リッスン・トゥ・ハー

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奥さん、冷蔵庫の中身、または苦瓜見せてくれませんか?

2010-11-26 | リッスン・トゥ・ハー
「どうも、こんばんは」

「あらどなたですか?」

「ヨネスケです」

「ええ!あの?」

「どのヨネスケのことを言っておられるのかわかりませんが、ヨネスケです」

「なんてことなの!あのヨネスケがうちに、ということは?」

「では見せてくれますか?というか呼び捨てて!」

「ダメです」

「しかもダメですかア、そこをなんとか」

「ダメなものはダメなんです」

「わたしもヨネスケやっている以上、簡単には引き下がりませんよ」

「うちの苦瓜を見せるわけにはいきません」

「いや苦瓜見せてほしいとは思ってないんですが」

「え?でも、ヨネスケと言えば突撃となりの苦瓜」

「いやそれローカルのコピー番組ちゃいますか?わたしのは晩ご飯です」

「晩ご飯?おかしい、ヨネスケはそんなもの見せてくれなどと言わないはず」

「いいます、ずっと言ってきました、30年近く言いつづけてきました」

「いいやわたしの記憶は正しい」

「すごい自信やなあ、まあ、知らないならそれでいいです、晩ご飯見せてください」

「さては、ヨネスケヨネスケ詐欺か!」

「はあ?」

「そんなこといって苦瓜を奪い取るきだな!」

「いや取りませんて」

「うちの苦瓜は押し入れの中のタンスの三段目の引き出しにはありません...ああ!」

「うっかりあり場所漏らしても取りませんから大丈夫です」

「あかん、もうあかん、ヨネスケに取られる!」

「ほら落ち着いてください、ちょっとカメラ止めて、これヨネスケきたから混乱してるわ」

「かくなるうえは!」

「なんか覚悟を決めた目をしてる!」

「家破壊爆破スイッチオン!」

「おいおい!」

「そして燃えゆく」

「すっきりした目をしてる!」

野生児と不思議ちゃんが同居する世界のワラハギ

2010-11-26 | リッスン・トゥ・ハー
あの子はね、昔からそうだったのよ。信じられないことを時々起こしてはみんなをびっくりさせるの。そういうサプライズが好きなのね。一番最初の印象は、木に登ってほえていたことね。あの頃はまだ言葉もしゃべれなかったかもしれない、そういう時代もあったのね。それから比べたら成長したものだと思うわ。うほうほう、とほえては木の実をもぎ取ってかぎる。それがあの子の生活のすべてだった。わたしはピアノを与えてみたんです。最初はほんの気まぐれ、おもちゃとしてなにか叩いて遊んでくれたらいいなあ、という思いで与えたんだけれど、驚いたことにいきなり、ネコフンジャッタを引きはじめたのね。いったいどこで練習したというの、まさにサプライズよ。これはもしかしたら可能性があるかもしれないとわたしはあの子にピアノを教えたわ。ピアノじゃなく、ピアーノ。何度言ったらわかるのピアーのよ!と時には手をあげて、頬をぶったこともあった。今だったら虐待、とか騒がれるかもしれないけれども当時は、ゆるやかな時代だったのね。あの子にもそういう少々の鞭は必要だったのよ。めりめりと伸びた。それもサプライズね。5年ほどたった頃には、もうパリの大学を主席で卒業してたんだから。ピアーヌオオオ、なんてほれぼれしちゃう。さすが主席、と思ったわ。今回、世界一になってしまったんですってね。もうわたしが教えることは何もないわ。あとは自分自身で努力しなさい。あなたならできる。わたしはそう伝えておきたいです。では山の洞穴に帰ります。