海は危険がいっぱいよ。まったく油断ならない。いちばん怖いのはクラゲ。あのふわふわした軟弱なクラゲ?とあなたはいうかもしれない。だけどそれは海を何も知らない都会のひとの戯れ言ね。まったく戯れ言に過ぎない。クラゲの怖さを理解しないと、ここ海では生きていけないと思って。海でクラゲを見たら、まず近づいちゃダメ。海以外でクラゲを見たらどんどん近づいていって大丈夫、海に入っていないクラゲは軟弱そのもの、かなり弱っているからまったく怖くない。つついてやれば、ぴゅ、って海水を吐き出しながら喘ぐだけ。だから普段の恨みをはらしておくべき。そういう恨みを晴らす機会もあるわけだから、海でクラゲを見たときにはすぐに逃げ出した方がいい。まあ、逃げ出そうにもそんなに速く泳げないだろうし、あきらめてしまうしかないかもしれない。クラゲのなにが怖いかって、あのぬめぬめが体中に絡み付くわけ。陸に上がってもとれないぐらいに絡み付くわけ。そうなったらもうクラゲとして生きていくしかないわけだから、困っちゃう。新鮮な魚介類は食べることができるけれども、例えば山菜とか、乳製品とか、さくさくのスナック菓子なんかまずあきらめて。嫌でしょう?クラゲだって指をさされて怖がられる人生なんて。だったら海に近づかないで。とっととシンガポールに帰りなさい。クラゲになってもええよ、というのならあたしとともにここで生きましょう。
「生活費に困っていたんです」
「だからって仏像を盗んじゃいけないよ」
「他に何もなかったんです」
「そりゃそうだろう、入ったのが無人寺だもの」
「仏像なら売れそうだったんです」
「マニアがいるからね」
「許してくれませんか?」
「ちょっと許せませんね」
「わたしはどうなりますか?」
「じゃあ、仏像になってもらいましょうか」
「仏像に?」
「仏像に」
「というと?」
「仏像になってそこに座っててもらいます」
「座ってるだけでいい」
「いいでしょう」
「期間は?」
「は?」
「期間はどのぐらい座ってたらいいんですか?」
「仏像だよ」
「はい、どのぐらいですか?」
「そりゃ、ずっとだろうよ」
「ずっと?」
「仏像動かんよね?」
「動きませんけど」
「だったら、ずっとですよ、座ってるだけでいいんだから楽でしょう」
「お腹が減ります」
「仏像は減らんでしょう」
「わたしは仏像じゃないですから減ります」
「知らんよ、仏像になるんだから、どうにかしなさいよ」
「どうにかなるもんじゃありませんよ」
「どうにかなるって、ほら、このあなたが盗もうとしたやけに額が広い仏像、よく見て見なさいよ」
「額が広い仏像がなんですか」
「これも、盗人が仏像になってもらってる分です」
「盗人盗もうとしてたんか!」
「だからやればできるんだって」
「わ、今ちょっと薄目あけた!」
「じゃ、がんばってください」
「いやいやいや」
「なに?」
「ゆるしてください」
「ゆるさんよ」
「どうしてもですか?」
「どうしてもやね」
「じゃあ仏像になります」
「よろしい、じゃがんばってね」
「おまえも道連れじゃい!」
「なにをする!」
「道連れ道連れ!」
「うわあ!」
「仏像ども、かかれ!」
「仏像が襲ってくる!」
「今までの恨みじゃい!」
「すごい形相の仏像の群れ!夢にまで出てきそうだ!」
「ひゃっほーい!」
「だからって仏像を盗んじゃいけないよ」
「他に何もなかったんです」
「そりゃそうだろう、入ったのが無人寺だもの」
「仏像なら売れそうだったんです」
「マニアがいるからね」
「許してくれませんか?」
「ちょっと許せませんね」
「わたしはどうなりますか?」
「じゃあ、仏像になってもらいましょうか」
「仏像に?」
「仏像に」
「というと?」
「仏像になってそこに座っててもらいます」
「座ってるだけでいい」
「いいでしょう」
「期間は?」
「は?」
「期間はどのぐらい座ってたらいいんですか?」
「仏像だよ」
「はい、どのぐらいですか?」
「そりゃ、ずっとだろうよ」
「ずっと?」
「仏像動かんよね?」
「動きませんけど」
「だったら、ずっとですよ、座ってるだけでいいんだから楽でしょう」
「お腹が減ります」
「仏像は減らんでしょう」
「わたしは仏像じゃないですから減ります」
「知らんよ、仏像になるんだから、どうにかしなさいよ」
「どうにかなるもんじゃありませんよ」
「どうにかなるって、ほら、このあなたが盗もうとしたやけに額が広い仏像、よく見て見なさいよ」
「額が広い仏像がなんですか」
「これも、盗人が仏像になってもらってる分です」
「盗人盗もうとしてたんか!」
「だからやればできるんだって」
「わ、今ちょっと薄目あけた!」
「じゃ、がんばってください」
「いやいやいや」
「なに?」
「ゆるしてください」
「ゆるさんよ」
「どうしてもですか?」
「どうしてもやね」
「じゃあ仏像になります」
「よろしい、じゃがんばってね」
「おまえも道連れじゃい!」
「なにをする!」
「道連れ道連れ!」
「うわあ!」
「仏像ども、かかれ!」
「仏像が襲ってくる!」
「今までの恨みじゃい!」
「すごい形相の仏像の群れ!夢にまで出てきそうだ!」
「ひゃっほーい!」