お尋ね者

私がデビューした店に

大阪出身のリナと言う子が居た

まだ若くて身体もイジっていない

顔はクワバタオハラの眼鏡の方に似てた


彼女はトークが面白かった

関西弁で芸能人の裏情報をまくしたてていた

私はお客さんと一緒に、彼女の話を

大笑いしながら聞いていた

ちょっと癖のある子だが

根は素直で悪い子ではないと思っていた


ある時、ママがショータイムの衣装代として

楽屋の冷蔵庫の上に

３０万円の入った封筒を置いていたらしい

そんな所に無用心に置きっぱなしにした

ママもどうかしているのだが

リナがまんまとそれを持ち逃げしたのだ


私も彼女からヅラを安く譲ってもらったのだが

そのヅラや他のスタッフの私物までネコババしていた

全くとんでもないオカマだ

ママやスタッフが彼女の行方を探していたら

近所の別のオカマバーに入店した事が判った

早速、私とセイコが取り返しに行った


ちょうどショータイム中で

店の外でオカマが裸で着替えていたが

理由を話してリナを呼び出した

私の顔を見るや

「ごめんなさ～い！そんなつもりじゃなかったのよ～」

「ヅラは要らないからお金返しなさい！」

と詰め寄ったら、あっさり返金した

そして衣装代の３０万に付いては

「そんなの知らない」とシラを切る

押し問答の末、私達はひとまず店に戻った

事情をママに説明すると

「あの女も相当な度胸ね」と怒り心頭

ちょうど、リナが逃げ込んだ店は

ママの教え子の店だったのだ

早速、電話で事情を伝え

リナにも脅しをかけていた


翌日リナはとっととトンズラした


この手のオカマはよく要るらしい

以前「薔薇族」と言う本では

広告のページに尋ね人として

手癖の悪いオカマの顔写真が載っていた

ママは「ウチの広告にもアノ子の写真載せようかしら？」

と言っていたが

セイコが「アノ子はとっくにお尋ね者ですよ｝

と声を荒げていた

リナ、どこかで逞しく生きているのだろうか？