複数のDNA突然変異を促進するメカニズム
DNAの突然変異は、ゲノムの全体を通じてランダムに生じる珍しいイベントであると考えられてきた。
しかし最近の研究によれば、癌の発症は、同時に、そして互いに隣接して起こる複数の突然変異の形成をしばしば伴うことを示した。
このクラスター化した突然変異のグループは、染色体の再編成が起こる領域でしばしば見られる。それはDNA修復のプロセスから生じるのかもしれない。
アイオワ大学のアンナMalkova准教授は『切断により誘発される複製（break-induced replication; BIR）』というDNA修復経路が突然変異のクラスター化を促進する可能性があると言う。
「以前我々は、酸化、電離放射線、複製エラーから生じる二本鎖DNA切断はBIRによって修復されることが可能であることを示した」、Malkovaは言う。
「BIRの間、切断されたDNA末端は別の染色体上の同一DNA塩基配列と組み合わせられ、『通常でないタイプの複製』を開始する。
それは移動性のバブルとして進行して（proceeds as a migrating bubble）、一本鎖DNAの大量の蓄積に結びつく」、彼女は言う。
Cell Reportsの研究では、酵母細胞にアルキル化ダメージを与えてBIRを経験させた。
「BIRの間、蓄積する一本鎖DNA領域は、突然変異クラスターの形成につながる損傷の影響を受けやすかった」、論文の共著者、シンシアSakofskyは説明する。
「これらのクラスターは、ヒトの癌で見つかるクラスターに類似している」
学術誌参照：
1.切断により誘発される複製は、Kataegisの根底にある突然変異クラスターの供給源である。
Cell Reports、2014;
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/07/140730173130.htm
<コメント>
二本鎖DNAの切断（DSB）により起きる修復（BIR）は一本鎖DNA（ssDNA）を蓄積させて複数の変異を同時に引き起こすという記事です。
移動性のバブルという表現がわかりにくいですが、BIR（break-induced replication）により生じる複製フォーク（replication fork）はバブルのような構造になるとNatureに掲載されたAbstractにあります。
その際に使われるPif1ヘリカーゼがBIR関連突然変異の原因になるようです。
Kataegisの読み方ですが、つづりの似ているアイギスAigis/イージスAegisから推測して、カタイギス/カティージスと読むのかなと思います。
Kataegisの意味は「雷雨」です。