腸運動における免疫細胞の役割は、過敏性腸症候群の良好な理解につながる
腸の筋肉の内層には、異なった種類のマクロファージが存在する。
正常な結腸機能におけるそれらの細胞の役割は知られていない。
「筋性マクロファージの機能についてはほとんど何も知られていない。その理由は主に、これらの細胞が腸組織から分離するのが困難だからである」、ペンシルバニア医科大学の微生物学と免疫学の助教授であるミレーナBogunovicは言う。
消化された食品は、腸の筋肉の収縮と弛緩によって移動する。
これらの収縮のパターンと頻度は、腸の神経系からのシグナルによって制御される。
IBSの様な疾患の患者ではこのようなシグナルが過剰であり、刺激が誇張される。
研究者は今回、マウスの腸で筋性マクロファージ(muscularis macrophages)を枯渇させる方法を開発した。
「マクロファージが枯渇した後、正常だった腸の運動は異常を起こした。それはおそらく筋収縮が十分に調整されていなかったためで、腸運動がマクロファージによって調節されることを示唆している」、Bogunovicは言う。
次に彼らは通常のマクロファージと筋性マクロファージで遺伝子を比較し、活性がある非免疫性の遺伝子として骨誘導因子2(BMP2)を特定した。
BMP2は隣接する腸ニューロンに作用し、ニューロンはコロニー刺激因子1(CSF1)というタンパク質を分泌してマクロファージを援助する。
2つの細胞タイプの間の相互作用は腸内の「良好な」細菌によって統制され、それは好ましい消化を手伝う。
マウスに抗生物質を与えるとマクロファージとニューロンの間のコミュニケーションは中断され、BMP2とCSF1産生が減少して、腸の収縮は阻害された。
マウスに「良好な」細菌を回復すると、マクロファージとニューロンの間のミス・コミュニケーションは逆転した。
これはマクロファージと神経系の間の対話が、細菌環境の変化に適応できることを示す。
学術誌参照:
1.筋性マクロファージと腸ニューロンの間のクロストークは、胃腸運動を調節する。
Cell、2014;
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/03/140320173158.htm
<コメント>
腸内細菌、マクロファージ、そしてニューロンの相互作用が、腸の蠕動運動(peristalsis)に影響するという記事です。
腸内細菌の過剰な刺激が蠕動運動につながるとすれば、病気でなくても「排便回数が多いイコール健康」とは言い切れなくなりそうです。