糖尿病の発症のために必要な、たった一つの酵素
Single enzyme necessary for development of diabetes
12-LOという酵素は肥満により誘導される膵臓細胞の酸化ストレスを促進し、糖尿病前症と糖尿病につながる。
インディアナ医科大学の研究チームによれば、12-LOの酵素作用は細胞を害する小分子の産生の最後の段階である。
「高脂肪食を多く食べて過体重になると、膵臓のベータ細胞は充分なインスリンを産生する機能が失われると我々は推測した」、主任研究員Raghavendra Mirmiraは言う。
イースタンバージニア医科大学による先行研究では、12-LO(12-リポキシゲナーゼ)が過体重の人々の細胞だけに存在することが示された。
12-LOにより生じる有害な小分子はHETE(hydroxyeicosatetraenoic acid; ヒドロキシエイコサテトラエン酸)として知られる。
HETEはミトコンドリアを障害するため、膵臓細胞がインスリンを製造するための充分なエネルギーを発生するのに失敗する。
研究者は膵臓細胞だけで12-LOをノックアウトしたマウスを遺伝的に設計し、コントロール・マウスと共に低脂肪食と高脂肪食を与えた。
コントロール・マウスと高脂肪食ノックアウト・マウスは肥満とインスリン抵抗性を発病した。
コントロール・マウスの膵β細胞は酸化損傷を示したが、ノックアウト・マウスのβ細胞は完全で健康だった。このことは12-LOとその結果として生じるHETEがβ細胞不全を引き起こしたことを示唆した。
Mirmiraは研究で使われた高脂肪食が西洋型の食事であった点を強調する。それは大部分が飽和脂肪、つまり「悪い」脂肪から成る。
最近の部分的に関連する代謝経路の研究に基づいて、彼は「不飽和脂肪および一価不飽和脂肪では同じことは起きそうにない」という。それらは健康とされる比較的高脂肪な地中海食のほとんどの脂肪を構成する。
「我々は、高脂肪食後に糖尿病前症を発症する原因がβ細胞の12-LOであることを初めて示す」、Mirmiraは言う。
「また、我々の研究はほとんどあらゆる種類の糖尿病と糖尿病前症において最初に障害を受ける細胞はβ細胞であるという概念に、重要な信用を添える。」
学術誌参照:
1.12-リポキシゲナーゼは、膵島で肥満によって誘発された酸化ストレスを促進する。
分子および細胞の生物学、2014;
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140814192352.htm
<コメント>
肥満のために12-LOが高発現している人は、高脂肪食によりβ細胞が障害されやすいという記事です。12-LOはアラキドン酸(AA)を酸化してヒドロキシエイコサテトラエン酸(12-HETE)を生じる酵素です。
Abstractを見ると、12-LOノックアウトマウスの膵島ではSod1とグルタチオンペルオキシダーゼ1(Gpx1)の発現が上昇し、さらに核内ではそれら抗酸化酵素の発現を活性化する転写因子Nrf2が増加していました。
そのまま行くと肥満と過剰なAAが良くないという結論になると思うのですが、記事中のMirmira氏は「西洋食の飽和脂肪酸が良くない」と言っています。おそらく、12-LOの発現には過剰な飽和脂肪酸が関連するということなのでしょう。
もちろん過剰な飽和脂肪酸が代謝に悪影響を与えるのは確かだと思います。
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/8c466dbe001ed33942069a20e768b43e
ところで、イースタンバージニア医科大学による先行研究はおそらくこれのことでしょう。
BMIが39以上の病的肥満(morbidly obese)で糖尿病の人々とそうでないグループの内臓脂肪(VAT)における12/15-リポキシゲナーゼ(ALOX; arachidonate lipoxygenase)の発現を比較しています。
ALOX 12の発現は、IL-6、IL-12a、CXCL10、リポカリン-2の発現と正の相関が見られたとあります。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24955608