今は亡き井上ひさし氏が、死の直前まで、「書きたい!書かなければ!」と強く願っておられた、戦中・戦後の沖縄をテーマにした作品。
井上氏の遺志を受け継いだ多くの人々の試行錯誤と苦闘の中から、≪木の上の軍隊≫が書き上げられ、上演の運びとなった。
脚本は、若手の脚本家・蓬莱竜太氏。
演出は、井上氏と長い間共同作業を続けてこられた、栗山民也氏。
出演者は、(島出身の新兵役の)藤原竜也さん・(本土出身の上官役の)山西惇さん・(木の精=狂言まわしの役割をしている)片平なぎささん。
私がこの演劇の存在を知ったのは、大分前の「徹子の部屋」に片平なぎささんがお客さんとして招かれた折、この演劇のことに話が及んだからだった。
その後「NHKスペシャル」で、この演劇のことが取り上げられ、私は、井上氏の熱い想いと、それを受け継いで何とか作品化しようと苦闘されてきた
人々の姿を、更に深く知ることとなった。
私はぜひ≪木の上の軍隊≫を観たい!と思った。
幸い、チケットがとれた。
私は、友人Oさんと一緒に、5月17日、阪急インターナショナルホテル内の「シアター・ドラマシティ」に、≪木の上の軍隊≫を観に行った。
この演劇は、地上戦となった沖縄のある島で、命からがらガジュマルの木に逃れ、戦中から戦後にかけての2年間、樹上に潜伏した2人の兵士の実話
をもとにして作られた。
樹上に潜伏した2人の兵士のうちの、一人は、(藤原竜也演じる)島出身の新兵であり、もう一人は、本土出身の上官(山西惇が演じる)である。
命の危険にさらされ、飢えに苦しみながら、樹上生活を続ける二人。
その二人の会話と、“木の精”のモノローグ&語りから、戦争の悲劇と、戦争によってもたらされる人格の破壊の様が、時に面白可笑しく、描かれていく。
敗戦を知らずに樹上生活を続ける二人のすぐ目の前で、次第に拡大していくアメリカ軍基地。
戦争が沖縄にもたらした悲劇と矛盾が、喜劇仕立ての進行の中で、次第に明らかにされていく。
私はこの演劇を観ながら、沖縄が未だに抱えている問題の大きさ(それは、とりもなおさず、日本の国の問題でもある)を、改めて強く感じた。
本土で生活している私たちは、ややもすれば、沖縄の抱えている問題を、他人事として済ましてしまっているのではないだろうか!?
だからと言って、沖縄の問題をどのように解決すべきなのか、今の私にはよく分からない。
井上氏に、その答えがあったのかどうか、それも分からない。
でも少なくとも井上氏は、沖縄の問題を自らの問題として考え、沖縄の悲しみを自らの悲しみとして、深く心を傷めておられたのだと思う。
私は、その誠実な姿勢・深い人間性を、本当にすばらしいと思う。
私は今改めて、そんな井上氏を失ったことを、深く悲しむ。
沖縄の哀しみなどそっちのけで、またぞろ戦争好きの政治家が横行しようとする現在(イマ)であれば、なおさらだ。
でも悲しんでいるだけではどうしようもない。
どれだけのことができるか分からないけれど、私も井上氏を少しでも見習って、沖縄を含めて今の日本が抱えている問題に真摯に向き合わなければ!
と強く思う。
ふたたび、沖縄のような悲劇が、起こることのないように!
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