靴下にはそっとオレンジを忍ばせて

南米出身の夫とアラスカで二男三女を育てる日々、書き留めておきたいこと。

胸の奥に刻まれたシーン

2012-01-06 00:12:30 | 夫婦ノート
今まで様々な結婚式に出席したけれど、その中で強烈に記憶に刻まれたシーンがある。

ユダヤの結婚式でのこと。新婦と新郎とラビをちょうど覆うほどのキャノピー(chuppa)の下で、新郎が新婦の右人差し指に指輪をはめ、祈りの言葉。その後新郎が右足で白い布をかぶせたガラスのコップを踏み潰す。パリンという音が響き渡ると、集まっていた人々が口々に「Mazel Tov(Good luck)!」と叫び踊り始める。

2人が誓いを交わす結婚式の最高潮の場で新郎が足でガラスを踏み砕く、その光景が目に焼きついた。そしてこの行為の意味について調べていくことでますますこのシーンが心に刻まれていった。

このガラスを踏み砕く行為は、「世界は完璧でないと思い出すため」と言われている。二人が結ばれ全てが完璧に見える人生の最高の場でガラスを「壊す」ことにより「まだまだ完璧でない」と思い出す。

完璧でないからこそ二人で力を合わせ創っていく必要がある。結婚は「始まり」であり完璧さの頂点にあるわけではない。そして相対する二つの要素が組み合わさりあたかも世界の完璧さが象徴される瞬間に、世界にはまだ悲しみや苦しみが溢れ完璧になったわけではないと突きつける。

私にとってパートナーとの暮らしの中で、日々の自身の暮らしの中で、あの右足で踏み割るシーンがパリンと響き渡る音が、その後の歓喜に溢れる歌や踊りと共に、深いところで力となっている。


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2 コメント

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Unknown (活子ママ)
2012-01-06 09:14:39
世界は一つですけれども、国によって色々の結婚式のかたちがあるのですね。私は壊れたこの世界を再生していく・・・先ずは家庭からという意味にも感じられました、また新たな視点で見れるようになるためのメッセージのようにも感じられました、有難う御座いました。
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活子ママさんへ、コメントありがとうございます! (マチカ)
2012-01-08 02:21:50
本当ですね、国や文化によって様々なかたちがあります。私自身はタイ式仏前結婚だったのですが(とりわけ仏教徒ということでもないのですが知り合いのお坊さんが親切に手伝ってくださいました)、こちらでメインのキリスト教会式や、ネイティブアラスカンの教会での結婚式のあとのお祝い、新婦が屋根に上ってお菓子やみやげ物などを投げるという儀礼にも参加したことがあります。

「壊れたこの世界を再生していく・・・先ずは家庭から」、なるほどです。私自身、とてもすっと入り込めるイメージです。儀礼には幾層もの解釈があり、単に一つだけの意味で説明されるものではなく。家族をとても大切にするユダヤ教、活子ママさんが思われるようなこの儀礼行為の意味も、ラビの中には解釈の一つとして取り上げる方がいるのじゃないかと思います。

「また新たな視点で見られるようになるためのメッセージ」、なるほどです。私にもパリンと壊すことでゼロ・ニュートラルな位置に立つ、というようなイメージがあります。そこからまた新たな視点が生まれるのかもしれません。

新郎新婦に「喜び(joy)の中庸」を思い出させるため、という解釈もあるそうです。究極のバランスにある中立地点へ立つ、そこからまた始まるということなのかもしれません。

あの内に刻まれたパリンと割れるイメージ、それは「中庸」ということでもあるのかもしれません。

活子ママさんがイメージされたこと、こうしてシェアして下さってありがとうございます。また少し世界が広がったような気持ちです。

感謝を込めて。
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