去年の「題名のない音楽会」で初めてその存在を知ったときから、私の心に強い印象を残していた、牛田智大(ともはる)くん。
まだ12歳。 (もしかしたら、最近13歳になったのかも‥)
その年齢で、“神童”とも“天才ピアニスト”とも讃えられている彼のピアノリサイタルが、22日にシンフォニーホールで行われた。
(今回私は初めて、舞台裏手の2階席のチケットをとってみた。)
彼は、クラシックの演奏家として史上最年少でCDデビューを果たし、今までに数々の賞を獲得してきた。
でも私は、そのような彼の実績とは関係なく、彼が1年前のテレビで見せた、あの可愛くあどけない表情と、そんな彼があの時、全身を使って創り出し
た情感豊かな音の世界とを、絶対にナマで見たい!聴きたい!と思って、チケットを取ったのだった。
少し神妙な面持ちで、舞台に登場した牛田くん。
彼の姿が舞台に現れると、客席からは思わず「カワイイ!」という声が漏れ、会場には、あたたかく優しい空気が流れた。
彼はまだ、本当にあどけなかった。
12歳という年齢よりも、ずっと幼く見えた。
演奏を始める前に挨拶をした彼の声は、まだ変声期前で、少女の声と言ってもいいほどのものだった。
彼の声を聞いた聴衆の中からは、再び、愛情のこもった「カワイイ!」の声‥。
でも演奏が始まって、彼のピアノが音を奏でると、そこには、「幼さ」を全く感じさせない音の世界が広がった。
今回の演奏曲目は、次のとおり。
私は今回、事前の予想とは違って、汪立三の「組曲“東山魁夷画意”より~第4曲“波声”」や、リストの「ハンガリー狂詩曲~第12番」などの、どちら
かと言うと、力強い曲の演奏に、よりいっそう心を動かされた。
あの幼い身体のどこから、あんなに力強い、変化に富んだ音が出てくるのだろう!?
私は、“優しく情感豊かな”だけではない、彼の音の世界の拡がりを感じて、とてもうれしかった。
次に会うとき、彼は、どんな新たな音の世界を、我々に示してくれるのだろう!?
私は、彼の更なる高みへの挑戦を心から願って、演奏会場をあとにした。
シンフォニーホールと我がマンションとは、直線で結べば結構近い距離にある。
そこで私は最近、贅沢だとは思いつつ、タクシーで行くことが多くなった。
一人の場合は、帰りもついついタクシーに乗ってしまうのだが、この日は歩いて帰ることにした。
牛田智大くんのピアノの音の余韻に浸りながら‥。
途中、朝の公園よりももっとたくさん花を付けた金木犀が、甘く濃厚な香りを辺りに放っていた。
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