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『永遠のゼロ』とよそ事でなくなる『ロード・オブ・ウォー』

2014-03-07 19:27:20 | 日記
 『永遠のゼロ』と言う映画が大ヒットしているそうですが、日中、日韓の関係が冷戦もどきに冷え込んでいる中、対米関係を重視する政府は、集団的自衛権、武器輸出三原則をお土産に、アメリカの不信感を取り除こうとしています。戦争と武器輸出がどういうことなのか、映画『ロード・オブ・ウォー』は、『永遠のゼロ』の中身を検証するうえでも観て戴きたい作品の一本です。主人公がウクライナ人であることも時宜を得ています。

『ロード・オブ・ウォー』がよそ事でなくなる?    
                                 
 『カンタ!ティモール』、2011年に一般公開された、広田奈津子監督のドキュメンタリー映画。カンタはティモール語で「歌え」を意味するといいます。その歌の中に「戦争は過ち、大地が怒るよ」という文句があるそうです。と言うのも僕は未だこの作品を観てはいないのですが、2002年に東ティモールが、インドネシアから独立するまで、およそ450年、ポルトガル、オランダ、日本、オーストラリア、インドネシアの支配下、にあったことを想えば、この歌の意味するところは伝わってくるような気がします。

 実はこの作品を知ったのは、東京新聞の社説(2014年1月13日)を通じての事で、今回紹介する『ロード・オブ・ウォー』(2005年、アンドリュー・二コル監督)は、この作品がその切っ掛けを提供してくれたのです。植民地と独立、そして戦争と武器は付き物です。「積極的平和主義」の下、アメリカと一緒に戦争のできる国となるために、集団的自衛権の発動が俎上に載せられているのに加えて、「武器輸出三原則」の撤廃・見直しが着々と進行しています。「武器輸出三原則」とは、①共産圏諸国、②国連決議で禁止している地域、③国際紛争地域には武器及びその製造技術、転用可能品目を輸出できないというもので、それ以外の地域には輸出はできるのですが、平和憲法を国是としている建前、実質的には「慎」んできたのです。その安倍さんは、アジア、中東、さらにアフリカ諸国へとこれまで以上に幅広く外交セールスに励んでいます。原発の輸出や外国投資の促進が目的だそうですが、「武器輸出三原則」の撤廃が、政情不安なこの地域にティモールの人たちが歌う「戦争は過ち、大地が怒るよ」に繋がらないのか、危惧することしきりです。

 アカデミー賞監督オリバー・ストーンが『もう一つのアメリカ史』で指摘するまでもなく、第二次大戦後アメリカが関わってきた旧植民地諸国での紛争は「ノー」というのが困難なほど切りがありません。映画はそうした旧植民地の内紛に乗じてアメリカや旧ソ連の武器を売り込む「死の商人」を主人公にした波乱万丈の物語。旧ソ連邦のウクライナからアメリカに移住してきた主人公ユーリ・オルコフ(ニコラス・ケージ)一家は、新天地での生活不安を抱える中、ロシアン・マフィアの銃撃戦を目撃し、ユーリは弟ヴィタリー(ジャレット・レト)とともに武器商人の道に入ってゆきます。舞台はベルリンの兵器見本市を皮切りに、現在内戦中のレバノン、南米、そして紛争が今なお続いているアフリカ諸国に及んでゆき、ユーリは巨万の富を得ることになるのですが、この商売に関わった叔父はテロによる爆死、死の商人になり切れない弟は紛争現場で射殺され、妻にも離婚を迫られることになります。そのあげくは国際警察官(イーサン・ホーク)に逮捕されることになるのですが、なぜかユーリは釈放されます。正にことの本質を突く幕切れです。

 ちなみに広田監督は2月号に登場した平和活動家・瀬谷ルミ子さんと同世代、安倍さんの「美しい日本」に賛同する若い方々には、彼女の作品とともに是非観て欲しい二本です。
(『むすび』2014年4月号)