免疫細胞が肉体に敵対することを防止する遺伝子シグナル
Genetic signal prevents immune cells from turning against the body
病原体に直面するとき、免疫システムは『兵士』と『平和維持軍』から成り立つ多数の細胞を召喚する。
侵略が排除されると、平和維持細胞は兵士細胞に戦いを停止するように命じる。
この『停戦シグナル』が存在しなければ、兵士(キラーT細胞)は彼らの殺気立った攻撃を続け、肉体に敵対する。それは炎症と自己免疫不全、例えばアレルギー、喘息、関節リウマチ、多発性硬化症、1型糖尿病などを引き起こす。
今回、ソーク研究所の科学者は『キラーT細胞』に停止シグナルを送るかどうかを決定する『平和維持細胞』の重要なコントロール・メカニズムを発見した。
平和を維持する白血球、つまり制御性T細胞(Treg)のシグナル伝達のバランスは、正常な免疫応答にとって重要である。
例えば腫瘍の中には免疫の攻撃を妨害するため、自分のまわりに高密度のTregを配置して停戦シグナルを伝えさせるという極悪な(nefarious)ものがいる。
「Tregは免疫応答のサーベイランス・システムのようである」、Zhengは言う。
およそ10年の間、研究者はTregの平和維持能力の鍵はFoxp3と呼ばれる遺伝子であることを知っていた。しかし彼らはそれがどのようにして作用するかについて正確にはわからなかった。
また、ある種の状態下ではTregが狂暴になり、キラーT細胞に変形して包囲に参加することも知っていた。
Zhengの研究室による新しい論文ではFoxp3の特定の遺伝的な配列が、単独でTregの安定性の原因であると報告する。
研究者がCNS2という配列を取り除くとTregは不安定になり、Tregが本来制御するはずのキラーT細胞にしばしば変身した。それは動物モデルで自己免疫疾患に結びついた。
「Foxp3は、他の何者にもならないようにTregを保護している」、Zhengは言う。
「我々は、Tregの安定性を確定して免疫システムの均衡を保つFoxp3遺伝子の領域を発見した。」
この特異的な領域がFoxp3に存在しない場合、Tregはアイデンティティを失う可能性が非常に高くなり、炎症と感染に直面すると『離反』してキラーT細胞に変化する、とZhengは言う。
学術誌参照:
1.制御性T細胞アイデンティティの保護における、Foxp3シス(cis)エレメントの機能。
Cell、2014;
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140814123430.htm
<コメント>
TregのTregとしてのアイデンティティはcis、つまり同じDNA側のCNS2(conserved noncoding sequence 2; 進化的に保存されたCpGに富むイントロン非コード領域)のメチル化の状態によって維持されるという記事です。
Abstractによれば、FoxP3遺伝子の転写はIL-2とTCRシグナルによって促進され、IL-4やIL-6といった炎症シグナルで阻害されるようです。
IL-2受容体(IL2RA; CD25)の多型が自己免疫疾患につながるという研究もあります。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22461703