リッスン・トゥ・ハー

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スー・チーさん投票せず

2010-11-08 | リッスン・トゥ・ハー
「ど、ど、どうしたんですかいったい?」

「投票しませんわ」

「なぜ?」

「投票する気にならない」

「そんな」

「わたしが投票したくなるような工夫が必要ね」

「といいますと?」

「たとえば、投票所にさつまいもを焼いておくこと」

「焼き芋」

「それがあればちょっと立ち寄ってみようかしらと思うからね」

「しかし、投票所はそういう場所ではないのでは?」

「だったら投票しないから」

「わかりました配置します」

「あと、投票所にはんぺんを置いておくこと」

「はんぺん?」

「ちゃんと白身魚でつくった上品なやつをね」

「はあ」

「それがあれば投票しようかという気になるわ」

「わかりました」

「あと」

「まだ?」

「何か?」

「いえ、どうぞ続けてください」

「バナナジュースを置いてない投票所はただの電話ボックスよ」

「なんですかその暗示的な言い回しは」

「バナナジュースを置く」

「はあ」

「それから、飴やチョコレートなども必要、すぐにパワーになるからね」

「マラソンの給食ポイントみたいになってきましたよ」

「走っていくんだから仕方ない」

「いや、走らなくてもいいですよ」

「走りたいの」

「はあ」

「そうだ、たすきを用意して」

「たすき?」

「誰かから受け取って走り出し、投票ポイントで投票し」

「投票ポイントて」

「色々補給して去っていく」

「ちょっと無理です」

「じゃあいかない」

「投票の自由じゃい」

トイレの神様を見た植村花菜

2010-11-08 | リッスン・トゥ・ハー
トイレの神様はいました。たしかにいました。あれはあたしがトイレの個室に入り、神の訪れを根気づよく待っていたときのことです。あたしは常時便秘気味で、根気づよく待たなければ神は訪れない。かなり長い時間が経過しました。水の流れる音が何度も何度も聞こえる。隣近所から聞こえてきました。あたしは若干焦っていました。このあと予定があったのです。大切な予定でした。事務所にて契約するとかしないとかそういうこれから一生を決めるかもしれない予定でした。あたしは次第に焦ってきて、ふんばりはじめました。そうしてはいけないことはわかっていました。そうすることで逆に出にくくなってしまうことも知っていました。しかしそうせざるをえなかったのです。時間がありませんでした。ひねりだして、すっきりしたかったのです。ありったけのちからをこめました。それでもなかなか訪れそうにありません。あたしはおじいさんを呼ぶことにしました。二人で力を合わせたらあるいは訪れてくれるかもしれない。おじいさんは家からやってきて、あたしの背中を引っぱりました。それでも神は抜けません。おじいさんはおばあさんを呼びました。人数をふやせばなんとかなるかもしれない。おばあさんはおじいさんの背中を引っぱりました。それでも神は抜けません。それなら、家畜どもを呼ぼうじゃないか、おばあさんはいいました。それで、家畜を呼びました。牛や馬や犬や猫や鼠はやってきてそれぞれ背中を持ちました。みんなで引っぱりました。うんとこどっこいしょ、うんとこどっこいしょ。すると、神が、すぽん、と抜けて出てきたのです。ああ、すっきり。