オネエの…

浅草にタケミドレスと言う店がある

オカマデビューした頃、よく通った

売れない演歌歌手やカラオケ大会で

気合の入ったオバサン達が着ている

派手なスパンコールのドレスを

たくさん売っていた


夕方６時までの営業なので

早起きして出かけなければならない

しかも私の住んでる所からは

１時間半くらいかかる


ある時、後輩のセイコを連れて行った

彼女は華奢なので９～１１号がすんなり入る

可愛いデザインのミニドレスを選んでいる

「セイコちゃん、それ良いじゃないのよ

　　　　　　　　　　　　　　１３号ないかしら？」

「あらやだ、エドナさんにはこっちの

　　　　　　　　　　　　瀬川瑛子風のが良いんじゃない？」

「まあ可愛くないわ！」

そんな冗談を言いながら吊るしのドレスを選んでいた


そこへ年季の入ったオカマ登場

地元浅草の有名店の大御所かしら？

挨拶しなきゃマズイかしら？

セイコとコソコソ話していると

「ちょっとゴメンナサイ」

と言って大御所は私達の前を通って

奥の新作コーナーを物色していた

ベルベットのシックなドレスが気に入ってるようだ

「コレ試着していいかしら？」

スタッフのお姐さんも微笑みながら

彼女を試着室に通す

大御所の体型は私と同じ１３号だろうと思う

お姐さんがカーテンを閉める


いつの間にかセイコが２階から

バーゲン品のワンピースを探してきた

「エドナさん、安いのよコレ」

「あら素敵ねぇ、総スパンじゃないの」

「１３号もありましたよ」

そのやりとりを聞いていたのか

カーテンが少し開いた

大御所が隙間からこっちを見ている

１３号のバーゲン品に反応したようだ


その時、試着用に履いていた銀ハイがバランスを崩した

おっとっとっと…

てな感じでカーテンを大きく揺らして

フロアに踊り出て来た大御所

何とジッパーを止めてなかったようで

ズルズルとドレスが下がって行く

やだ～、スケスケのＴバック丸出しじゃないの

しかもお宝が豪華！！！

私とセイコはついつい目を奪われてしまった

大御所は慌てる事もなく

おもむろにドレスを引き上げ

試着室の中へ戻って行った


それにしてもオネエのデカマラとはよく言ったものだ

その日以来あの大御所のお宝が

頭から当分離れなかった