調査員の「目」

 日常の何気ない雑感とつれづれ日記。

朝青龍はなぜ強いのか?~日本人のためのモンゴル学~

2008-02-10 | 書評系
 書名を見て軽い気持ちで買った本。

「朝青龍はなぜ強いのか?~日本人のためのモンゴル学~/宮脇淳子著/WAC」930円(税込)
著者:宮脇淳子氏 1952年和歌山県生まれ、京都大学文学部卒業、大阪大学大学院博士課程修了。現在、東京外国語大学・国士舘大学非常勤講師。著書に『モンゴルの歴史(刀水書房)』『世界史のなかの満州帝国(PHP新書)』『最後の遊牧帝国(講談社選書メチエ)』など。
 まえがき
第1章 モンゴル力士は、なぜ強いのか?
第2章 モンゴル女性秘話
第3章 モンゴル帝国を知っていますか?
第4章 日本にとってモンゴルは大切な国(233ページ)

結論から言うとサブタイトルの「日本人のためのモンゴル学」が主題で、もっと言うとモンゴルを比較対象とした日本人論といった方が適当かもしれない。

 第2章、第3章でモンゴルの歴史を概説しながら、第4章でモンゴルの遊牧文化の特徴と日本の農耕文化の特徴の違いを①人と同じ事をするのではなく、人とは常に違うことをしようと考える②長幼の序ではなく実力主義③長子相続制ではなく、末子相続制④和を以って貴しとなすのではなく、独立心が旺盛で適切な判断力を強く求められる、という指摘、続いて「日本には年下でも自分より力量がある・優れた資質を持っていることを認めたくない文化をもっているのではないか」「みんなが違っているということに不寛容であるのではないか」「横綱の品格を問うマスコミに品格はあるのか」というような論旨を展開している。

 朝青龍や白鵬は確かに強いと思うが、彼らの強さがモンゴルの遊牧文化に根ざした歴史的な習慣や考え方に起因を求めるのも確かに一理あるものの、逆に日本人力士が相対的に弱いだけのような気がしないでもない。というのも、もしモンゴルの遊牧文化やモンゴル相撲の歴史がモンゴル力士の強さの遠因になっているとしたら、他のモンゴル力士も同様に横綱並に全員強くないと説明がつかない。
 
 特に日本人が協調性を大事にし、先輩・後輩の縦社会の序列も尊重するから日本人力士が弱いという訳でもないのではないか。体は小さいながらも逞しい筋肉で大きい力士を投げ飛ばした千代の富士や全盛期の貴乃花なんかも相当強いのではないか。

 しかし、モンゴルを通した日本人論には今さらながら改めて極端な協調主義・見えない同調圧力や嫉妬・妬みの強い日本社会の負の側面を浮き彫りにしており、この国の課題を認識させてくれるのにはタイムリーな本であろう。

 タイトルにしてやられたというべきだろう。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿