夕方から風が強くなって来ている
台風17号は、この後未明にかけて関東を通過するらしい
昨年9月の台風のせいでベランダ側の窓には大きくヒビが入っている
今回の暴雨風でそれが割れたりしないかとても心配である
勢力が弱まって早く温帯低気圧に変わらないかしら
窓の向こうの強い風の音を聞きながら不安な夜を迎えている
昨夜、営業前にサキ子が顔を出した
最近とんとご無沙汰だった彼女だが
少し前に近所の店のマスターが亡くなった事を
電話で知らせてくれた
久しぶりに現れたサキ子は一頃に比べて随分と痩せた
「相変わらずダイエットしてるの?」
「そんなに痩せたかしら?」
昔はダルマの様な体系でジーンズのジッパーも壊れそうなイメージだった
それが食事制限で2~30キロは減量したと思われる
リバウンドもなくそのまま維持している所を見ると
案外意志が強いのかもしれない
「ところでさァ、知ってる?」
前置きもほどほどに彼女はスクープでも報せる様に口を開いた
「あの子、ほら喘息持ってるあの子よォ
名前なんだっけ、中学生の娘が居るあの子…」
それだけでは私も誰の事か判らなかった
「そうそう、タエ子タエ子!!!」
「あ~、タエ子ね、そう言えば最近顔出さないわねェ」
「そりゃそうよ、死んじゃったんだもん」
私は絶句した
2~3ヶ月に一度のペースで遊びに来ていたタエ子
いつも中学生の娘の話をしていた
「ミサキが練習がきついっていつも泣いてるのよ~」
バレーボールの推薦入学で入った中学校は
コーチがとても熱血でミサキはいつも生傷が絶えない
それでも彼女は好きなスポーツのために頑張っているが
自宅に帰って母親に愚痴って泣いている
それを聞くのが辛いと言っていたタエ子
一卵性親子の様なこの2人は
お互いに依存し合っていて
「ミサキが居なかったら私は生きてる意味がない」とか言っていた
タエ子はバツイチのシングルマザー
現在は内縁の夫も居て3人で暮らしている
ある日当店で知り合ったカエと意気投合し
自宅に招んだり、他の飲み屋にも一緒に行ったりしている
金曜日にカエが遊びに来た時もタエ子の話をしたばかりだった
「ホントあの子はだらしないよね~
最近は連絡もないし、こちらからもかけないわ」
女の友情は長続きしないと言う典型かと思っていた
そのカエが新しい女友達を連れて土曜日も遊びに来た
さっき開店前にサキ子から聞いた話をした途端
カエは一瞬信じられないと言った表情をしたが
すぐに大粒の涙を流し始めた
エッちゃんと言う女友達は、もらい泣きしながら
カエの肩を抱いている
「ウソでしょう、あんな殺しても死なない様な女が…」
タエ子は自宅で突然倒れてそのまま息を引き取ったらしい
心筋梗塞か何かだったのだろうか
娘のミサキはその場に居たのだろうか
それとも学校から帰って来て変わり果てた母の姿を見たのだろうか
どちらにしてもあまりにも残酷だ
母親に依存していた娘はきっと立ち直れないで居るだろう
そして彼女の今後についても心配である
「横浜の方にミサキのお爺ちゃんが居る」
タエ子の実父についても聞いた事がある
祖父の下に引き取られるのだろうか
さっきからカエは泣きっぱなしだ
「ホントあいつ、アル中で安定剤とかも飲んでて
どうしようもない子だったけど
死んじゃったらおしまいだよね…」
その時、偶然にも有線から工藤静香の歌声が流れて来た
タエ子がよくカラオケで歌っていた曲だ
あまりにも突然に人生を終えてしまったタエ子
さぞかし娘のことを案じて彷徨っているのではないだろうか
台風17号は、この後未明にかけて関東を通過するらしい
昨年9月の台風のせいでベランダ側の窓には大きくヒビが入っている
今回の暴雨風でそれが割れたりしないかとても心配である
勢力が弱まって早く温帯低気圧に変わらないかしら
窓の向こうの強い風の音を聞きながら不安な夜を迎えている
昨夜、営業前にサキ子が顔を出した
最近とんとご無沙汰だった彼女だが
少し前に近所の店のマスターが亡くなった事を
電話で知らせてくれた
久しぶりに現れたサキ子は一頃に比べて随分と痩せた
「相変わらずダイエットしてるの?」
「そんなに痩せたかしら?」
昔はダルマの様な体系でジーンズのジッパーも壊れそうなイメージだった
それが食事制限で2~30キロは減量したと思われる
リバウンドもなくそのまま維持している所を見ると
案外意志が強いのかもしれない
「ところでさァ、知ってる?」
前置きもほどほどに彼女はスクープでも報せる様に口を開いた
「あの子、ほら喘息持ってるあの子よォ
名前なんだっけ、中学生の娘が居るあの子…」
それだけでは私も誰の事か判らなかった
「そうそう、タエ子タエ子!!!」
「あ~、タエ子ね、そう言えば最近顔出さないわねェ」
「そりゃそうよ、死んじゃったんだもん」
私は絶句した
2~3ヶ月に一度のペースで遊びに来ていたタエ子
いつも中学生の娘の話をしていた
「ミサキが練習がきついっていつも泣いてるのよ~」
バレーボールの推薦入学で入った中学校は
コーチがとても熱血でミサキはいつも生傷が絶えない
それでも彼女は好きなスポーツのために頑張っているが
自宅に帰って母親に愚痴って泣いている
それを聞くのが辛いと言っていたタエ子
一卵性親子の様なこの2人は
お互いに依存し合っていて
「ミサキが居なかったら私は生きてる意味がない」とか言っていた
タエ子はバツイチのシングルマザー
現在は内縁の夫も居て3人で暮らしている
ある日当店で知り合ったカエと意気投合し
自宅に招んだり、他の飲み屋にも一緒に行ったりしている
金曜日にカエが遊びに来た時もタエ子の話をしたばかりだった
「ホントあの子はだらしないよね~
最近は連絡もないし、こちらからもかけないわ」
女の友情は長続きしないと言う典型かと思っていた
そのカエが新しい女友達を連れて土曜日も遊びに来た
さっき開店前にサキ子から聞いた話をした途端
カエは一瞬信じられないと言った表情をしたが
すぐに大粒の涙を流し始めた
エッちゃんと言う女友達は、もらい泣きしながら
カエの肩を抱いている
「ウソでしょう、あんな殺しても死なない様な女が…」
タエ子は自宅で突然倒れてそのまま息を引き取ったらしい
心筋梗塞か何かだったのだろうか
娘のミサキはその場に居たのだろうか
それとも学校から帰って来て変わり果てた母の姿を見たのだろうか
どちらにしてもあまりにも残酷だ
母親に依存していた娘はきっと立ち直れないで居るだろう
そして彼女の今後についても心配である
「横浜の方にミサキのお爺ちゃんが居る」
タエ子の実父についても聞いた事がある
祖父の下に引き取られるのだろうか
さっきからカエは泣きっぱなしだ
「ホントあいつ、アル中で安定剤とかも飲んでて
どうしようもない子だったけど
死んじゃったらおしまいだよね…」
その時、偶然にも有線から工藤静香の歌声が流れて来た
タエ子がよくカラオケで歌っていた曲だ
あまりにも突然に人生を終えてしまったタエ子
さぞかし娘のことを案じて彷徨っているのではないだろうか