ウイルスが細胞に侵入するためのタンパク質が、研究室で捕まる
セントルイス大学の研究者はインテグラーゼをとらえたことをJournal of Biological Chemistryで報告する。
インテグラーゼはHIVのようなレトロウイルスの一部であり、それはヒトの細胞DNAにウイルスDNAを挿入することができる。
研究者はその姿をインテグラーゼ阻害剤の存在下でX線結晶構造解析によりとらえた。
セントルイス大学の分子ウイルス学の教授、ドゥエーンGrandgenett博士は1978年にインテグラーゼを発見した。
「1974年、我々はHIVについて聞いたことがなかった」、Grandgenettは言う。
「しかし、我々はHIVと同じ種類のレトロウイルスを研究した。
レトロウイルスは細胞のDNAにウイルスの遺伝情報を挿入することによって拡散するが、それはインテグラーゼによってである。」
科学者はインテグラーゼ阻害剤を改善するため、それがどのようにウイルスと相互作用するかについての完全な映像を得ようとしてきた。
「これまで、X線結晶構造解析による高解像度のHIVインテグラーゼ-DNA像を得ることに誰もが失敗してきた」、Grandgenettは言う。
彼らはインテグラーゼとDNAの複合体を作り出し、薬の存在下で動態的に複合体を安定させる必要があった。
研究者は、HIVではなく、代わりのウイルスを使用してショートカットした。
インテグラーゼの構造はすべてのレトロウイルスで類似しているので、Grandgenettはラウス肉腫ウイルス(RSV)で彼のアプローチを試した。RSVのインテグラーゼはHIVのインテグラーゼより確実に操作することができる。
現在の臨床的なインテグラーゼ阻害剤はすべて同様に作用する。つまりそれらは全てインテグラーゼを妨害してHIVの複製を防ぐ。
具体的に言うと、それらはSTI(strand transfer inhibitors; DNA鎖転送阻害剤)でウイルスDNA鎖の転送を止める。
それら阻害剤は、ウイルスDNA、ウイルス・インテグラーゼ、そして薬自体という3つの成分を一緒に結びつけることによって作用する。
本研究の前には誰も、これら3つの要素が接触する箇所の接合部複合体(synaptic complex; SC)を、溶液の状態で作れなかった。
今回研究者は、STIがRSVインテグラーゼのSCを阻害した状態を作り出した。
学術誌参照:
1.協調したDNA組み込みができるラウス肉腫ウイルス(RSV)接合部複合体は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のインテグラーゼDNA鎖転送阻害剤によって、動態的に阻止される。
Journal of Biological Chemistry、2014;
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140806095153.htm
<コメント>
HIVのインテグラーゼ阻害剤を使って、別のウイルスのインテグラーゼを阻害した状態のX線回折画像を得ることができたという記事です。