機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

2014年8月14日

2014-08-20 10:48:46 | 免疫

免疫細胞が肉体に敵対することを防止する遺伝子シグナル
Genetic signal prevents immune cells from turning against the body



病原体に直面するとき、免疫システムは『兵士』と『平和維持軍』から成り立つ多数の細胞を召喚する。

侵略が排除されると、平和維持細胞は兵士細胞に戦いを停止するように命じる。

この『停戦シグナル』が存在しなければ、兵士(キラーT細胞)は彼らの殺気立った攻撃を続け、肉体に敵対する。それは炎症と自己免疫不全、例えばアレルギー、喘息、関節リウマチ、多発性硬化症、1型糖尿病などを引き起こす。

今回、ソーク研究所の科学者は『キラーT細胞』に停止シグナルを送るかどうかを決定する『平和維持細胞』の重要なコントロール・メカニズムを発見した。



平和を維持する白血球、つまり制御性T細胞(Treg)のシグナル伝達のバランスは、正常な免疫応答にとって重要である。

例えば腫瘍の中には免疫の攻撃を妨害するため、自分のまわりに高密度のTregを配置して停戦シグナルを伝えさせるという極悪な(nefarious)ものがいる。

「Tregは免疫応答のサーベイランス・システムのようである」、Zhengは言う。



およそ10年の間、研究者はTregの平和維持能力の鍵はFoxp3と呼ばれる遺伝子であることを知っていた。しかし彼らはそれがどのようにして作用するかについて正確にはわからなかった。

また、ある種の状態下ではTregが狂暴になり、キラーT細胞に変形して包囲に参加することも知っていた。



Zhengの研究室による新しい論文ではFoxp3の特定の遺伝的な配列が、単独でTregの安定性の原因であると報告する。

研究者がCNS2という配列を取り除くとTregは不安定になり、Tregが本来制御するはずのキラーT細胞にしばしば変身した。それは動物モデルで自己免疫疾患に結びついた。

「Foxp3は、他の何者にもならないようにTregを保護している」、Zhengは言う。

「我々は、Tregの安定性を確定して免疫システムの均衡を保つFoxp3遺伝子の領域を発見した。」

この特異的な領域がFoxp3に存在しない場合、Tregはアイデンティティを失う可能性が非常に高くなり、炎症と感染に直面すると『離反』してキラーT細胞に変化する、とZhengは言う。

学術誌参照:
1.制御性T細胞アイデンティティの保護における、Foxp3シス(cis)エレメントの機能。

Cell、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140814123430.htm



<コメント>
TregのTregとしてのアイデンティティはcis、つまり同じDNA側のCNS2(conserved noncoding sequence 2; 進化的に保存されたCpGに富むイントロン非コード領域)のメチル化の状態によって維持されるという記事です。

Abstractによれば、FoxP3遺伝子の転写はIL-2とTCRシグナルによって促進され、IL-4やIL-6といった炎症シグナルで阻害されるようです。

IL-2受容体(IL2RA; CD25)の多型が自己免疫疾患につながるという研究もあります。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22461703

2014年8月14日

2014-08-20 09:27:27 | 腸内細菌

幼いマウスの抗生物質の曝露は、生涯にわたる代謝障害につながる
Early antibiotic exposure leads to lifelong metabolic disturbances in mice



通常、マウスのメスの成体は、3グラムの脂肪を持つ。

高脂肪食を与えられたマウスは、脂肪が5グラムだった。

それと比較して、高脂肪の食事に加えて抗生物質を投与されたマウスは、脂肪が10グラムも詰まっていた。それは体重の3分の1である。

抗生物質のペニシリンを投与されたマウスは太っていただけでなく、空腹時インスリンのレベルが高くなり、肝臓の再生と解毒に関する遺伝子の発現が変化した。

それはヒトの肥満患者で見られる代謝異常と一致する影響だった。

学術誌参照:
1.発達上の決定的な期間での腸微生物叢への変更は、永続的な代謝的結果につながる。

Cell、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140814123426.htm



<コメント>
MRSAが出現した1970年から1980年以降に肥満や糖尿病が急増しているのも、偶然ではないということなんでしょう。



2014年8月14日

2014-08-20 08:41:20 | 

白血病の理解における重大なブレークスルー
Leukemia: Scientists make major breakthrough in understanding disease



ロンドン大学クイーン・メアリー・カレッジ(QMUL)の科学者は、急性リンパ芽球タイプの小児白血病につながる遺伝子突然変異を発見した。

今回の研究はダウン症候群の小児たちで実施され(ダウン症候群は20倍から50倍小児白血病になりやすい)、白血病の異なるステージのDNA塩基配列を分析した。

その結果、研究者はRASとJAKという2つの重要な遺伝子の変異を発見した。この変異は正常な血球を癌細胞へと変える。

しかし、1つの変異は他の変異を排除するようである。これら2つの遺伝子は決して同時には変異しない。



ロンドン大学クイーン・メアリー・カレッジの細胞分子生物学の教授、ディーンNizeticは次のようにコメントする。

「我々が知る研究によれば、ダウン症候群の人々は老化が加速する徴候を示し、DNAの損傷の蓄積が早い。しかし逆に、彼らは成人になるとほとんどの一般的な癌から保護されるようである。

また、ダウン症候群の中には他の老化関連の疾患、例えば痴呆、アテローム性動脈硬化症、糖尿病から保護されているように見える人もいる。

従って、ダウン症候群の細胞を調査することは、老化、アルツハイマー病、癌、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、そして他の多くのメカニズムを理解する際に重要な手掛かりを提供するだろう。更なる研究がこの重要な領域で必要である。」

学術誌参照:
1.ダウン症候群のRAS変異急性リンパ性白血病の症例は、高頻度でJAK2突然変異を欠如する。

Nature Communications、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140814000952.htm



<コメント>
ダウン症候群(DS)の急性リンパ性白血病acute lymphoblastic leukaemia / acute lymphoid leukemia / acute lymphocytic leukemia; ALL)ではKRAS/NRASとJAK2の突然変異が排他的であったという記事です。

42名のDS-ALLの分析で、RAS変異は15名、JAK2変異は12名で、ほぼ完全に互いに排他的(almost completely mutually exclusive)でした。つまり約3分の2がこのどちらか2つの変異ということになります。

このような排他性は他の癌にも見られるようです。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ab7f83d0f92133abb83530140b509ad7

>EGFR突然変異と、KRASまたはBRAF突然変異の間には、相互の排他性が確認された。

2014年8月14日

2014-08-20 06:14:18 | 医学

血液脳関門を透過する分子サイズを制御する非侵襲性の新技術
New non-invasive technique controls size of molecules penetrating the blood-brain barrier



コロンビア大学工学部の生物医学工学・放射線医学教授のエリサKonofagouは、血液脳関門(BBB)を透過する分子サイズは、音圧(acoustic pressure)、つまり超音波ビームの圧力により制御できることを初めて証明した。



現在、ほとんどの小分子薬は血管と脳組織の間にある血液脳関門を通過できない。

タンパク質または脂質シェルでコーティングされたガス入りのバブル(ミクロバブル)と、焦束超音波(focused ultrasound)の併用は、安全かつ非侵襲的にBBBに浸透できる唯一の技術である。

超音波ビームがミクロバブル(microbubble)に衝突するとそれらは振動を始め、圧力の大きさに応じて、振動を続けるか、崩壊する。



研究者たちはミクロバブル空洞形成と組み合わせた焦束超音波がBBB内への治療薬運搬に使えることを発見していたが、以前のほとんどすべての研究は1つの特異的なサイズの薬剤に限られていた(市販され臨床的に広く使われている超音波造影剤等)。

Konofagouと彼女のチームは、BBB開放のサイズを制御できる方法があることを確信していた。

Konofagouは海馬を標的として様々な大きさのデキストランを投与し、音圧を高くするほどより大きな分子が海馬に蓄積されることを発見した。

低い圧力では小さい分子が通過し、より高い圧力ではより大きな分子が通過した。

学術誌参照:
1.焦束超音波によって誘導される血液脳関門の開放のサイズは、音圧によって制御される。

脳血流及び代謝ジャーナル(2014);

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140814123614.htm

<コメント>
超音波の音圧(acoustic pressure)を変えることにより、異なる大きさの分子を海馬に届けることができたという記事です。

最大で2000kDa(200万ダルトン)、54.4ナノメートルが通過したとあります。ヒアルロン酸ぐらいでしょうか。

音圧の意味ですが、ステッドマンには「超音波において全圧力から周囲圧を差し引いた瞬時値で、単位はパスカル(Pa)。有音時の最大圧力から無音時の圧力を差し引いたもの」とあります。



2014年8月13日

2014-08-18 22:42:17 | 医学

エボラ・タンパク質は、ウイルスに対する反撃の初期段階を妨害する
Ebola protein blocks early step in body's counterattack on virus



ウイルス感染に対する人体の最初の応答の1つは、インターフェロンというシグナル・タンパク質を作って放出することである。インターフェロンはウイルスに対する免疫システム応答を増幅する。

時間が経つにつれて、多くのウイルスはインターフェロンの免疫強化シグナルを弱体化させるように進化した。

今回、セントルイス・ワシントン医科大学、マウントサイナイ・アイカン医学部、そしてテキサス大学南西メディカル・センターの研究者たちは、エボラウイルスのタンパク質eVP24がどのようにしてインターフェロンを基盤とするシグナルを止めるかについて説明する。



ウイルス感染に対する効果的かつ素早い反応を誘発するため、インターフェロンは他の細胞にそのシグナルを伝えなければならない。

しかしそれはインターフェロンそのものではなく、インターフェロンが伝えるシグナル経路の最後で生じる。その経路の最後では、細胞の核内で免疫応答を駆動する遺伝子がオンになる。



今回の研究では、カリオフェリン(karyopherin)という輸送蛋白質と結合しているeVP24の立体構造を決定した。

インターフェロンシグナルの下流では本来リン酸化したSTAT1がカリオフェリンに結合して核内にエスコートされるが、eVP24はその代わりにカリオフェリンに結合する。

この段階でシグナルを手際よく妨げることによってeVP24は自然免疫を無力化し、エボラウイルス病(Ebola virus disease; EVD)を引き起こす。

研究者はeVP24複合体の立体構造を使ってそれがどのように起こるかを示す。



2006年、マウントサイナイアイカン医学部のクリストファーF. Basler博士たちはエボラウイルスがeVP24により免疫応答を抑制することを発見した。しかし、それがどのようにして起きるかは不明だった。

記事供給源:
上記の記事は、マウントサイナイ医科大学により提供される材料に基づく。

学術誌参照:
1.エボラウイルスVP24(eVP24)はカリオフェリン・アルファ5(KPNA5)の独特なNLS(nuclear localization signal; 核局在化シグナル)結合部を標的として、リン酸化されたSTAT1の核内移行と選択的に競合する。

Cell Host & Microbe、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140813130044.htm


<コメント>
エボラウイルスがどのように自然免疫を抑制するかについての記事です。
エボラウイルスはリン酸化STAT1の核内への移行は阻害しますが、自らの複製に必要な核内輸送は阻害しません。

関連記事にはエボラウイルスが樹状細胞の成熟を阻害するというものがあります。

http://www.sciencedaily.com/releases/2013/05/130502192226.htm

Wikipedia英語版にはグリコプロテインが好中球のシグナルを阻害するとあります。

http://en.wikipedia.org/wiki/Ebola_virus_disease

>The sGP forms a dimeric protein that interferes with the signaling of neutrophils, a which allows the virus to evade the immune system by inhibiting early steps of neutrophil activation.

2014年8月13日

2014-08-17 21:59:25 | 医学

非常に重要な結核薬はどのように標的を攻撃するか
Clues uncovered about how most important tuberculosis drug attacks its target



ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学部の研究者は、結核(tuberculosis; TB)にとって非常に重要な薬物が、どのように休止中のTB細菌を攻撃するかについての新しい手掛かりを発見した。

抗生物質のピラジナミド(Pyrazinamide; PZA)は1950年代からTBの治療に使われてきたが、そのメカニズムはあらゆるTB薬の中で最も理解されていない。

「PZAは我々が持つ抗生物質の中でおそらく最も独特だろう。PZAは活発に複製しているTBを捜し求めるだけではなく、代わりに休止中のTBを捜し出して破壊する。休止中のTBは他の抗生物質ではコントロールすることはできない。」

ブルームバーグ校の分子微生物学と免疫学部の教授で、研究リーダーのYingチャン医学博士は言う。

「それはまるで草刈りのようだ。現在のほとんどの薬はただ単に葉を切りはなすだけで根元は残る。PZAは、根元に手が届く。」



上海のFudan大学と連携して実行された新しい研究によれば、PZAはヒト型結核菌のエネルギー産生を切り離して細菌を殺すが、それはPanD(aspartate decarboxylase)を阻害することによる。PanDは特に補酵素A(CoA)の合成にとって重要である。

PanDがTB細胞で正しく作用していると、長い治療にもかかわらずTB細胞は生き残ることが可能になる。

唯一このプロセスを停止させるPZAの独特な能力だけが、潜伏中の細菌を消去することを可能にする。

近年、PZAの別の標的であるRpsA(ribosomal protein S1)を発見した研究者は、PanDの突然変異はPZAに抵抗性のTB細菌サブセットだけで見られると言う。



2012年、世界で約860万人がTBを発症し、130万人が死亡した。

新規に診断される率は低下する一方で、薬剤耐性の症例は増加している。

PZAはTBの治療の最前線である。PZAは薬に感受性がありかつ薬剤耐性のTBを有する患者に与えられる。そして開発中のあらゆる新薬がPZAと同時に使われる。

学術誌参照:
1.ヒト型結核菌のピラジナミドの新しい標的としてのアスパラギン酸脱炭酸酵素(Aspartate decarboxylase; PanD)。

新興微生物及び感染症(2014);

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140813103938.htm



<コメント>
結核の短期多剤併用で使用されるピラジナミド(pyrazinamide)の標的として、PanDが新たに明らかになったという記事です。


2014年8月12日

2014-08-17 00:12:58 | 

エピジェネティクスの新しい分析で腫瘍の弱点を明らかにする
New analysis reveals tumor weaknesses in epigenetics



癌が遺伝的な突然変異によって引き起こされるが、最近エピジェネティックな変異も癌の一因となることができるということが発見された。

これらの変異を分析することは患者が持つ腫瘍のタイプならびに異なる薬にどのような反応を示すかについての重要な手掛かりを提供する。

例えば神経膠芽腫(glioblastoma)の患者の場合、DNA修復遺伝子のMGMT(O-6-Methylguanine-DNA Methyltransferase)がエピジェネティックな変異によってサイレンシングされていると、アルキル化薬(alkylating agent)という種類の薬に十分な反応を示す。



MITの化学エンジニアは、この種の変異、つまりメチル化(methylation)を検出するための速くて信頼性が高い方法を開発した。

「これらの変異を分析することは非常に難しい。我々はこの分析法を、より簡単で、より安価にしようとしている。それは特に患者サンプルにおいてである」、MIT化学工学(Chemical Engineering)の助教授、ハドリー・サイクスは言う。



いくつかの癌ではメチル基が特定のDNA塩基配列(グアニン塩基の隣にあるシトシン塩基; CpG)に結合して、MGMT遺伝子がオフにされる。

この時、メチル化された塩基にはタンパク質が結合し、RNAへの複製を妨害することによって遺伝子を効果的にサイレンシングする。



メチル化シトシンを検出する現行の手法は大規模な研究では十分に機能するが、患者サンプルに適応するのは難しいとサイクスは言う。

そのほとんどの技術はバイサルファイト変換(bisulfite conversion; 亜硫酸水素塩)という化学的ステップを必要とする。DNAサンプルはバイサルファイトにさらされ、メチル化されていないシトシンを異なる塩基(ウラシル)に変換する。メチル化されたシトシンはそのままである。

しかし、この方法は患者サンプルでは十分に機能しない。なぜなら、どれぐらいの時間バイサルファイトにさらすべきかについて算出するため、メチル化されたDNAがサンプル中にどれくらい存在するかを正確に知っている必要があるからである。

「あなたが限られた量のはっきりしないサンプルしか持っていないと、適切な時間だけ反応を走らせることはさらに難しくなる。メチル化されていないシトシン基の全てを変えたくても、あまり長く実行することはできない。DNAが分解してしまうからである」、彼女は言う。



サイクスの新しいアプローチは完全にバイサルファイト変換を回避し、その代わりにメチル基結合ドメイン(MBD)タンパク質を利用する。本来それは細胞のDNA転写を制御する機構の一部である。

このタンパク質はメチル化されたDNAを認識して結合する。そして、DNAを転写するべきであるかどうかを細胞が決定するのを助ける。



サイクスのシステムの他の重要な成分はバイオチップである。それは何百ものDNAプローブでコーティングされたガラス・スライドで、プローブは研究対象の遺伝子の配列と相補的である。

DNAサンプルがこのチップにさらされると、標的配列とマッチングするどんなDNA鎖でもバイオチップ上でトラップされる。



次にスライドをMBDタンパク質プローブで処理する。MBDプローブがトラップされたDNA分子に結合すれば、それは配列がメチル化されていることを意味する。

DNAとMBDタンパク質の結合の検出は、MBDタンパク質を蛍光色素に結合するか、光によりヒドロゲルを形成する感光性の分子を持たせること等による。



MITチームは現在、他の癌に関連する遺伝子メチル化を検出するため、バイオチップ・プローブのDNA塩基配列を変えて装置を改造している。

また、彼らはMBDタンパク質のさらに優れたバージョンを作成し、より少ないDNAで済む装置を設計しようと考えている。

現行バージョンでは十分な組織を得るために外科生検をする必要があるが、針生検で実行できるようになるように改良したいと望んでいる。

学術誌参照:
1.メチル基結合ドメイン・タンパク質を使用して、ハイブリダイゼーション・ベースのエピゲノムタイピングの感度を評価する。

The Analyst、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140812163531.htm


※colorimetric: 比色定量の。基準色と比較して色の濃度を調べる

<コメント>
癌とエピジェネティクスについての記事です。

関連記事には、癌のマウスモデルとヒトの癌サンプルではエピジェネティックな面が異なるというものがあります。

http://www.sciencedaily.com/releases/2013/12/131205142220.htm

>DNA methylation, was found to be significantly different
> between mouse models of medulloblastoma and primary medulloblastoma human samples.

2014年8月12日

2014-08-15 12:18:15 | 

脳の血液供給を乗っ取る:
腫瘍治療を助ける発見




ミシガン大学とアリゾナ州大学の研究によれば、神経膠腫(glioma)という脳の悪性腫瘍は、血管周辺の空間で独占的に成長する。

腫瘍細胞が分裂するにつれて、彼らは自分自身への血管の支流を生み出す代わりに、すぐ間近にいる正常な細胞へと向かって押し寄せ、血管と血管の間の空間を充填し続ける。

この継続的な「自己血管による成長」は、腫瘍進行の最初から最終ステージまで検出された。

昨年の2件の臨床的な試験では、治療の一部として抗・血管新生薬を服用していた神経膠芽腫(glioblastoma)の患者は寿命の延長を示さず、中には薬を飲まなかった患者よりも多くの副作用に苦しむ者もいた。



ペドロウ・ローウェンスタイン医学博士は言う。

「脳と中枢神経系に元々存在する血管の密度は非常に高く、腫瘍細胞は元からある血管に沿って成長し、最終的には分裂して空間を埋め尽くす。ここでは2つの血管の間の距離は非常に小さい。」

「この血管に沿った、そして血管の間の空間への反復的な成長は、腫瘍がバルーンのようには成長しないことを意味する。そのような腫瘍は拡大する内部への新しい血管の発達を必要とする。」

「しかし、神経膠腫はむしろ局所的な小さい腫瘤として蓄積し、やがて大きな腫瘍へと合体する。」



すべての腫瘍増殖の血管形成論は、1立方ミリメートル以上の腫瘍は生存するために自分自身の血管を引き寄せる必要があると提唱する。

この理論は血管が存在しない組織を研究している中で現れた。

しかし、脳ではすでにかなりの密度の血管が脳内に存在する。

そして、どんな2つの血管の間でも、間を満たすのに十分な腫瘍細胞の数はほんのわずかである。



研究者はさらに、腫瘍が血管壁の細胞をバラバラに分散させることを知った。それは液体が漏れるのを許し、この「漏れやすさ」はしばしば脳腫瘍と関連する浮腫または液体ベースの腫脹へと結びつく。

その予想通り、研究チームは抗血管形成薬ベバシズマブが小血管の壁を安定させ、浮腫を低下させることを示した。

これは、再発性の神経膠芽腫の薬を使用する患者の経験を反映する。彼らは認知症状の低下を経験し、そして液体の貯留が減少するにつれて生活の質は上昇する。



しかしあいにくなことに(almost perversely)、腫瘍を止めるための薬は、予想に反して腫瘍の成長をより容易にするかもしれない。

新しく発表された研究において、薬で処置された脳腫瘍のマウスは、薬を投与されなかった脳腫瘍のマウスと同時に死亡した。

研究者は、薬が漏れやすい血管壁を修復して強化することによって、腫瘍細胞が「自己血管」新生プロセスの継続を容易にしていると示唆する。

抗・血管形成薬が与えられると「道」にあいた深い穴は修復され、腫瘍細胞は成長するための「滑らかな道」を得る。

それは、脳の中心にある溝さえも横断する「ハイウェイ」を腫瘍に与えてしまうかもしれない、とローウェンスタインの研究パートナー、マリア・カストロ博士は言う。

学術誌参照:
1.神経膠腫形成のメカニズム:
血管周囲での反復的な神経膠腫の成長と浸潤は、腫瘍の進行、VEGFとは独立した血管新生、そして抗血管新生治療に対する抵抗性につながる。

Neoplasia、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140812121638.htm


<コメント>
脳や中枢神経系には元々血管が非常に多いためにVEGF阻害剤のような抗血管新生薬は効果が薄く、それどころか逆効果になるかもしれないという記事です。

下の顕微鏡画像は血管に沿って成長する腫瘍(緑)です。





2014年8月11日

2014-08-15 01:57:29 | 免疫

『ワーム・ピル』は、自己免疫疾患症状を緩和する可能性がある



モナッシュ大学の研究者は、寄生虫のワームから、人体の免疫応答を抑制するペプチドを特定することに成功した。

モナッシュ研究所のレイ・ノートン教授は、世界中の専門家はまだ完全に自己免疫疾患の原因を理解していないと言う。

「自己免疫疾患は80以上存在し、軽度のものから場合によっては生命をおびやかすものまで重症度は幅広い。主に一つの組織か器官にのみ影響する疾患もあれば、肉体の多くの部分に影響を及ぼすものもある」、彼は言った。

「多くの人々は、自己免疫疾患の増加と西洋社会の清潔の重視の間につながりがあると信じている。なぜなら、昔の世代が対処しなければならなかった幅広い範囲の感染に免疫システムがさらされなくなったためである。」

「ワームの感染が先進国では事実上聞かれないので、これには若干の真実がある可能性はある。それでも、自己免疫疾患の発生率は以前よりも高い。そして、発展途上国では正反対である」、ノートン教授は言った。



最近の新しい研究では、自己免疫疾患を寛解させるために、寄生性のワームを故意に感染させるという選択肢が提供される。

ワームは自分自身の生存を確実にするために、宿主の免疫システムに対する鎮静効果を持つと考えられている。


今回、研究チームはワームを使わず、ワームが作り出す免疫調節成分を捜索した。

彼らは寄生虫のイヌ鉤虫(Ancylostoma caninium)の腹側分泌腺(anterior secretory glands)からcDNAライブラリーを作成し、カリウムチャネル(Kv1.3)を阻害して免疫システムを低下させるAcK1というペプチドを特定した。

AcK1はShKというイソギンチャク(sea anemone)からのペプチドに密接に似ていた。

ShKは自己免疫疾患を抑制することが示され、現在、多発性硬化症の治療の臨床試験中である。

学術誌参照:
1.寄生性のワーム由来のKv1.3チャネルをブロックする免疫調節性ペプチド:
自己免疫疾患に対する意味。

FASEB、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140811125126.htm

<コメント>
寄生虫由来の電位依存性カリウムチャネルKv1.3を阻害するペプチドは、エフェクターメモリーT細胞を抑制することにより自己免疫疾患に効果があるという記事です(記憶T細胞にはエフェクターメモリーTとセントラルメモリーTの2種類がある)。

記事は寄生虫とイソギンチャクのペプチドについてですが、他にもサソリやヘビに由来するKv1.3阻害剤が多数存在するとのことです。



2014年8月11日

2014-08-13 23:15:39 | 

医療用の油は、Glut1欠損と関連する消耗性てんかん発作を低下させる



テキサス大学サウスウエスタン・メディカル・センターの前臨床試験に参加した14人はGlut1欠損(G1D)という疾患を患っていたが、彼らの癲癇(てんかん)発作の頻度は『食用油』により著しく減少した。

彼らのほとんどは脳代謝の急速な増加を示し、神経心理学能力は改善した。

この発見が示唆するのは、トリヘプタノインというトウゴマに由来する油が遺伝的疾患と関連する脳ブドウ糖の枯渇を改善したということである。



G1Dはしばしば診断が確定せず、疾患を患う約38,000人のアメリカ人で唯一証明された治療は高脂肪のケトン誘発食だけであり、しかもそれは患者のおよそ3分の2にしか効果がない。

加えてケトン食は、例えば腎結石と代謝性異常の発症のような長期リスクがある。

本研究の結果によれば、トリヘプタノインはケトン誘発食と同程度に効果的なように見える;

しかし、この油が治療として利用できるようになるには、より多くの研究が実行される必要があると研究者は言う。



「肝臓と脳で産生されるトリヘプタノイン副産物は、この疾患で優先的に減少する脳化学物質を補充する」、テキサス大学サウスウエスタンの希少脳疾患プログラム(Rare Brain Disorders Program)のパスカル博士は言う。

他の代謝病の実験的治療としてのトリヘプタノインが成功し、G1Dマウスでの前臨床試験も成功したことにより、パスカル博士とチャールズ・ロウ博士たちはG1D患者のための研究を開始することを思いついた。

研究に参加した14人の小児と成人の患者は、体重に基づいて様々な量の油を1日4回消費した。

試験の成功を仮定して、パスカル博士は新しいG1D治療としてトリヘプタノインの医療食品指定を容易にするため、最適な投与量を調整するための更なる研究を計画している。

学術誌参照:
1.グルコース輸送体タイプI欠損(G1D)のためのトリヘプタノイン。

JAMA神経学、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140811165819.htm

 

<コメント>
GLUT1欠損による脳のグルコース欠乏とてんかん発作には、トウゴマ(castor bean)由来のトリヘプタノイン(triheptanoin)が効果的だったという記事です。heptaは7の意で、トリヘプタノインは炭素が7つのヘプタン酸(heptanoate/heptanoid acid)のトリグリセリドです。

アセチルCoAのみを補充するケトン食と違い、トリヘプタノインは炭素が5つのケトン体(3-オキソペンタン酸3-ヒドロキシペンタン酸)等へ代謝され、脳に取り込まれてTCA回路を補充(replenish/anaplerosis)して、GABAの産生の促進につながるようです。


2014年8月11日

2014-08-13 18:11:37 | 

強力なヒト癌遺伝子の背後にある発癌性メカニズムが特定される



スタンフォード医科大学の新しい研究によれば、癌の半分以上で高レベルに存在するタンパク質は、DNA凝縮と細胞死に関係する少数の遺伝子の発現を妨害するだけで細胞成長を促進する。

研究者は、Mycというタンパク質が、遺伝子の発現を抑制するマイクロRNAを通して作用することを発見した。



「これは、癌におけるマイクロRNAとクロマチン凝縮(chromatin packaging)の役割についての今までとは異なる考え方である」、腫瘍病理学の教授、ディーンFelsher医学博士は言う。

「1つのマイクロRNAの過剰発現が、Mycの癌作用を模倣できることを知って我々は非常に驚いた。」



研究者によって特定されたMyc遺伝子は、細胞が分裂により自己複製するか、老化という静止状態に入るか、あるいは、プログラム細胞死により永久に命令から除外するか、という状態を管理するMycタンパク質を産生する。

Mycタンパク質をコードする遺伝子は強力な癌遺伝子としてよく知られている。それは変異するか異常に発現すると、癌を引き起こす。

Mycは細胞でおよそ10,000の遺伝子とマイクロRNAの発現を調整する。



マイクロRNAはMycのように遺伝子発現を調整することができる小さいRNA分子(22ヌクレオチド)であり、以前の研究でMycの過剰発現がmiR-17-92というマイクロRNAファミリーのレベル増大を引き起こすことが示された。

「MycがマイクロRNAの発現を調整するということは何年か前から知られていた」、Felsherは言う。

「しかし、それがどのようにしてMycの発癌性の機能に関連するかは明らかではなかった。」



科学者は、Mycを不活性化するか発現を妨害することはMycに依存的な癌細胞の発育を止めるか死亡させ、Myc依存的な固形癌ではマウスで腫瘍の退縮を引き起こすことを長い間知っていた。

このような依存的な状態を癌遺伝子依存(oncogene addiction)というが、今回の研究で筆頭著者のYulin Li博士は、Myc依存的な癌細胞は、それが培養皿でもマウス内の腫瘍でもmiR-17-92発現が「オン」の位置でロックされ、Mycの発現が妨害された時でさえ分裂し続けることを発見した。

このことは、Mycの発癌性作用がマイクロRNAファミリーを通して発揮されることを示唆していた。



次にLiは、Mycの過剰発現によって影響を及ぼされる遺伝子と、miR-17-92によって影響を及ぼされる遺伝子の間で重なりを探した。

研究チームは発現がMycとmiR-17-92の両方によって増加したか抑制された401の遺伝子を発見したが、彼らは抑制された遺伝子に集中するほうを選択した。

それらが平均してより多くのマイクロRNAとの結合部を示したからである。



彼らはそれらの面々から1つ以上のmiR-17-92結合部位によって調整される15の遺伝子をさらに選別し、その中でも5つが突出していた。

4つの遺伝子は、DNAをタンパク質の周囲にきつく凝縮してクロマチンという複合体をつくる過程を調整するタンパク質をコードする。

この凝縮はDNAを細胞の核内に収まる(fit)ようにするために必要であるが、それは転写を調整するタンパク質が遺伝子に接近することを難しくする。

MycとmiR-17-92によって制御される4つのタンパク質は、クロマチン内にある遺伝子へのアクセスのしやすさを調整することによって、細胞増殖と老化に影響を及ぼす。

この4つは、MycまたはmiR-17-92の標的としてこれまで特定されなかった。



5番目の遺伝子は、プログラム細胞死またはアポトーシスを誘発するBimタンパク質をコードする。

Bimの発現は、miR-17-92によって影響を及ぼされることが以前報告された。



これらのタンパク質の全ては、細胞の増殖、細胞サイクルの静止状態へのエントリー、またはアポトーシスに影響を及ぼすことが知られている。

それは部分的には、クロマチンのDNA凝縮で遺伝子へのアクセスを与えるか禁止することによる。



「Mycは遺伝子転写と発現を全般的に増幅する」、Felsherは言う。

「しかし我々の研究によれば、癌状態の持続は、もっと特定の、焦点を絞ったメカニズムに依存することを示す。」



今回の研究では、5つの標的遺伝子の発現を抑制することがMyc過剰発現を効果的に模倣し、Mycを非活性化した場合の影響を部分的に弱めることが示された。

Myc依存的な培養癌細胞の最高30パーセントは、Myc発現がなくても増大し続けた(対照のコントロール細胞は11パーセントだけだった)。

マウスの場合、腫瘍は消失するのに失敗したか、数週以内に再発した。



「腫瘍学で最も大きい未解決の問題の1つは、癌遺伝子がどのようにして癌を引き起こすかということであり、癌遺伝子を別の遺伝子産物に置き換えることができるかどうかということである」、Felsherは言う。

「今回の実験は、Mycが細胞の自己複製決定に影響を及ぼす方法を明らかにし始めた。また、それらは我々が癌表現型の一因となるMyc過剰発現の状況を標的とするのを助けるかもしれない。」

記事供給源:
上記の記事は、スタンフォード大学メディカル・センターにより提供される材料に基づく。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140811124721.htm



<コメント>
DNAの凝縮に関連する4つのタンパク質(Sin3bHbp1Suv420h1Btg1)とBimをノックダウンすると、老化とアポトーシスは抑制され、Myc/miR-17-92の影響を模倣したというスタンフォードの記事です。

論文はこちら。

http://www.cell.com/cancer-cell/abstract/S1535-6108(14)00267-0


miR-17-92といえば、カロリー制限により発現が減少するという記事がありました。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/1cdbfcf9e28a41ed6299ef0c217e7fe4

2014年8月11日

2014-08-13 11:17:49 | 

乳癌は、どのように乳房の幹細胞の力を奪うか



妊娠中のある種のホルモンは、特殊な乳房の幹細胞を刺激して、乳汁の分泌に必要なミルク産生細胞を作らせる。

カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部とムアーズ癌センターの科学者は、妊娠中の乳腺と関連する乳房の幹細胞は、乳癌で見つかる幹細胞と関連があることを発見した。

「妊娠中の乳腺発達の基本的なメカニズムを理解することにより、我々は、悪性の乳癌の治療に対する珍しい洞察を得た」、デイビッドA. Cheresh博士は言う。



妊娠中は乳腺幹細胞の新しい集団が生じる。これらの幹細胞は、新生児に食事を与えることに備えて、胸部と乳腺をリモデリングする。

通常、これらの幹細胞は初期のリモデリング・イベントだけに寄与して、乳産生が始まる頃にはスイッチを切られる。

しかし、この妊娠中に幹細胞の活性化を調整するシグナルは、癌細胞によって乗っ取られるようだ。それはより急速な成長、より悪性の腫瘍を作り出す。

「この正常な経路は、結局は癌の進行の一因となる」、ジェイDesgrosellier博士は言う。



研究者はインテグリンという細胞表面の受容体蛋白ファミリーに焦点を合わせ、最終的にそのファミリーの一つ、『ベータ3インテグリン』の役割に集中した。

それはCD61としても知られ、転移とガン治療薬への抵抗性と関連があった。

CD61は、妊娠と癌の両方で乳房の発達に関係する原因のシグナル経路として、優れたマーカーである。

それは容易に検出され、乳癌を診断して治療するのに用いられる可能性がある。



妊娠と乳癌の間のつながりは長い間知られてきたが、その関連は複雑である。

子どもを持つことは将来の乳癌の発病リスクを低下させる一方で、各妊娠後は乳癌のきわめて悪性の種類を発病する短期的なリスクが増加する。

今回の研究は、妊娠中の幹細胞の振る舞いにとって重要な分子が、より悪性の妊娠に関連する乳癌に寄与する可能性を示唆する。



しかし、この癌細胞によって奪われるシグナル経路は、乳癌の原因ではない。

それは癌を悪化させるか、加速する可能性はあるが、癌そのものはむしろ他の因子、例えば突然変異や遺伝的な素因によって引き起こされる。

学術誌参照:
1.インテグリンαvβ3は、妊娠中および腫瘍性の乳腺で、Slug活性化と幹細胞性を引き起こす。

Developmental Cell、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140811124113.htm



<コメント>
インテグリンβ3(CD61)は、αv(CD51)と会合することで(αvβ3)転写因子Slugを誘導して幹細胞化を促進し、妊娠中の乳腺発達と乳癌の悪性化の両方と関連するという記事です。

αvβ3といえばニーマンピック病との関連で記事になったことがありました。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/3787e596bc6ddff6d2af0918968ced08

>LDLコレステロールの細胞の蓄積が、細胞運動能の促進において重要な役割を果たす。
>反対に、高いレベルのHDLコレステロールは、細胞伝播を回避するかもしれない。


2014年8月10日

2014-08-13 08:34:39 | 医学

男性のまれな遺伝性神経疾患の標的が特定される



カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部の研究者は、ケネディ病という珍しい遺伝性神経変性疾患が、男性の受胎率低下と筋力低下を引き起こすメカニズムを特定した。

ケネディ病の鍵として認識されてきた遺伝子突然変異(CAGリピート)は、「ゴミ」タンパク質を分解して再利用する能力(オートファジー)を損なう。

それらの「ゴミ」はニューロン上に蓄積して、筋収縮を制御する能力を徐々に損なう。



「本研究の価値は、この奇病だけではなく、オートファジー経路の障害と関連する他の多くの疾患のタンパク質蓄積を停止させる標的を特定したということである」、アルバートLaスパーダ博士は言う。



ケネディ病は脊髄球性筋萎縮(spinal and bulbar muscular atrophy; SBMA)としても知られ、男性が母親から遺伝する劣性X連鎖疾患である。2つのX染色体を持つ女性は、この疾患にはかからない。

この遺伝的な異常によりアンドロゲン受容体のミュータント蛋白が作られ、それはオス性ホルモンへの感受性と応答を損なう。時には睾丸萎縮と男の乳房の腫張に結びつく。



マウスの実験によれば、このミュータント・アンドロゲン受容体蛋白は、転写因子EB(TFEB)というタンパク質を不活性化する。TFEBは神経と他の細胞のオートファジーを調節するマスター因子であると考えられている。

つまりケネディ病のミュータント・アンドロゲン受容体蛋白はTFEBに結合して、不要なタンパク質の除去を仲介する能力を妨害する。

学術誌参照:
1.ポリグルタミン拡張アンドロゲン受容体はTFEBに干渉して、SBMAのオートファジー障害を引き出す。

Nature Neuroscience、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140810213654.htm

<コメント>
ケネディ病で障害される経路の一つが特定されたという記事です。

ケネディ病ではCAGリピートの伸長により異常なポリグルタミンがアンドロゲン受容体に生じるため、男性機能やオートファジーが損なわれます。

http://ta4000.exblog.jp/17939031/

>CAGリピートが伸長する AR の多型では、ケネディ病で観察されるように結果としてアンドロゲンに反応しなくなる。


TFEBはmTORとリソソームの活性をつなげる転写因子であるようです。

http://www.cosmobio.co.jp/aaas_signal/archive/ra_20120612_1.asp

>リソソーム↓→mTOR↓→TFEBセリン211リン酸化↓→14-3-3結合↓→TFEB核移行→リソソーム生合成関連転写↑→リソソーム↑


ポリグルタミンをもつARはTFEBと結合してしまうために細胞質に留まり、リソソームの合成が低下するということになるのでしょう。

GenecardsにはTFEBはCD40Lの発現を活性化するとあるので、獲得免疫も低下するのかもしれません。


2014年8月7日

2014-08-12 08:38:42 | 

鼻試験でクロイツフェルト・ヤコブ病を診断する



アメリカ国立衛生研究所とイタリアの科学者は、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を迅速かつ正確に診断することができる鼻ブラシ試験を開発した。

これまでのCJD診断は、死後または患者の生検で採取された脳組織が必要だった。



様々なプリオン病(家族性、散発性、バリアントCJD)を特定する試験は、プリオン病が拡散するのを予防できる可能性がある。

例えば、ヒトのプリオン病は輸血、移植、外科用器具の汚染などで伝染し得ることが知られている。



国立アレルギー・感染症研究所(National Institute of Allergy and Infectious Diseases; NIAID)の研究では、CJD患者31人の鼻サンプルと、他の神経疾患または神経疾患ではない43人の鼻サンプルを分析した。

これらのサンプルは主にジャンルイージZanusso博士とイタリアベロナ大学の同僚たちによって採取された。彼らは脳につながる嗅覚ニューロンを採取するための鼻内部ブラッシング技術を開発した。



それからモンタナのCaughey博士の実験により、31例のCJD患者のうち30例を正しく特定して(97パーセントの感受性)、非CJD患者の43例ではすべてネガティブな結果を示した(100パーセントの特異性)。

対照的に、標準的な脳脊髄液テストでは、感受性は77パーセント、特異性は100パーセントだった。そして、結果がわかるまでに2倍の時間がかかった。

学術誌参照:
1.鼻ブラッシングを使ったクロイツフェルト・ヤコブ病に対する検査。

ニューイングランド・ジャーナル・オヴ・メディシン、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140807105545.htm



<コメント>
鼻の奥をブラシで検査するだけで、素早く正確にクロイツフェルト・ヤコブ病が素早く検査できるという記事です。

上の図は光ファイバー付き鼻鏡と、嗅球の真下にある嗅細胞を無菌ブラシで採取している様子です。粘膜表面を穏やかに転がして(gently rolling along the mucosal surface)と説明にあるので痛くはないのでしょうが、さすがに麻酔しないとクシャミが出そうです。

記事中のバリアントCJD(異型/新型クロイツフェルト・ヤコブ病)は、いわゆる狂牛病で感染する可能性があるといわれるCJDです。

関連記事には、そのバリアントCJDを尿検査で検出できたというものがあります。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140807103650.htm

具体的には、"a protein misfolding cyclic amplification assay, invented in the lab, which mimics the prion replication process in vitro that occurs in prion disease." ということで、プリオンが「再生」していく過程を再現することで増幅する方法のようです。


2014年8月7日

2014-08-12 06:24:24 | 

70歳までに3分の1が乳癌になるリスク遺伝子



ケンブリッジ大学を中心とする8カ国17センターからの国際的なPALB2研究グループは、BRCA1またはBRCA2突然変異を持たない154組の家族のデータを分析した。その中にはPALB2遺伝子の突然変異を持つ362人が含まれた。

その結果、PALB2のまれな突然変異を持つ女性が70歳までに乳癌を発病する可能性は、平均して35%であることが判明した。

しかしながら、そのリスクは乳癌の家族歴にきわめて依存的であり、乳癌に冒された親族がより多い突然変異保因者の方がリスクは高かった。



PALB2はBRCA1とBRCA2両方と相互作用することが知られており、最初に乳癌と関連づけられたのは2007年だった。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17200668

BRCA1またはBRCA2の突然変異を持つ女性と同様に、PALB2突然変異をもつ女性は生まれた年代が最近になるほど、乳癌を発病する危険が高い傾向があった。

その理由は不明だが、例えば第一児の出産が遅いことや、家族が小さいこと、そして検査精度の向上により癌と診断される年齢が早まるなどの因子が関連するのだろうと研究者は推測している。

学術誌参照:
1.PALB2突然変異を持つ家族の乳癌リスク。

ニューイングランド・ジャーナル・オヴ・メディシン、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140807105547.htm

<コメント>
BRCA1/BRCA2と相互作用するPALB2(Partner And Localizer of BRCA2)も乳癌リスクを高めることが確認されたという記事です。


PALB2はBRCA2と複合体を形成して遺伝子の損傷を修復を促進します。

http://www.cdb.riken.jp/jp/04_news/articles/10/100418_nakayama.html