靴下にはそっとオレンジを忍ばせて

南米出身の夫とアラスカで二男三女を育てる日々、書き留めておきたいこと。

過越しの祭、忘れないということ。

2011-04-19 00:00:18 | 思うに
毎年この時期、ユダヤ教徒は「過越しの祭(Passover)」を祝う。現在世界中で用いられているグレゴリオ暦でないユダヤ暦に基づくので、毎年日にちは変わるけれど、今年は今日4月18日が7日間(ところによっては8日間)の祭の始まり。日の入り後に儀礼的な宴(Passover Seder)が行われる。ジーザスの「最後の晩餐」もこの宴だったといわれる。ユダヤ教徒にとって三大祭りのひとつ。

8年ほど前、当時交流のあったオーソドックスのラビ(rabbi)の家での宴に参加したことがある。この時期になるとそのときのことを思い出す。

「過越しの祭」は、「出エジプト」を思い出し、次世代に当時の出来事を詳しく伝えることを目的としている。エジプトで奴隷だったユダヤ人がモーセに率いられエジプトを脱出、モーセの杖に紅海は割れ、追っ手のエジプト軍は波にのまれたという神話。

この「出エジプト」の出来事を思い出すため、宴では象徴的な食べ物が用意される。

・ホースラディッシュやローマンレタスなどの苦い野菜:奴隷時の苦さ
・木の実を砕きすったりんごやシナモンで甘く和えたもの: 奴隷として建てた家屋に用いたモルタル
・苦い野菜以外のパセリ・セロリ・ポテトなどを塩水につけたもの:奴隷時の痛み

また8日間イースト菌で発酵させたものは食べない。急いでエジプトを出たため発酵させる時間がなかったということを思い出すため。発酵させない平たいクラッカーのようなマッツァ(matzo)を食べる。このマッツァを隠して子供たちが見つける、というゲームもされる。

その他にも細部にわたって様々な決まりや象徴的な物や行為にあふれている。

紀元前に起こったとされる神話の話を、毎年繰り返し次世代へ伝えていく。どこにいたって伝えていけるフォーマットがこれほど明確に揃っているということに感銘を受けたのを覚えている。

奴隷時の辛さ、その状況から救われたという思い、先祖に起こったとされる出来事・思いを2千年以上も毎年繰り返し繰り返し伝え忘れない。書かれた過去を共有するユダヤ人の地盤の強さ。

「ユダヤ」ということを越え、学ぶべきことが多くあるなあ、と感じている。