び私はダンス・レッスンに参加。
ダンスの伴奏は毎回講師がしてくれる。今日はカイサとエドヴァルドだ。
習ったダンスはダーラナ地方のMalungのポルスカ。
跳ねるようにターンをする。どこかで踊った。ESI?日本のSvepan?
跳ねるよにターンを数小節して、Bakmes(反対周り)ターンをする。
そして、それと比較するように昨日の滑らかに踊るBingsjöをもう一度踊った。
その時、ESIダンスコースと演奏コースと2年いったIが私の相手をしてくれた(ペアで踊る)。
Iと踊るのは初めてだ。踊ると・・・何?コレ?初めてのことにびっくりした!
ポルスカのターンは、ウマイ人と踊ると回っている感じが全くしない。
まるで歩いて前に進んでいるような感覚になるのだ。
そして脳ミソはターンの遠心力でほどよくトランス状態になれ、とっても気持ち良い。
これは、たま~に、すごくウマイ人とペアになると感じる。
ところが、Iとは全然違った。
「歩くよう」ではない。「水面にたっていると、すーと滑って移動している」感じという表現がぴったりくる。
足を動かしている感覚すら突然消えてしまったのだ!
な、なんで?私、足あったっけ?あるよね?とつい思ってしまいました。
今も書きながらあの感覚を思い出して、意味もなく頭をぶんぶん振ってしまいます。

そんな不思議体験の後、19時よりコンサートです。
毎回、誰のコンサートかは秘密だ。コーディネーターのラーシュが、誰だろう?と思っていると
「では始めます!どうぞ!」とドアを開けると・・・ちびっ子が登場した。
ジョークだったみたい。お辞儀をしてでていった。
で、誰?講師たちは皆リラックスしたようすで客席にいるし・・・
と、引っ張ったところで「エリック・リドヴァルとサンドラです!」
すると、エリックとサンドラが楽器を取りに猛ダッシュで部屋を飛び出していった。
客席からは「そうなんだ!だまされたよ!」と演出に大喜び。
さて、気を取り直し楽器を手に戻ってきた二人。ウマイです。鳥肌もの。
エリックは今日始めてエスビョンの楽器を手にした(もちろん購入)。
1年前に聞いた演奏も十分上手かったのに、まだ上があったのかというくらい格段上がっていた。
緻密さ、正確さに加え、速度とキレもパワーアップ(ニクラスと良い勝負)、表現の豊かさ、どれをとっても油が乗り切っている。
途中、みんながハッと息を呑むテクニックを披露する。
一緒に弾くバイオリンのサンドラもかなりウマイ。ダーラナ地方の曲が専門のようだ。
ダーラナの甘い、そしてさわやかな曲を二人で奏でる。
みんな、うっとりと二人に聞きほれアッと言う間にコンサートが終了した。
そこにいた誰もが「これからエリック(リドヴァル)の時代だ!」と思ったに違いない。
コンサート後、客席はかなり興奮状態だった。
終了後fikaしている時に、Nは「次回Ekebyholmのコースとったら絶対エリックを個人レッスンで選ぶ!あの二人CD出せばいいのに!」
私も同感!ブラボー!

そんな興奮さめやらぬ今夜もあつくセッションがヒートアップ!?かと思いきや、なぜか誰も弾かない。
ぶらぶらしているうちに人まで減ってきた。
Lを捕まえて「みんなどこにいったの?弾かないの?」というと、
「ほんとね。誰かの部屋で弾いてるのかもよ。見にいこうよ!」
と一部屋ずつ忍び足でドアにちかづき、耳をあてては「いないね」と小声でささやく。
するとMが私たちをみつけ、一緒にドアに耳をあててモノマネをはじめた。
するとラーシュが突然部屋から出てきてびっくり!
ちょうどいいと「皆いないし誰も弾いてないし、どうなってんの?」と聞いた。
すると「他の人は知らないけど、エスビョンとエリックなら、森に走りいくの見たよ」とスウェーデン語がよく分からない私に
走るジェスチャーを大げさにしてみせる。
ええ?!なんでまた一体20時もすぎて森に二人で走りにいく訳?意味ワカラン。

ちぇっ、誰も弾かないなんてツマンナイ。
サロンをのぞくとうちのグループの中でも特に若い子(19歳とか)だけが弾いていた。
でも、若い子の特徴で、めっちゃくちゃ早く弾きたがる。
あのコンサートの後では、一緒に弾く気にはなれない。
ポルスカにはポルスカのテンポ(速さ)というものがある
アレンジなどしてちょっと早いのも、ちょっとスローもOK。でも、すっごく早いと曲そのものが台無しになるのだ。
超高速テンポのワルツの演奏なんて普通はしないように、ポルスカにだってポルスカと呼べなくなるテンポがあるのだ。
「伝統にしたがう」という意味ではない。メロディがポルスカでなくなるのだ。
特にヴェーセンのようなノリノリのバンドが人気があるせいか、アイリッシュから来た人にも多いのだけど、
ノリノリ度合いにさらに拍車がかかっていく人が増えた気もする。

曲の美しさやポルスカにかかる遠心力(リズムやうねり)の奥深さを理解するには、ちょっと若いのかな?
技術はすごくあるからもったいない。
随分バカにしたような言い方かもしれないけど、以前の私も早すぎると注意を受けたことがあって分かるのだ。
その時、Björn Ståbiなど有名プレーヤーも若い頃は早く弾いていた、という話も聞いた。

そういえば全然授業の録音を聞いてなかったと思いしばし録音を聞くことにした。
するとカイサが私をみつけ「何で一人で居るの?」と心配されてしまった。
だって、部屋に戻って聞こうにも、部屋の前では例の歌をやってるし・・・。
ふーん、どこにいても居心地わるいなぁとサロンをまたのぞくと、エスビョンがさっきの若い子に指導していた。

それなら話は別だ。私も楽器を持って中へ入った。
スウェーデン語で話していたけど多分、私が感じたことと同じようなことを言ってるみたい。
そしてエスビョンが私の手をとってBondpolskaを踊った。
そして「No, no!まだ演奏が早すぎる!それじゃ踊れない!」
そうそう、ビシバシ言ってあげてね。
「踊るから。それにあわせて弾いてみて」とエスビョン。
無伴奏で踊る私たちをじっとJが見てから、弾き始めた。
「そうそう。その調子」
うん、確かに良い感じになってる。コツをつかむのもさすがに早い!

それからはずっと一緒に話しながら弾いた。
いつもエスビョンはエリック・サルストレムと弾いた曲を弾くけど、今夜は、故セイロン・ヴァリンの曲をずっと弾いてくれた。
かわいらしい曲が多い。
するとレイフがやってきてずっと伴奏をつけてくれる。
セイロンはなかなか一緒に弾くのが難しい人だったんだって。ステンマで弾いているところに他の人が入ってくると
演奏するのを辞めるんだって。今から家にいっていい?と言われても断るタイプの人だったらしい。
エスビョンの兄弟がたまたますぐ側に住んでいて弾く機会があったんだって。

エスビョンと話したり弾いたりするといつも何とも言えない不思議な気持ちになる。
多分、大学で教えていることも関係するのかな。堅苦しいという意味ではない。
エスビョンは問いかけが多いのだ。
「これを聞いてどう思う?」「この音から何を感じ取れる?」「改善するには何が必要だと思う?」
決して答えは要求しない。問いかけの後、しばし考える時間をくれる。
ただそれだけのことなんだけど、本当に答えるには意味が深いことばかりなので、いつも不思議な余韻が残るのだ。
2時もまわると「一緒に弾けて楽しかった。そろそろ寝るから」と解散した。

不思議な余韻で部屋にもどるとKさんがまだ起きていた。
ずっと時間も合わず、グループも違ってゆっくり話す暇がなかったのだけど、やっとゆっくりお話ができた。
「いつも、またこの景色、この眺めを見れるのは最後かもしれない、と思いながらきてる。毎回、毎回がとても大事なんだ」って。
「あー、3時すぎちゃったわねー」とKさん。
余韻の残るあとに、とても良い会話ができました。

日々、就寝時間の記録更新中。
おやすみ!

写真は作業中のエスビョンと、夜のコンサートの二人。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« Trosaはセーデルマンランドで... | トップ | エリック・サルストレムのビデオ »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (みかたろう)
2008-06-28 12:22:15
「ポルスカにはポルスカのテンポ(速さ)というものがある」

勉強になります。私も、アイリッシュから来た人なので、身につまされます。

最近は、ステンマでダンスと一緒に弾くことも多いのでわかりますけど、一人で練習してると、どうしても早くなってしまいます。

ちょっと気をつけて練習してみますね。
返信する
すみません・・・ (管理人)
2008-06-28 16:29:24
何か一人でコレ書いていると自分によってるのか(笑)えらそーなことを書いてるなぁと後から思ってしまいます。
後で書き直したりして(汗)
速さだけじゃないですが、一人でやるのって何でも難しいですよね!
返信する

コメントを投稿

2008年夏」カテゴリの最新記事