リッスン・トゥ・ハー

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それでも海のリスクと共に生きる

2011-04-06 | リッスン・トゥ・ハー
海は危険がいっぱいよ。まったく油断ならない。いちばん怖いのはクラゲ。あのふわふわした軟弱なクラゲ?とあなたはいうかもしれない。だけどそれは海を何も知らない都会のひとの戯れ言ね。まったく戯れ言に過ぎない。クラゲの怖さを理解しないと、ここ海では生きていけないと思って。海でクラゲを見たら、まず近づいちゃダメ。海以外でクラゲを見たらどんどん近づいていって大丈夫、海に入っていないクラゲは軟弱そのもの、かなり弱っているからまったく怖くない。つついてやれば、ぴゅ、って海水を吐き出しながら喘ぐだけ。だから普段の恨みをはらしておくべき。そういう恨みを晴らす機会もあるわけだから、海でクラゲを見たときにはすぐに逃げ出した方がいい。まあ、逃げ出そうにもそんなに速く泳げないだろうし、あきらめてしまうしかないかもしれない。クラゲのなにが怖いかって、あのぬめぬめが体中に絡み付くわけ。陸に上がってもとれないぐらいに絡み付くわけ。そうなったらもうクラゲとして生きていくしかないわけだから、困っちゃう。新鮮な魚介類は食べることができるけれども、例えば山菜とか、乳製品とか、さくさくのスナック菓子なんかまずあきらめて。嫌でしょう?クラゲだって指をさされて怖がられる人生なんて。だったら海に近づかないで。とっととシンガポールに帰りなさい。クラゲになってもええよ、というのならあたしとともにここで生きましょう。

仏像を生活費に

2011-04-06 | リッスン・トゥ・ハー
「生活費に困っていたんです」

「だからって仏像を盗んじゃいけないよ」

「他に何もなかったんです」

「そりゃそうだろう、入ったのが無人寺だもの」

「仏像なら売れそうだったんです」

「マニアがいるからね」

「許してくれませんか?」

「ちょっと許せませんね」

「わたしはどうなりますか?」

「じゃあ、仏像になってもらいましょうか」

「仏像に?」

「仏像に」

「というと?」

「仏像になってそこに座っててもらいます」

「座ってるだけでいい」

「いいでしょう」

「期間は?」

「は?」

「期間はどのぐらい座ってたらいいんですか?」

「仏像だよ」

「はい、どのぐらいですか?」

「そりゃ、ずっとだろうよ」

「ずっと?」

「仏像動かんよね?」

「動きませんけど」

「だったら、ずっとですよ、座ってるだけでいいんだから楽でしょう」

「お腹が減ります」

「仏像は減らんでしょう」

「わたしは仏像じゃないですから減ります」

「知らんよ、仏像になるんだから、どうにかしなさいよ」

「どうにかなるもんじゃありませんよ」

「どうにかなるって、ほら、このあなたが盗もうとしたやけに額が広い仏像、よく見て見なさいよ」

「額が広い仏像がなんですか」

「これも、盗人が仏像になってもらってる分です」

「盗人盗もうとしてたんか!」

「だからやればできるんだって」

「わ、今ちょっと薄目あけた!」

「じゃ、がんばってください」

「いやいやいや」

「なに?」

「ゆるしてください」

「ゆるさんよ」

「どうしてもですか?」

「どうしてもやね」

「じゃあ仏像になります」

「よろしい、じゃがんばってね」

「おまえも道連れじゃい!」

「なにをする!」

「道連れ道連れ!」

「うわあ!」

「仏像ども、かかれ!」

「仏像が襲ってくる!」

「今までの恨みじゃい!」

「すごい形相の仏像の群れ!夢にまで出てきそうだ!」

「ひゃっほーい!」