Breast cancer progression: the devil is in the details
April 27, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160427103634.htm
(Detail of breast cancer cells in 3-D culture, collectively invading into the surrounding extracellular matrix.
Credit: Diana Dragoi / Helmholtz Zentrum München)
ヘルムホルツ・ミュンヘンセンター(Helmholtz Zentrum München/Helmholtz center Munich)の研究者は、浸潤性を標的とする特定の阻害剤にさらされた乳癌の細胞がどのようにして『代わりの作用機序/alternative mode-of-action』へと切り替えてさらに悪性になるのかを説明する
Oncotarget誌で発表されたこの研究結果は、TGF-β経路に対する将来の治療アプローチを損なうものになるかもしれない
乳癌が進行するにつれ、腫瘍の細胞は乳腺を形作る組織の区画compartmentを破って進み始め、周囲の組織へと活発に浸潤invadeして拡散するようになる
Christina Scheel博士を中心とする研究チームは、I型TGF-β受容体/TGF-beta Receptor Type I (TGFBR1) を標的とする小分子阻害剤を使ってこのプロセスを阻害しようと試みた
TGFBR1は乳癌細胞に浸潤する能力を与えるシグナル伝達カスケードを中継する重要なタンパク質である
事実、そうすることで幹細胞研究所/Institute of Stem Cell Research/Institut für Stammzellforschung (ISF)の科学者はこのプロセスに関与する遺伝子のマスター調節因子master regulatorが『癌細胞の浸潤する振る舞いを引き起こす細胞プログラム』を開始できないように妨げることが可能になった
このTwist1というマスター調節因子は乳癌の進行に関与することが長く知られているが、現在のところTwist1自体を治療標的とすることは容易ではないnot amenable
したがって、研究者はTwist1が浸潤性を仲介するために依存する標的化可能な他のシグナル伝達経路を阻害することを目標にした
※「TGFβRI受容体→Twist1転写因子→ZEB1転写」という経路
乳癌細胞の適応性を明らかにする驚くべき結果
Surprising results reveal the adaptiveness of breast cancer cells
「最初、in vitroの伝統的な組織培養テクニックを使った結果は成功を示すものだった
同時にTGFBR1を阻害することによりこれまでに記述されてきたTwist1活性化による影響の多くは妨害された」
論文の筆頭著者first authorであり幹細胞研究所(ISF)のDiana Dragoi, PhD studentは言う
しかしながら、乳癌細胞をより生理的な状況に近い3次元の培養環境に移し替えたところ、驚いたことにTwist1はTGFBR1シグナル伝達が阻害されているにもかかわらず乳癌細胞を浸潤性にすることが可能になった
乳癌細胞は単一の細胞ではなく『より糸strand』のように結合cohesiveすることにより、3次元環境を浸潤して転移するもう一つの状態modeへと単純に切り替わった
加えてこれらの細胞は増殖の速度が著しく高く、離れた箇所にまき散らされたdisseminating後で二つ目の腫瘍を開始することが上手くできるようになっているequippedことが示唆される
この転移というプロセスは乳癌患者の主な死因である
転移では全身に播種disseminationが生じ、脳や骨髄、肝臓などの生命に必要な臓器で乳癌細胞が増殖して、やがて臓器は破壊される
「まとめると、TGFBR1を阻害してもマスター調節因子のTwist1が乳癌細胞を悪性にする能力を単に阻止するのではなく、さらに悪性の乳癌細胞を生み出すようにTwist1の作用を向き直させるだけであることを我々の研究は示唆する」
共著者co-authorであるAnja Krattenmacherは言う
「これらのデータは、in vivoの状態にできるだけ近いapproximateことを目指して多くの様々なパラメータをテストする入念diligentな前臨床試験の重要性を強調する
これは転移のような複雑で多段階のプロセスに干渉することを目指す時に特に重要である」
Scheel博士はそのように結論づけた
乳癌進行の複雑さにおいて、『悪魔は細部に宿る』のである
In the complexity of breast cancer progression, the devil is in the detail.
http://dx.doi.org/10.18632/oncotarget.8878
Twist1 induces distinct cell states depending on TGFBR1-activation.
Twist1はTGFBR1活性化に依存して異なる細胞状態を引き起こす
Abstract
塩基性 helix-loop-helix (bHLH) 転写因子のTwist1は、上皮間葉転換/Epithelial-Mesenchymal Transition (EMT) のマスター調節因子である
EMTは様々な発達ステージや転移性の播種に関与する細胞プログラムである
今回我々はTwist1が下流のエフェクターであるZEB1のエンハンサー領域に結合するためにはTGF-beta type-I receptor (TGFBR1) の活性化が必要であることを示す
このエンハンサーへの結合はZEB1の転写を誘発してEMTを引き起こす
TGFBR1リン酸化が阻害されると、Twist1は異なる細胞状態を作り出す
その状態の特徴は、集団的浸潤collective invasion、同時増殖simultaneous proliferation、内皮マーカーの発現expression of endothelial markersである
対照的に、TGFBR1の活性化はEMTを通じてTwist1を安定した間葉系分化転換mesenchymal transdifferentiation
へと方向づけ、それにより単一細胞による浸潤性single-cell invasionは示すが増殖能を失った細胞を作り出す
結論
Twist1によって誘発されるEMTをTGFβシグナル伝達の阻害によって阻害しても、浸潤性の獲得を全体的には阻害せず、
『単一細胞で浸潤するが増殖しないsingle-cell/non-proliferative』という状態から『集団的に浸潤して(同時に)増殖もするcollective/proliferative』という状態へと切り替えさせる
まとめると、これらのデータは一時的transientなTwist1活性化はシグナル伝達の背景contextに依存して異なる細胞状態を引き起こすことを明らかにするものであり、
浸潤性を標的とするための治療戦略としてTGFβの阻害剤を使用することに対して慎重になるべきである
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https://www.sciencedaily.com/releases/2012/09/120904121436.htm
卵巣癌細胞はTGF-β2により周囲の組織を乗っ取り腫瘍増殖を促進する
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/a634de2c32256ddde7e64a3859950fcb
周囲のストロマ細胞のHSF1の活性化は、TGF-βとSDF1を介して悪性化を進行させる
関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150408160645.htm
Id4の発現は膠芽腫の患者の生存と正の相関を示し、Id4の発現はMMP2の発現とは逆相関した
Id4─┤Twist1→MMP2→膠芽腫の浸潤
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/c89e847d6ea50b57bda32e5adf76a37e
http://dx.doi.org/10.1038/nature16064
Epithelial-to-mesenchymal transition is dispensable for metastasis but induces chemoresistance in pancreatic cancer.
EMTは膵臓癌の転移に必須ではないが、化学療法への抵抗性は誘導する
EMTの原因とされる2つの鍵となる転写因子TwistとSnailを欠損させたPDACマウスモデルを作成したところ、
そのようなEMTの抑制によって、PDACでの浸潤の出現、全身への転移は変化しなかった
EMTの抑制は癌細胞の増殖の増大につながり、腫瘍のヌクレオシドトランスポーターの発現が促進される
これはゲムシタビン治療への感受性の増大につながり、マウスの全生存率が上昇する
関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150109093559.htm
研究チームは、皮膚の腫瘍の発癌、癌幹細胞の機能、腫瘍の進行を制御するTwist1の様々な機能を調節するメカニズムを明らかにした
正常な皮膚でTwist1は発現していないが、Twist1を消去すると皮膚癌の形成は抑制される
Twist1が低いと良性腫瘍になり、逆にその発現の高さは腫瘍の進行に必要である
Twist1は腫瘍の維持と癌幹細胞の機能の調節に必須である
Twist1の機能は様々な分子メカニズムによって調節され、癌幹細胞の機能調節におけるp53から独立した役割を同定した
http://dx.doi.org/10.1016/j.stem.2014.12.002
Different Levels of Twist1 Regulate Skin Tumor Initiation, Stemness, and Progression.
April 27, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160427103634.htm
(Detail of breast cancer cells in 3-D culture, collectively invading into the surrounding extracellular matrix.
Credit: Diana Dragoi / Helmholtz Zentrum München)
ヘルムホルツ・ミュンヘンセンター(Helmholtz Zentrum München/Helmholtz center Munich)の研究者は、浸潤性を標的とする特定の阻害剤にさらされた乳癌の細胞がどのようにして『代わりの作用機序/alternative mode-of-action』へと切り替えてさらに悪性になるのかを説明する
Oncotarget誌で発表されたこの研究結果は、TGF-β経路に対する将来の治療アプローチを損なうものになるかもしれない
乳癌が進行するにつれ、腫瘍の細胞は乳腺を形作る組織の区画compartmentを破って進み始め、周囲の組織へと活発に浸潤invadeして拡散するようになる
Christina Scheel博士を中心とする研究チームは、I型TGF-β受容体/TGF-beta Receptor Type I (TGFBR1) を標的とする小分子阻害剤を使ってこのプロセスを阻害しようと試みた
TGFBR1は乳癌細胞に浸潤する能力を与えるシグナル伝達カスケードを中継する重要なタンパク質である
事実、そうすることで幹細胞研究所/Institute of Stem Cell Research/Institut für Stammzellforschung (ISF)の科学者はこのプロセスに関与する遺伝子のマスター調節因子master regulatorが『癌細胞の浸潤する振る舞いを引き起こす細胞プログラム』を開始できないように妨げることが可能になった
このTwist1というマスター調節因子は乳癌の進行に関与することが長く知られているが、現在のところTwist1自体を治療標的とすることは容易ではないnot amenable
したがって、研究者はTwist1が浸潤性を仲介するために依存する標的化可能な他のシグナル伝達経路を阻害することを目標にした
※「TGFβRI受容体→Twist1転写因子→ZEB1転写」という経路
乳癌細胞の適応性を明らかにする驚くべき結果
Surprising results reveal the adaptiveness of breast cancer cells
「最初、in vitroの伝統的な組織培養テクニックを使った結果は成功を示すものだった
同時にTGFBR1を阻害することによりこれまでに記述されてきたTwist1活性化による影響の多くは妨害された」
論文の筆頭著者first authorであり幹細胞研究所(ISF)のDiana Dragoi, PhD studentは言う
しかしながら、乳癌細胞をより生理的な状況に近い3次元の培養環境に移し替えたところ、驚いたことにTwist1はTGFBR1シグナル伝達が阻害されているにもかかわらず乳癌細胞を浸潤性にすることが可能になった
乳癌細胞は単一の細胞ではなく『より糸strand』のように結合cohesiveすることにより、3次元環境を浸潤して転移するもう一つの状態modeへと単純に切り替わった
加えてこれらの細胞は増殖の速度が著しく高く、離れた箇所にまき散らされたdisseminating後で二つ目の腫瘍を開始することが上手くできるようになっているequippedことが示唆される
この転移というプロセスは乳癌患者の主な死因である
転移では全身に播種disseminationが生じ、脳や骨髄、肝臓などの生命に必要な臓器で乳癌細胞が増殖して、やがて臓器は破壊される
「まとめると、TGFBR1を阻害してもマスター調節因子のTwist1が乳癌細胞を悪性にする能力を単に阻止するのではなく、さらに悪性の乳癌細胞を生み出すようにTwist1の作用を向き直させるだけであることを我々の研究は示唆する」
共著者co-authorであるAnja Krattenmacherは言う
「これらのデータは、in vivoの状態にできるだけ近いapproximateことを目指して多くの様々なパラメータをテストする入念diligentな前臨床試験の重要性を強調する
これは転移のような複雑で多段階のプロセスに干渉することを目指す時に特に重要である」
Scheel博士はそのように結論づけた
乳癌進行の複雑さにおいて、『悪魔は細部に宿る』のである
In the complexity of breast cancer progression, the devil is in the detail.
http://dx.doi.org/10.18632/oncotarget.8878
Twist1 induces distinct cell states depending on TGFBR1-activation.
Twist1はTGFBR1活性化に依存して異なる細胞状態を引き起こす
Abstract
塩基性 helix-loop-helix (bHLH) 転写因子のTwist1は、上皮間葉転換/Epithelial-Mesenchymal Transition (EMT) のマスター調節因子である
EMTは様々な発達ステージや転移性の播種に関与する細胞プログラムである
今回我々はTwist1が下流のエフェクターであるZEB1のエンハンサー領域に結合するためにはTGF-beta type-I receptor (TGFBR1) の活性化が必要であることを示す
このエンハンサーへの結合はZEB1の転写を誘発してEMTを引き起こす
TGFBR1リン酸化が阻害されると、Twist1は異なる細胞状態を作り出す
その状態の特徴は、集団的浸潤collective invasion、同時増殖simultaneous proliferation、内皮マーカーの発現expression of endothelial markersである
対照的に、TGFBR1の活性化はEMTを通じてTwist1を安定した間葉系分化転換mesenchymal transdifferentiation
へと方向づけ、それにより単一細胞による浸潤性single-cell invasionは示すが増殖能を失った細胞を作り出す
結論
Twist1によって誘発されるEMTをTGFβシグナル伝達の阻害によって阻害しても、浸潤性の獲得を全体的には阻害せず、
『単一細胞で浸潤するが増殖しないsingle-cell/non-proliferative』という状態から『集団的に浸潤して(同時に)増殖もするcollective/proliferative』という状態へと切り替えさせる
まとめると、これらのデータは一時的transientなTwist1活性化はシグナル伝達の背景contextに依存して異なる細胞状態を引き起こすことを明らかにするものであり、
浸潤性を標的とするための治療戦略としてTGFβの阻害剤を使用することに対して慎重になるべきである
関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2012/09/120904121436.htm
卵巣癌細胞はTGF-β2により周囲の組織を乗っ取り腫瘍増殖を促進する
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/a634de2c32256ddde7e64a3859950fcb
周囲のストロマ細胞のHSF1の活性化は、TGF-βとSDF1を介して悪性化を進行させる
関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150408160645.htm
Id4の発現は膠芽腫の患者の生存と正の相関を示し、Id4の発現はMMP2の発現とは逆相関した
Id4─┤Twist1→MMP2→膠芽腫の浸潤
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/c89e847d6ea50b57bda32e5adf76a37e
http://dx.doi.org/10.1038/nature16064
Epithelial-to-mesenchymal transition is dispensable for metastasis but induces chemoresistance in pancreatic cancer.
EMTは膵臓癌の転移に必須ではないが、化学療法への抵抗性は誘導する
EMTの原因とされる2つの鍵となる転写因子TwistとSnailを欠損させたPDACマウスモデルを作成したところ、
そのようなEMTの抑制によって、PDACでの浸潤の出現、全身への転移は変化しなかった
EMTの抑制は癌細胞の増殖の増大につながり、腫瘍のヌクレオシドトランスポーターの発現が促進される
これはゲムシタビン治療への感受性の増大につながり、マウスの全生存率が上昇する
関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150109093559.htm
研究チームは、皮膚の腫瘍の発癌、癌幹細胞の機能、腫瘍の進行を制御するTwist1の様々な機能を調節するメカニズムを明らかにした
正常な皮膚でTwist1は発現していないが、Twist1を消去すると皮膚癌の形成は抑制される
Twist1が低いと良性腫瘍になり、逆にその発現の高さは腫瘍の進行に必要である
Twist1は腫瘍の維持と癌幹細胞の機能の調節に必須である
Twist1の機能は様々な分子メカニズムによって調節され、癌幹細胞の機能調節におけるp53から独立した役割を同定した
http://dx.doi.org/10.1016/j.stem.2014.12.002
Different Levels of Twist1 Regulate Skin Tumor Initiation, Stemness, and Progression.