金曜日の閉店後

今週は週末を含めて暇だった

金曜日の仕事終わりに女王様から電話があった

「ベイビー、あたくし酔っ払って動けないの、助けて～」

聞けば以前、私も連れて行って貰った事のある飲み屋からだった

「女王様、そちらに行くけど

　一軒連れて行って欲しい店があるの」

「何処なの？」

「ムックよ」

最近、麗ママが何度か当店に遊びに来てくれている

横のつながりはとても大切である

中々伺えなくて申し訳なかったが

今回は女王様に連れて行っていただけるとあって

仕事終わりのドロドロの顔にファンデを無理矢理叩き込んだ


数分後、私は女王様が飲んでいたショットバーに居た

濃い顔のイケメンマスターはやり手で他にもワインバーなどを経営し

吉祥寺の飲み屋事情にも精通している

会話の中にも所々聞き逃せないホットな情報が散りばめられている

彼はその昔新宿２丁目のゲイバーのマスターに気に入られ

さんざ通ったという話も頷けるほどモテ顔だ

その頃その店には誰でも知っている野球選手や

歌手も遊びに来ていてとても楽しかったらしい

「あらマスターも喰われたんじゃないの？」

「俺は大丈夫だったっスけどね」

きっと一度くらいは甘噛みされているに違いない


美味しい手料理とお話に時間を忘れてると６時になっていた

「ちょっとムックに電話してみるわ」

朝の１０時くらいまで営業している店なので

週末のこの時間はピークだろうと思ったからだ

ボーイから麗ママに代わったが

「エドナ姐さん、ごめんなさい満席なのよ～」

入れなかったのは残念だけど忙しいのは良い事だ

「お稼ぎね～」と言って電話を切った

翌日わざわざ麗ママからお詫びメールを戴いた

若いのに律儀な人である


「じゃ、これから朝キャバ行く？」

女王様がひと暴れしたいらしい

「ヤダ～、もう帰るわよ」

そう言いながらタクシー乗り場まで歩く２人

凄い絵ヅラに連休で長距離バスに乗る行楽客たちは唖然

知っちゃいないわよと私たちは

乗車拒否も覚悟でタクシー乗り場へと向かったのだった