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悪性の膵臓癌は細胞死メカニズムで生き残る

2016-04-24 06:06:40 | 
Cell death mechanism may, paradoxically, enable aggressive pancreatic cells to live on

New findings could lead to anti-cancer drug developments that reverse immunosuppressive environments
April 22, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160422141216.htm


(共焦点顕微鏡によるヒトPDAC腫瘍の画像
PDACはCXCL1(赤色)、CK19(緑色、PDACのマーカー)を両方発現する

Credit: NYU Langone Medical Center)

膵管腺癌(PDAC)は最も悪性の膵臓癌であり、診断と治療が最も困難な悪性腫瘍の一つとしばしば言われる
Nature誌で最近発表された注目に値する研究major studyによると、この癌は腫瘍の周囲で『調整された細胞死/orchestrated cell death』という特定の種類の死に方をする細胞が存在する時に成長するという

今回の研究結果は『注意深く調整された細胞死メカニズム』に焦点を合わせる
このメカニズムは欠陥のある細胞やウイルスに感染した細胞を殺すためのものであり、しばしば重要な細胞の防御メカニズムである

ニューヨーク大学ランゴンメディカルセンター/NYU Langone Medical Centerとローラ・アイザック・パールマターがんセンター/Laura and Isaac Perlmutter Cancer Centerの研究者は膵管腺癌/pancreatic ductal adenocarcinoma (PDAC) のマウスモデルを研究することにより、ネクロプトーシスnecroptosisという調整された細胞死が実際にはCXCL1という小さなタンパク質の産生を誘発し、PDACの腫瘍細胞の増殖を刺激することを明らかにした
CXCL1は骨髄由来免疫抑制細胞/myeloid-derived suppressor cell(MDSC)という特別な免疫抑制性の細胞を呼び寄せることが知られ、癌細胞を認識して破壊する免疫系の能力をMDSCは低下させる
さらに、研究者は同様の出来事がヒトのPDACでも起きているようだと言う

※プレスリリース記事ではCXCL1が呼び寄せるのはTAMと書かれているが、論文ではCXCL1が呼び寄せるのはMDSC(Reference 15)とあるので修正した


「我々の発見はネクロプトーシスを介する癌細胞の死が実際には腫瘍の増殖を促進しうることを初めて示す
このプロセスは癌に対する免疫応答を抑制して腫瘍を成長させる」
今回の研究で首席研究者senior investigatorのGeorge Miller, MDは言う
彼はパールマターがんセンターの外科・細胞生物学科の準教授associate professorであり、がん免疫プログラムでは共リーダーである

「それと等しく重要なのは、これらの発見が他のタイプの腫瘍にも関連があるかもしれないということだ」


研究チームは最初の発見に続いて、ネクロプトーシスによるCXCL1だけでは腫瘍細胞の周囲に作られる腫瘍に保護的な環境の説明として十分ではないことも明らかにした
さらなる研究の結果、死んだ腫瘍の細胞はSAP130という別のタンパク質も放出し、腫瘍の環境内に存在する炎症性の免疫細胞上でMincleという受容体に結合することが判明した
Mincleの活性化はマウスで腫瘍の形成を加速した

研究者によると、今回の研究で重要なのはネクロプトーシスとMincleシグナル伝達が新たな抗癌剤の標的となりうることだという
これらの経路を阻害することでMDSCや腫瘍関連マクロファージによって作られた免疫抑制的な環境を無効化し、他のタイプの免疫細胞である癌を殺すT細胞に力を与え、腫瘍を攻撃させられる可能性がある

「我々の研究は、癌が成長する実際の状況actual contextの中で癌を調べることの重要性を実証する」
研究の共筆頭著者であるGregor Werba, MDは言う

「我々の最初の研究では、組織培養のPDAC細胞におけるネクロプトーシスを阻害すると、その増殖能は増大した
しかしながら、同じプロセスをマウスで研究し始めると全く正反対の影響が見られたことに我々はとても驚いた
これは主に腫瘍の周囲に存在する細胞による免疫応答のためだった」


Miller博士たちのチームはこれらの手がかりを追跡調査follow up on these leadsするために医学科の助教授であるDierdre Cohen, MDらと協力して、ネクロプトーシスだけを阻害し潜在的な抗癌作用を持つ化合物を探して免疫療法との組み合わせを調査する予定である


http://dx.doi.org/10.1038/nature17403
The necrosome promotes pancreatic oncogenesis via CXCL1 and Mincle-induced immune suppression.
ネクロソームはCXCL1ならびにMincleによる免疫抑制を介して膵腫瘍形成を促進する


Abstract
新生物の膵上皮細胞はカスパーゼ8依存的なアポトーシス細胞死によって死に、化学療法は腫瘍のアポトーシスを促進すると考えられている(1
反対に、癌細胞はしばしばアポトーシスを中断させて生き残る(2, 3

別のタイプのプログラム細胞死はネクロプトーシスnecroptosis (プログラムされたネクローシス/programmed necrosis) だが、その膵管腺癌(PDAC)における役割は不明である

PDACでネクロプトーシスを誘導する物質potential inducerは多数存在し、例えばTNFR1・CD95・TRAILのような受容体への結合、TLR受容体や活性酸素種(ROS)、化学療法薬などがある(4, 5

今回我々が報告するのはネクロソームの主要な要素のRIP1RIP3(receptor-interacting protein)である
それらはPDACで強く発現し、さらに化学療法薬のゲムシタビンによって上方調節される

in vitroではネクロソームを阻害すると、癌細胞の増殖を促進し悪性の発癌性oncogenicの表現型を誘発した

それに反して、in vivoでのマウスからのRIP3の削除またはRIP1の阻害は、発癌性の進行から保護し、強い免疫原性immunogenicの骨髄細胞の発達ならびにT細胞の浸潤と関連した

完全なRIP1/RIP3シグナル伝達と関連する免疫抑制性の腫瘍微小環境は、部分的にはネクロプトーシスによるケモカイン誘引物質CXCL1発現に依存し、CXCL1の阻害はPDACから保護した

さらに、PDACでは細胞質のSAP130 (a subunit of the histone deacetylase complex) がRIP1/RIP3に依存的なやり方で発現し、
その同系の受容体cognate receptorであるMincleが腫瘍に浸潤する骨髄細胞で上方調節されていた

SAP130のMincleへの結合は発癌oncogenesisを促進する一方で
Mincleの削除は発癌から保護し、
RIP3削除によって誘導される『腫瘍微小環境が免疫原性へと再プログラムされる表現型』をコピーした

抑制性マクロファージはPDACにおける腫瘍形成tumorigenesisを促進するが、
それらマクロファージはRIP3またはMincleが削除されると免疫抑制的な影響を失うことが、
細胞からの(遺伝子やタンパク質の)枯渇で示唆された


それらと一貫して、
完全なRIP3またはMincleシグナル伝達が存在するマウスでのT細胞はPDAC進行に対して保護的ではないが、
RIP3またはMincleが存在しない状態では抗腫瘍免疫の必須メディエーターへと再プログラムされる

我々の研究は、マクロファージによる適応免疫の抑制を促進することによりPDAC進行を可能にする『ネクロプトーシスによるCXCL1ならびにMincleシグナル伝達』の並列ネットワークparallel networksを記述する

※CXCL1以下とMincle以下が並列する


http://www.nature.com/nature/journal/v532/n7598/fig_tab/nature17403_SF10.html
Extended Data Figure 10:
膵管腺癌(PDA)におけるRIP3ならびにMincleシグナル伝達はマクロファージによるT細胞免疫の抑制に必須である




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関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/9449
RIPK3はネクローシスに非依存的にサイトカインの産生および組織の修復を促進する