昨年暮れ<第九>の演奏会に行って以来、ずっとコンサートには行っていなかった。
「コンサートには」と言うより、全て何だか出不精になり、コンサートも行く気になれなかった。
でも5月のある日、(シンフォニーホールから送られてきた)近く行われるコンサートのパンフレットをパラパラとめくっている
と、「行きたいなあ!」「行ってみようかなあ?」と思うコンサートが幾つかあった。
その中のまず一つが、「前橋汀子ヴァイオリン名作選」だった。
前橋汀子さんのヴァイオリンは以前にも聴いたことがあるけれど、今回は選ばれた曲に心が動いた。
(彼女が今回選ばれた曲名を、下の写真で紹介します。)
どの曲もよく知られた名曲だが、私を今回のコンサートに強く誘ってくれたのは、「ツィゴイネルワイゼン」と「序奏とロンド
カプリチオーソ」だった。
実はこの2曲は、私の青春時代を象徴する曲だった。
まだ若かりし頃、ドーナツ盤の表と裏に収められたこの2曲を聴きながら、私は何度泣き出したい気持ちになったことだ
ろう。
なんて言うと、ちょっと照れくさいけれど、本当にこの2曲の甘く切ないヴァイオリンの音色は、青春時代の私の心をとりこ
にしたのだった。
そしてこの2曲が私をクラシックの世界に導いてもくれた。
前橋汀子さんの年齢はハッキリとは知らないけれど、私と大体同じ世代の方なのではないかと思う。
その彼女が奏でてくださる、「ツィゴイネルワイゼン」と「ロンド・カプリチオーソ」。
ぜひ、聴きたい!強くそう思った。
12日のコンサートの私の座席は、2階のバルコニー席だった。
そのバルコニー席から、舞台に近い会場を撮った。向かいのバルコニー席にも多くの人が…
前橋さんはまっ赤な割とシンプルなドレスがお好きだと思っていたが、今回は可愛い感じの濃いピンク系のドレスだった。
裾丈の長い優雅なドレス…多分その中では高いヒールの靴をはいておられるだろうなあ‥。
などと想像し、ヒールでドレスの裾を踏んでしまわれたりしないかと、要らぬ心配をしたりした。
もちろんそんな心配は杞憂で、彼女はプログラムの初めから終わりまでを、力強く熱演された。
私をこのコンサートに導いた2曲も素晴らしかったが、「赤いサラファン」をモチーフにした「モスクワの思い出」や「ウィー
ン奇想曲」が新鮮に響いた。
とにかく久しぶりのコンサートは、私を少し元気にしてくれた。
2つ目のコンサートは、25日に行われた、下の写真のコンサート。
皆さんと同じよう私も、ロシアによるウクライナへの侵略戦争が始まってから、強い驚きと深い悲しみの中にいる。
どうしてこんなことが起きてしまうのか!?
あの第二次世界大戦で、人類は、戦争の愚かさを嫌と言うほど味わい、二度とあのような戦争は起こらないだろう、など
と考えていたのが、今になってみると愚かなことだったのかも知れない。
それはさて置き、ウクライナの方々を支援するといっても、募金くらいしか頭に浮かばない私は、このコンサートの案内
を見たとき、とりあえずこのコンサートに参加することにした。
(コンサートの収益金はウクライナ支援に使うと書いてもあった。)
このコンサートは、一部から三部までに分かれていて、中味の濃いものだった。
まず一部は下の写真のような中味だった。
一部の最初の曲・「アヴェマリア」の演奏(歌も)は、参加者全員が起立して黙とうしながら聴くという、今までに経験した
ことのない方法がとられた。
黙祷してアヴェマリアを聴くとき、何とも言えない気分に襲われた。
また、サンサーンスの「瀕死の白鳥」は、チェロの演奏に合わせて、戦争の被害を逃れて神戸に来られたバレリーナの
女性が、(最初の写真にあるように)自身“瀕死の白鳥”となって踊られた。
バレリーナの女性は夫をウクライナに残して来られていて、踊り終わった後に、可愛い娘さんの手を引いて挨拶された。
そして彼女と同じように、戦禍を逃れて日本にやってこられた女性たち(6人)も、彼女と一緒に壇上に上がられた。
何とも胸詰まる思いだった。
二部では上の写真のように、ピアノ曲が3曲続く構成になっていて、上から小学生、中学生、プロのピアニストが順番に
ピアノを弾かれ、それはそれで、なんか温かみのある構成だなあと感心した。
そして休憩をはさんでの第三部は…
「展覧会の絵」の中でもよく取り上げられる「キエフの大門」は、今まさにキエフ(キーウ)を首都とするウクライナが砲弾の
嵐の中にあり、その中を人々が逃げ惑っていることを思い起こさせられ、辛い思いを抱きながら聴いた。
そしてこのコンサートの最後に、ヴェートーベンの「第九」が取り上げられているのには、正直驚いた。
このコンサートの開催が決まってから多くの時間は無かったと思われるのに、オーケストラの他に独唱を初め数多くの
合唱の方々を必要とする、この第九の4楽章に挑戦されるとは!
「世界は全て兄弟となる」と歌う第九は、このコンサートの最後を飾る曲として、もっともふさわしい曲だと思った。
とっても素晴らしかった!
今回コンサートに参加された演奏家の方々は、一部を除いて、プロとして華々しく活動しておられる方は少ないと思う。
それなのに、こんなに素敵な演奏を聴かせていただけるなんて!
ウクライナに対する思いの強さによって、彼らは必死の練習を重ねられ、こんなに立派な演奏をされることになったんだ
と思う。
全ての演奏者の方々とこのコンサートに携わられた全ての方々に、心から感謝しつつ拍手を送った。
最後に、ありきたりだけど、一刻も早くこの戦争が終わりますように!
2つのコンサートの間に撮った、ベランダの花など。
ベランダに出してから初めて花を咲かせたハイビスカス(15日)
同じ日に咲いた菊の花
久しぶりに夜ベランダに出て見た月(19日)
21日、3つめのハイビスカスと菊 (変わり映えしなくてゴメンナサイ)
ベランダのハイビスカス!頑張って咲いていますね。元気をもらいます。