ヒデミさんが

昨夜は雨の金曜日

店に着くとヒデミさんが具合悪そうだ

「今夜は帰って良いかしら？

　何だか調子悪くて震えるのよ

　ゴメンナサイ」

顔色は悪く、悪寒でもするのか確かに震えている

彼女は責任感が強く

決して仮病など使うタイプではない

平日は２人だが、週末はママもラスカルもサナエさんも出勤するので

彼女が休んでも人数的には何とかなる

そう言えば数日前から体調が悪そうだった

しかし平日は休めないと我慢していたのかもしれない


「お姐さん大丈夫よ

　気にしなくても良いのよ

　普段頑張っているんだから

　遠慮なく身体を休めた方が良いわ

　ホントに具合悪そうだけど

　どこかシビレとかはないの？」

「右腕がシビレるのよ」

しんどそうに応える

まさか脳梗塞の恐れがあるのではないだろうか

以前バイトのサキも自宅で同じ症状だったらしい

彼の場合は翌朝救急車を呼んで即入院

処置が早かったのが幸いした


「お姐さん、救急車を呼ぶ？」

「それだけは止めてちょうだい」

「だったらタクシーを呼ぶからすぐに病院に行った方が良いわよ」

「そうね」

と言って横になった



実はラスカルは既に花粉症が酷いと

私とママに連絡が入っており

今夜と明日は休みだ

サナエさんも先週土曜日に無断欠勤しており

今夜もあてにならない

そのままバックレかもしれない

となるとママと私の２人だ

きっとママはチーフを呼ぶだろう

チーフと言えどもウチのスタッフではなく

元々お客さんだった人を

万一の時に急遽お願いするのだ

しかも彼は昼間仕事を持っており

そんなに遅くまで手伝ってもらうわけにも行かない


今夜は雨だし、給料日後なのでそれほど混み合う事はないだろう

もともとウチの店は給料日後よりも

月頭の方が忙しい

ママにメールするとすぐに電話がかかって来た

「急いで支度するわ」


その時、一人の男性がドアを開けて

「すいません、７人なんですけど入れますか？」

私はまだメイクも中途半端だったが

「勿論大丈夫よ、雨の中嬉しいわ！」と

彼らを迎え入れた

男性４人に女性３人のグループだ

その中の一人は何度か来店されており

口も達者で盛り上げ要員的なタイプだ

「あらやだ今夜はエドナだけなの？」

オネエ言葉で身をくねらせながら聞いてくる

ゲイではないがＴＰＯに合わせて変身出来るようだ

「そうなのよ～

　みんな生理休暇なのよ～

　でももうすぐママが来るから楽しみにしててね

　はるな愛ちゃんと同じ先生に改造してもらっているから綺麗よ」

そう言いながらカウンターで皆の飲み物を作る私なのであった

ヒデミさん大丈夫だろうか…