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癌細胞がマトリックスから離れて生き残る方法

2016-04-08 06:06:05 | 
Scientists find novel metabolic twist that drives cancer survival

April 6, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160406165419.htm


(Lei Jiang博士 (左) と Ralph DeBerardinis博士)


テキサス大学(UT)サウスウエスタンの小児医療センター研究所/Children's Medical Center Research Institute(CRI)の科学者たちは、通常の細胞にとっては致命的な状態を癌細胞が生き残るのを助ける新たな代謝経路を明らかにした

「もし腫瘍だけに存在する特異的な代謝経路を標的にできれば、癌を治療する効果的な方法につながる可能性があると長い間考えられてきた」
首席著者senior authorのRalph DeBerardinis博士は言う
彼はCRIと小児学部の準教授Associate Professorであり、CRIの遺伝代謝疾患プログラムのディレクターで、UTサウスウエスタンでは小児遺伝学・代謝学部のチーフでもある

「この研究では二つのまったく異なる代謝プロセスに関係があることを明らかにした
それらは癌の進行に関するストレスに癌細胞が適応するために特に必要である」


Nature誌のオンライン版で発表された今回の研究で、癌細胞は二つのよく知られた代謝経路の『代替版/alternate version』を使うことが明らかにされた
その二つの経路はペントースリン酸経路/pentose phosphate pathway(PPP)とクレブス回路/Krebs cycleで、それらは有害な酸化ストレスを生じる活性酸素種(ROS)から癌細胞を保護する

この研究はDeBerardinis博士のラボによる以前の研究、つまりクレブス回路が特定の状況では逆向きに進行して癌細胞を育てるnourishという論文を基にしている


ほとんどの正常な細胞と腫瘍細胞は、マトリックスという栄養が豊富な組織に付着attachすることで成長するとDeBerardinis博士は言う
「それらの細胞は成長を促進するシグナルを受け取るために、そして代謝を調節するためにマトリックスとの付着attachmentに依存し、細胞の成長と増殖、生存を支える」

マトリックスから分離detachmentすると突然ROSが増加し、それは通常の細胞にとっては致命的であるという
しかし、どうやら癌細胞はそれを回避する方法workaroundを持っているようである

マトリックスから分離した健康な細胞が破壊されるという性質は、ハーバード・メディカルスクールの生物学者であるJoan Brugge博士が2009年にNature誌に報告した画期的な研究によるものだ
興味深いことに、その同じ研究で癌を引き起こす潜在能力を持つ遺伝子である癌遺伝子oncogeneを正常な細胞に挿入すると、細胞は癌細胞のようにふるまうようになり、そして分離detachmentを生き残ることが発見された

本文にはこう書かれている
「形質転換していない胸部上皮細胞ではマトリックスからの分離はペントースリン酸経路(PPP)の活性低下につながりROSを促進するが、癌遺伝子の導入はPPPを維持し、マトリックスから分離している間の生存能力を保つ(2


DeBerardinis博士は言う
「CRIのディレクターであるSean Morrison博士のラボは2015年、Nature誌に別の研究を報告した
それによると、原発腫瘍から分離detachして体内の別の箇所に転移することが可能なメラノーマ細胞は、ROSのレベルを危険なほど高くならないように保つ能力を持つという」

この二つの研究結果が同じパズルのピースであるという前提premiseを元に研究をしていたDeBerardinis博士は、パズルの絵の決定的に重要crucialな部分が失われているように思われたと言う

何十年もの間、NADPHの主な供給源はPPPという経路であることが知られていた
NADPHはROSを捕捉scavengeするための還元当量reducing equivalent(電子のこと)を供給する
しかしながら、PPPはNADPHを細胞質で生成するが、ROSが発生するのは主にミトコンドリアである

「ROSを火事だとすれば、NADPHは水のようなものである
この水を癌細胞は炎にかけるdouseために使う」
DeBerardinis博士は言う

しかし、PPPから作られるNADPHがどのようにしてROSによるストレスに対処するのを助けるのか?
細胞内の完全に異なる場所で作られているのに?


Natureで発表された今回の研究で、癌細胞は『便乗piggybacking』システムを使うことでPPPにより作られる還元当量をミトコンドリアへと運ぶことが実証された

この展開movementには細胞質における通常とは違う反応を伴い、NAPDHから還元当量をクエン酸という分子へ移行transferする
これは『クレブス回路の逆反応reversed reaction』と同様であると博士は言う
(通常のクレブス回路/クエン酸回路ではイソクエン酸はNADPHと二酸化炭素を生じてα-ケトグルタル酸になるが、ここではその逆反応が起きる)

変換されたクエン酸はミトコンドリアに入ることでもう一つの経路を刺激し、結果として解放される還元当量からNADPHが生成されて酸化型グルタチオンを還元できるようになる
そこはまさにROSが作られる場所であり、癌細胞はマトリックスに付着することなく生き残って成長することが可能になる


「PPPとクレブス回路、そのどちらも代謝的な利益を癌細胞にもたらすことを我々は知っていた
しかし、それらが通常とは異なるやり方でつながっているとは思いもよらなかった」

印象的なことに、通常の細胞はこのメカニズムを使ってNADPHを輸送することはできず、高レベルのROSの結果として死んでしまった」

DeBerardinis博士はこの研究結果が培養細胞モデルを基にしたものであり、この経路の生体living organismsにおける役割をテストするためにさらなる研究が必要になるだろうと強調した

「我々はこの経路が転移に必要かどうかをテストすることに特にわくわくしている
なぜなら癌細胞は転移するために血液中を循環する際、マトリックスから分離した状態matrix-detached stateで生き残る必要があるからだ」


http://dx.doi.org/10.1038/nature17393
Reductive carboxylation supports redox homeostasis during anchorage-independent growth.
還元的カルボキシル化は足場に依存しない成長中の酸化還元恒常性を支える

細胞は細胞外マトリックス/extracellular matrix(ECM)への付着を通じて成長と生存の刺激を受け取る(1

悪性細胞のほとんどに見られる性質(2である『足場に依存しない成長/anchorage-independent growth』をするためには、癌細胞はECMによって誘発されるシグナルへの依存に打ち勝つ必要がある

ECMからの分離detachmentは活性酸素種(ROS)の産生促進と関連し、その理由はグルコース代謝が変化するためである(2


今回我々は、酸化還元の恒常性ならびに足場非依存性anchorage independenceへ順応する間の成長を支えるための、非古典的な経路を明らかにした

単層培養monolayer cultureからの分離detachmentと
足場に依存しない腫瘍スフィロイドspheroidsの成長growthは、
グルコースとグルタミン両方の代謝の変化を伴うことを我々は観察した

特に、スフィロイドではグルコースとグルタミン両方の酸化が抑制される一方で、
グルタミンからクエン酸への還元的形成reductive formationが促進された

還元的なグルタミン代謝は、細胞質のイソクエン酸脱水素酵素/isocitrate dehydrogenase-1(IDH1)に強く依存する
なぜならIDH1ヌル・ホモ接合体またはIDH1阻害剤を投与した細胞ではその代謝活動が抑制されるためである

※IDH: イソクエン酸 + NAD+ ←→ α-ケトグルタル酸 + CO2 + NADH2

低酸素は還元的代謝を誘導することが知られているが、この代謝活動は低酸素が存在しなくても生じた

そうではなくむしろ、IDH1はスフィロイドにおけるミトコンドリアのROSを軽減mitigateし、IDH1の抑制はスフィロイド成長を低下させた
これはミトコンドリアROSを必須とするメカニズムによるものだった

同位体isotopeによる追跡から、スフィロイドでは細胞質で還元的に産生されたイソクエン酸/クエン酸がミトコンドリアに入り、IDH2による酸化を含む酸化的代謝oxidative metabolismに参加することが明らかになった

これによりミトコンドリア内でNADPHが生成されて細胞がミトコンドリアROSを軽減できるようになり、スフィロイドの成長は最大化する

単層での成長monolayer growthにはIDH1とIDH2のどちらも必要ではなかったが、
スフィロイドではどちらか一つを欠損させるとミトコンドリアでのROSが増大してスフィロイドの大きさが抑制された
ミトコンドリアのクエン酸輸送タンパク質/citrate transporter protein(CTP)を削除しても同様の結果になった


合わせて考えると、このデータは足場への非依存性anchorage independenceへの適応にはクエン酸代謝における根本的な変化が必要であることを示す
これはIDH1依存的な還元的カルボキシル化(CO2を付加して-COOH基をつくること)によって開始され、
その結果としてミトコンドリアROSが抑制される


<コメント>
『逆向きクレブス回路』ではミトコンドリア内でIDH2によりα-ケトグルタル酸からイソクエン酸へと進むが、
今回の研究では細胞質でもIDH1により同じことが生じ、それを博士が似ていると言っているようだ

全体の流れとしては、マトリックスから分離した『足場非依存性/anchorage independence』の状態では、次のようになるという


 [ミトコンドリア] グルタミンからα-KGを生成→細胞質へ輸送

 [細胞質] グルコースからPPPを経て生成したNADPHを使って、IDH1がα-KGをイソクエン酸に還元→イソクエン酸/クエン酸をミトコンドリアに輸送

 [ミトコンドリア] IDH2がイソクエン酸をα-KGに酸化してNADPHを生成→酸化型グルタチオンを還元→ROS↓


気になったのが、クエン酸はcitrate transporter protein(CTP)によってミトコンドリアに輸送されるのかということ

本文を見ると、「SLC25A1によってコードされるCTPはミトコンドリアから細胞質へクエン酸を輸送することにより脂質生成に関与するが、細胞質からミトコンドリアへのクエン酸輸送も報告されている(14」とある



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