リッスン・トゥ・ハー

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バッファローコクヨサプライ

2010-11-02 | リッスン・トゥ・ハー
「バッファローなんだ」

「なんですか急に、落ち着いてください」

「バッファローなんだよ俺は」

「違うでしょ」

「バッファロー以外の何者でもないんだ」

「人間の父と母がいる普通の人ですよ」

「ではこのバッファローの息の荒さはなんだ!」

「興奮して息は荒いですが、バッファローでは全然ないです」

「ではこのバッファローの太ももはなんだ!」

「細いです、平均以上に細いです」

「ではこのバッファローの牙はなんだ」

「全く尖ってないです、一般的な汚い歯です」

「ではこのバッファローのひとみはなんだ!」

「あるいはバッファローのひとみかもしれませんが、いわれないとわかりませんよ」

「ではこのバッファローのときめきはなんだ!」

「バッファローときめかないですから」

「バッファローだらけではないか、俺はバッファローだらけではないか」

「落ち着いてください、ぜんぜんだらけじゃないです」

「もう俺はバッファローにのっとられたバッファローの人として生きていくしかないんだ」

「はあ」

「どうもこんにちは、バッファローの人です」

「こんにちは」

「はじめまして」

「はじめましてじゃないです、さっきまで話してましたから」

「ぼくが、わかるんですか?」

「わかりますよ」

「このバッファローまみれのぼくが?」

「バッファローまみれってなんですかいったい」

「ありがとう、そんなこと言ってくれるのはあなただけです、バッファローの人よ」

「じゃあ人類全員バッファローの人!」

ボージョレ・ヌーボー到着

2010-11-02 | リッスン・トゥ・ハー
港は騒然としていた。ついに到着する。ヌーボーが来る。その影響力を考えると喉が鳴った。ぐるるぐるると虎は喉を鳴らせてヌーボーを待っている。カッコウと鳴いたかっこうは枝にとまっている。人間も様々な料理を用意してお出迎えだ。みみずだっておけらだってあめんぼだって、みんなみんな待っているんだボージョレ・ヌーボー。船が見えた。大きな船だった。あのなかにあきれるぐらいのヌーボーが積んであるのだきっと。さあ、もう待てないぞ、と人間は水着に着替え、海に飛び込んだ。泳いで船にたどり着き、船に登り、一番にその液体を口にするために。巨大な船はそれらを蹴散らした。大陸に近づいて船は一旦停止した。この港にははいれない。小さすぎる。あるいは、別の港にいこうかと考えているようだった。ちょっと待ってくれ、陸のみなは叫んだ。こんなにも待っていたのだ、どうかヌーボーを1万本ほどでいいから、おくれませ。船はその声に引き寄せられるように港に近づいて、そこいらじゅうの小さなフネを蹴散らしながら停泊した。降りるのも面倒くさかったので、ヌーボーを投げた。割れた。こぼれた。泣いた。逃げた。